首相官邸の会議室。日本政府は前代未聞の相手と向き合っていた。00ナンバーサイボーグと銀の魔女親衛隊。長机の向こう側に009-7、003、004、009が座っている。政府側の空気は重かった。 「確認します」 官房長官が静かに口を開く。 「中東支部は現在、複数地域を実効支配している。これは事実ですね?」 009-7は少し困った顔をした。 「……結果的には」 「結果的では困ります」 外務官僚が頭を抱えていた。 「各国は“新たな武装勢力”と認識しています」 009が口を開く。 「でも、侵略なんてしてない」 004も続けた。 「住民保護とブラックゴースト残党への対処が目的だ」 「しかし、武装集団であることは変わらない」 沈黙。すると003が穏やかに言った。 「私たちは戦争をしたいわけじゃありません。止めたいんです」 009-7も頷いた。 「炊き出しも病院も学校も作ってる。現地の人を守るため」 官僚たちは複雑な顔だった。理屈はわかる。しかし。 “世界最強クラスの超人たちを中心にした軍事組織”など、前例がなかった。
一方、銀の魔女親衛隊中東支部の簡易司令部では空気が張り詰めていた。 「西側の武装勢力、北部で集結確認」 「政府軍も動いています」 「ブラックゴースト残党の通信あり」 司令官格の元特殊部隊員が舌打ちした。 「……タイミングが良すぎる」 00ナンバーサイボーグたちが日本へ戻った隙に周辺勢力が一気に動き始めていた。別の隊員が地図を見た。 「奴ら、“魔女がいない今なら勝てる”と思ってる」 「実際、最大戦力が不在だ」 重苦しい空気。その時、外で歓声が上がった。難民キャンプの子供たちだった。親衛隊が配給を行っている。少女が笑い少年が走り回っている。元革命防衛隊の男が、その光景を静かに見ていた。 「……守らなければ」 彼はかつて宗教革命のために生きてきた。今はこの平和な光景を守りたかった。
夜の司令部の通信室で日本との回線が開いた。 モニターに009-7が映った。 「状況は?」 「周辺勢力が動いています」 009-7の目が細くなる。 「……やっぱり来たか」 「どうします?」 沈黙。その時、後ろから坂本本部長の声が聞こえた。 「レイナたん!! 中東支部支援クラウドファンディング、三時間で十億突破しました!!」 全員が固まる。 「……は?」 「世界中のファンが寄付してます!! あと“銀の魔女義勇兵志願フォーム”も――」 「何作ってるの!?」 「勢いで!」 003が頭を抱えた。 「この人ほんと何なの……」 だが、中東支部の隊員たちは笑っていた。絶望的な戦場の中で、日本から聞こえてくる騒がしい声が少しだけ心を軽くしたのだった。
中東の夜空を、砲火が赤く染めていた。銀の魔女親衛隊・中東支部。その周囲に、かつて相互に敵対していた武装勢力と政府軍が集結していた。理由は単純だった。銀の魔女親衛隊を潰す。新参者、正体不明。だが急速に勢力を広げる危険な存在。放置すれば自分たちの権力が消える。だから彼らは手を組んだ。
司令部にて、爆発音が響く。 「西側防衛線突破されました!」 「南地区も後退中!」 親衛隊員たちは疲弊していた。元特殊部隊員、革命防衛隊出身者、傭兵。精鋭ではある。 しかし数が違いすぎた。空爆、戦車、ロケット砲。物量で押し潰されていく。 「民間人の避難は!?」 「七割完了!」 「残りを急がせろ!!」 元革命防衛隊の男は血まみれのまま叫んだ。彼の後ろには怯える子供たちがいた。かつて009から食料を受け取った少女もいた。 「おじさん……」 「大丈夫だ。 銀の魔女様が来る」 男は自分に言い聞かせるように言った。