翌日の成田空港。00ナンバーサイボーグたちも日本に帰ってきた。 「うわぁぁ!? 押すな押すな!!」 009が人波にもみくちゃにされる。黄色い歓声。 「009ー!!」 「こっち向いてー!!」 「加速装置やって!!」 テレビで見た英雄たちが目の前にいるのだ。当然、大騒ぎだった。一方、004は無言で歩いていた。その周囲だけ人混みが微妙に距離を取っている。 「……あの人、めちゃくちゃ怖くない?」 「でも渋い……」 「なんか映画俳優みたい……」 結果として女性人気が高かった。002はサングラス姿で手を振っていた。 「ハーイ、日本のお嬢さんたち!」 「きゃーーー!!」 ナンパ気質が隠しきれていない。 「相変わらずだな、お前は」 004が呆れた。
数日後、009が突然言い出した。 「なあ、学校ってどんな感じなんだろう」 009-7がコーヒーを吹きかけた。 「急にどうしたの」 「いや……オレ、孤児院育ちだったし、高校行ってないんだよね」 一瞬、空気が静かになる。003が優しく笑った。 「ジョー……」 「だからちょっと興味あってさ」 すると遊びに来ていた009-7の娘が勢いよく手を挙げた。 「じゃあうちの学校来る!?」 「えっ、いいの!?」 「絶対面白いし!」 「面白いで決めないで」
そして放課後、009-7の娘の高校。校門前に現れた五人を見て、生徒たちは完全に停止した。 「……え?」 「うそ」 「本物?」 「00ナンバー!?」 まず最初に女子たちが爆発した。 「009だぁぁぁ!!」 009は爽やかに笑った。 「こんにちは!」 女子たちが崩れ落ちる。 「無理……かっこいい……」 「顔がいい……」 「存在が反則……」 さらに。 002がウインクした。 「かわいい子が多いねぇ」 「キャーーー!!!」 一瞬で囲まれる。 「飛んでください!」 「サインください!」 「連絡先――」 「こらこら、順番順番♪」 完全に慣れていた。一方、004は無口に校舎を見上げていた。 「……平和だな」 その姿を見た女子たち。 「やばい……」 「大人の男って感じ……」 「渋すぎる……」 静かな人気が爆発していた。本人だけ気づいていなかった。そして003。廊下を歩いただけで男子が固まった。 「えっ……」 「綺麗……」 「女神?」 003は柔らかく微笑んだ。 「こんにちは」 数人が心停止しかけた。ついには、「あ、あの!!」 男子生徒が飛び出した。 「す、好きです!!」 周囲がざわめいた。003は目を丸くした。 「え、えぇ!?」 009がニヤニヤしている。 「モテるねぇフランソワーズ」 「笑わないでジョー!」 その頃、009-7は娘の教室にいた。女子たちが群がった。 「戦闘かっこよかったです!」 「親衛隊って本当にいるんですか!?」 「電子戦って何するんですか!?」 「えっと……いろいろ……」 珍しく押され気味だった。
夕暮れ。学校を出たあと009は静かに校舎を振り返った。 「……いいな、高校」 002が笑う。 「今から通うか?」 「いや、年齢的に無理だろ」 「見た目は余裕だぜ?」 004は腕を組んだ。 「平和な場所だった。お前なら似合ったかもしれん」 009は少しだけ笑った。 「……オレも、普通に青春したかったな」 その声は小さかった。009-7は隣に立った。 「今からでも遅くないんじゃない?」 「ん?」 「友達作ったり、遊んだり。そういうの」 009は少し照れくさそうに笑った。 「……ありがと」 その距離が近い。近すぎた。003の目が細くなった。 「ジョーーーー?」 「え?」 「ちょっとこっち来なさい」 「え、なんで!?」 003は009の襟を掴んだ。 「あなた最近009-7と距離近すぎるのよ!」 「えぇぇ!?」 「だいたい慰められて顔赤くしてたでしょう!」 「してないって!」 002が爆笑していた。 「若いねぇ」 「お前も大概だ」 004が呆れた。 007が笑いながら言った。「009-7は中身おっさんだぞ!」 003はそのまま009を引っ張っていった。 「今日は二人で話します!」 「待ってフランソワーズ! みんな見てる!」 「知りません!」 009-7はそれを見送りながら、小さく笑った。 「……平和だなぁ」 かつて世界を恐怖させた00ナンバーサイボーグたちは、今だけはどこにでもいる若者たちみたいだった。