10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第21話 砂漠の英雄?

 日本、中部地方某市。夕方のニュース番組は異様な熱気に包まれていた。 『中東地域で大規模武力衝突』 『正体不明の武装組織“銀の魔女親衛隊”』 『現地住民を保護』 『複数国家が警戒』 そして、砂漠の映像。爆炎、飛び交う弾丸。その中央に銀色の髪をなびかせながら戦う009-7。敵弾を避け、電子戦で無人機を停止させる。数千人の武装勢力の前で冷静に指示を出している。 『民間人を優先して避難!』 『西側ルート確保!』 『重傷者は医療班へ!』 完全に指揮官だった。

 

 009-7のかつての自宅のリビングでは家族全員が固まっていた。テレビの光だけが部屋を照らしていた。 「……お父さん?」 娘が呟いた。 「うちのお父さん?」 「いや待って」 妻が額を押さえた。 「なんで軍隊率いてるの」 そこへテレビ。 『銀の魔女親衛隊は地域住民から高い支持を――』 『現地では“砂漠の守護者”とも――』 「なんで!?」 妻が叫んだ。夫は確かにちょっと変わっている。美少女になっているとか意味わからない。それなのに相変わらずおっさんで女子力は低い。家ではジャージ。でもまさか中東で軍閥みたいになってるとは思わない。

 

 一方、翌日の学校。 「見た!? 昨日のニュース!?」 「やばかったよね!?」 「009-7様かっこよすぎる!!」 女子たちは大興奮だった。「やばい……銀の魔女様、かっこいい……」 スマホには停止画面。砂漠の中、銃撃の中を歩く009-7。映画みたいだった。 「もうこれ世界の英雄じゃん……」 「分かる……」 「しかも美人」 「しかも強い」 「しかも優しい」 「完璧超人……」 女子たちはため息をついた。

 

 教室の隅で青ざめている男子がいた。以前、勇気を振り絞って009-7に告白した男子である。改めて震えていた。「俺、あの人に告白したんだよな……」 「うん」 「世界規模の超人に……」 「うん」 「中東の軍勢率いてる人に……」 「うん」 友人が肩を叩いた。 「お前、実質伝説だよ」 「やめてくれぇぇぇ!!」 頭を抱える男子。 「今思うと何言ったか覚えてねぇよ!」 『好きです!』 『……ありがとう』 『付き合ってください!』 『ごめんなさい』 脳内再生された。 「うわぁぁぁぁ!!」 床に突っ伏した。

 

 別の場所。コンビニ裏では009-7に絡んだチンピラたちがニュース映像を見ていた。 「……兄貴」 「なんだ」 「俺たち、あの人に喧嘩売ったんすよね」 「……ああ」 沈黙。砂漠で戦車を背景に立つ009-7。完全に戦場の英雄。 「死ななくて良かったっすね……」 「奇跡だな……」 リーダー格の男は真剣な顔で言った。 「俺、決めたわ」 「え?」 「親衛隊入る」 「は?」 「人助けしてぇ」 「動機軽くない!?」 「でもよぉ……」 男はニュースを見つめた。そこには難民の子供を抱き上げる009-7。優しい顔だった。 「なんか……かっけぇじゃん」 その言葉に仲間たちも黙った。分かってしまったのだ。ただ強いだけじゃない。

 

 そしてその頃の中東。 「……なんか日本のSNS、また変になってる」 003がタブレットを見ながら言った。 「今度は何」 009-7が聞く。 「“銀の魔女様に人生救われた”タグがトレンド一位」 「なんで」 「あと“親衛隊入りたい”が急増」 「なんで」 009-7は遠い目をした。 外では親衛隊員たちが整列している。 「銀の魔女様!」 「本日の巡回任務です!」 「……いってらっしゃい」 敬礼。数百人が一斉に動く。003がぼそりと呟いた。 「もう完全に軍隊……」 「……うん」 009-7は静かに空を見上げた。自分はただ平和に暮らしたかっただけなのにどうしてこうなったのか。本人も、わけが分からなかった。

 

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