10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第27話 連邦国家成立

 西側諸国のある会議室にて。重厚な木製テーブル。壁には地図。その中央には、急速に勢力圏を広げる“銀の魔女国家”が赤く表示されていた。 「……このままではまずい」 初老の男が低く言った。 「中東の産油国が、民主化と近代化を両立させ始めている」 「しかも腐敗が少ない」 「難民流入によって労働力も増加」 「石油収益を民間へ回している」 若い分析官が顔をしかめた。 「成功事例になる」 部屋が静まり返った。それが最大の問題だった。独裁と混乱、宗派対立、汚職、軍閥。それらで分断されていた地域に、“別の道”が存在すると証明されてしまう。 「止める必要がある」

 

 隣国の巨大な宮殿。独裁者は酒を飲みながら笑っていた。 「銀の魔女だと?」 「小娘が国家ごっこをしているだけだ」 だが、その背後には不気味な“支援”が届いていた。最新型兵器、軍事顧問、衛星情報、電子戦装備。そして大量の資金。西側だけではない。中国系企業も港湾整備と引き換えに軍事支援を始めていた。独裁者は笑った。 「世界はまだ私を必要としている」

 

 最初は国境地帯の小競り合いだった。難民キャンプへの砲撃、油田地帯への襲撃、武装集団の越境。しかし、ある夜、数百両規模の戦車部隊が国境を突破した。全面戦争だった。司令部で警報が鳴り響いた。 『西部防衛線突破!』 『敵航空隊接近!』 『電子妨害強度上昇!』 003が叫ぶ。 「かなり本格的よ!」 004がモニターを睨んだ。 「背後に大国がいるな」 002は笑った。 「しかも複数だ」 009は静かに009-7を見る。 「……やるしかないね」 009-7は黙っていた。電子戦モニターの向こうに、敵軍通信、衛星リンク、指揮系統。全部が見えていた。 「……なるほど」 赤い瞳が光る。 「そういうこと」

 

 戦場にて。夜。敵軍は最新型電子戦システムに自信を持っていた。 「銀の魔女の能力対策は完璧だ!」 「今回は違う!」 だが、突然戦車隊が停止した。 『どうした!?』 『エンジンが——』 『IFFが狂って——』 『味方識別不能!』 通信網が崩壊した。ドローン群が暴走し、サイルが逆方向へ飛んだ。戦闘機同士が誤認戦闘を開始。電子戦、いやもはや電子支配だった。前線では009が加速装置で戦車群を突破し、002が航空部隊を迎撃。 004が精密狙撃で指揮官を排除した。そして、009-7は静かに目を閉じた。 「止まれ」 その瞬間、敵軍全通信網が完全沈黙した。

 

 三日後、独裁政権崩壊、首都陥落。独裁者逃亡。しかし、予想外だったのは、その後だった。市民たちが叫び始めたのだ。 「銀の魔女に統治してほしい!」 「もう独裁者はいらない!」 「学校を作ってくれ!」 「病院を!」 「仕事を!」 009-7は頭を抱えた。 「なんでこうなるの……」 003が苦笑する。 「もう運命じゃない?」 数ヶ月後、正式名称が発表される。 “中東自由連邦” 複数民族、複数宗教、複数言語。そして、女性にも教育と参政権を認める近代国家。世界は騒然となった。一方、日本の親衛隊本部。本部長・坂本は会見映像を見ながら震えていた。 「……え?」 スタッフが死んだ目で言った。 「国家、増えましたね」 「俺、オタクだったんだけど!?」 「知ってます」 「なんで連邦国家になってんの!?」 「たぶん勢いです」 「勢いで国家増える!?」

 

 そして、世界地図を見つめながら、西側諸国の情報機関は理解し始めていた。問題は00ナンバーサイボーグの戦闘力だけではない。009-7という存在そのものが、人々に“希望”を与えてしまうこと。それが既存秩序にとって最も危険だった。

 

 エルサレム近郊の厳重な警備の会談施設。世界中が固唾を呑んで見守る中、009-7はイスラエル代表団と向き合っていた。護衛には002、004、009。対するイスラエル側も歴戦の特殊部隊員たち。互いに一歩間違えれば国家存亡に関わる相手だと理解していた。沈黙の後、イスラエル側代表が言った。 「あなた方は脅威だ」 率直だった。009-7は静かに頷く。 「そちらもです」 空気が張り詰めた。だが、次の言葉は双方にとって意外だった。 「だからこそ」 009-7は真っ直ぐ相手を見た。 「戦争をしたくありません」 数時間後、 共同声明が発表された。中東自由連邦とイスラエルは相互不可侵および平和維持協定を締結。世界は衝撃を受けた。周辺国は騒然となり過激派は激怒した。西側諸国は頭を抱えた。 「……なんで成功するんだ」 ⸻

 

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