10人目のサイボーグ   作:れぷとん

17 / 22
第16話 親衛隊が来た

 009-7がソファに突っ伏しているとインターホンが鳴った。 『銀の魔女親衛隊です!!』 009-7が真顔になった。 「……電子レンジに閉じ込めていい?」 ピンポーン、『銀の魔女親衛隊です!!』 インターホン越しの元気すぎる声に、「……やっぱり電子レンジ」 「だからダメだってば」 003が呆れながら止めた。再びインターホンが鳴った。 『お願いします!! 一生のお願いです!!』 『俺たちは敵じゃありません!!』 『銀の魔女を支えたいだけなんです!!』 009-7は深いため息をついた。 「……003、対応お願い」 「はいはい」 モニターをオンにする。映っていたのは以前から何度も現場にいた“親衛隊”の連中だった。リーダー格のオタク男性を中心に数人。妙に緊張していた。003が冷静に尋ねた。 「何の用?」 『あ、003さん!! 本物だ!!』 「質問に答えて」 『は、はい!』 親衛隊リーダーは咳払いした。 『俺たちは、009-7さんがサイボーグだろうと人間じゃなかろうと関係ありません!!』 熱い、やたら熱い。 『あの人は世界を守ってる!それにめちゃくちゃ美人なのに生活能力低そうで放っておけない!!』 「最後いらない」 即ツッコミする003、だが親衛隊は止まらない。 『俺たちは支えたいんです!!』 『悪意ある連中から守りたい!!』 『あとできれば写真も撮りたい!!』 「本音混ざったわね」 003が呆れた。009-7がソファからぼそっと言った。 「……悪い人たちではなさそう」 「えっ」 「入れるの?」 「騒いだら追い出す」

 

 数分後、親衛隊はリビングに通されていた。 「「「うわぁ……本物だ……」」」 感動で震えていた。009-7はジャージ姿でソファに座っていた。絶世の美貌、なのに生活感が妙にあった。テーブルには食べかけのプリン。親衛隊リーダーが涙ぐんだ。「銀の魔女がプリン食べてる……」 「何がそんなに感動ポイントなの」 003が冷静だった。その時、親衛隊の一人が009-7の左腕を見て固まった。 「……治ってる」 静かな声。人工皮膚は完全に修復され、もう金属部分は見えていない。 「よかった……」 まるで身内みたいな顔だった。009-7は少しだけ目を丸くした。 「……心配してたの?」 「そりゃしますよ!!」 「世界中がショック受けましたから!!」 「俺、三日くらい眠れなかったです!!」 「それは寝て」 009-7が真顔で言った。その空気に気が緩んだのか。一人がつい悪ノリした。 「あの……腕、触っていいですか?」 003の笑顔が凍る。 「ダメ」 「えっ」 「ダメ」 「す、すみません!」 親衛隊全員が直立不動になった。だが、009-7本人は首を傾げた。 「別にいいけど」 「よくないわよ!」 003が即座に叱る。 「あなた距離感近すぎるの!」 「そう?」 「そうよ!!」 親衛隊は感動していた。 『銀の魔女、意外とチョロい』 『003さんがいないと危険だ』 『保護者ポジションだ……』 003が全員を睨んだ。 「今、失礼なこと考えた人いるわね?」 「「「気のせいです!!」」」

 

 その後、なぜか撮影会になった。 「銀の魔女さん! こっち向いてください!」 「003さんも!」 「ツーショットお願いします!」 009-7はわりと無表情で応じていた。003は疲れた顔をしていた。さらに、親衛隊は動画まで撮り始めた。 『銀の魔女親衛隊チャンネルです!!』 『本日はなんと!!』 『009-7さんのお宅にお邪魔しています!!』 「なんでそうなるの……」 009-7が遠い目をした。動画内では親衛隊が興奮気味に語っていた。 『銀の魔女さん、めちゃくちゃ優しいです!!』 『003さんはガチのお姉さん!!』 『しかも!! 親衛隊に入ると!!』 一人が勢いで叫んだ。 『銀の魔女と食事できます!!』 「待って」 009-7が止めようとしたが遅かった。

 

 翌朝、世界中から大変なことになった。 『銀の魔女親衛隊、会員募集中!?』 『加入すれば銀の魔女と交流可能との情報』 『世界中からアクセス殺到』 『サーバーダウン』 親衛隊サイトは爆発した。英語、中国語、フランス語、スペイン語。世界中から加入申請が届いた。 『銀の魔女を守りたい』 『結婚してください』 『003様に叱られたい』 『銀の魔女に罵倒されたい』 「なんか変なの混ざってる!!」 親衛隊リーダーが悲鳴を上げる。009-7は完全に困惑していた。 「……なんでこうなったの」 「世界一有名な美人サイボーグだからね」 009が即答した。 「納得いかない」 その時、003がスマホを見て固まった。 「……あっ」 「どうしたの?」 「政府高官から連絡」 嫌な沈黙。003がゆっくり顔を上げた。 「“親衛隊が民兵組織化しているので説明を求めたい”って」 009-7が頭を抱えた。 「……もうやだこの世界」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。