10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第37話 002は落ち込んでいた

 その頃、難民キャンプの子供たちの間では。 『怖い顔のおじさんが綺麗なお姉さんの前だとちょっと優しい』 003には王子。009には国民的女優。004にはNGO職員。009-7は世界中から妙な方向でモテている。そんな中、002は明るく笑いながらも、内心かなり傷ついていた。 「……何で俺だけ」 深夜、首都のバーで002はグラスを回しながらぼやいた。 「ロマンス来ねぇんだけど」 隣で009-7がメロンソーダを飲んでいた。 「002ってモテそうなのにね」 「だろ?」 「軽そうだけど」 「そこだよ!!」 002は机を叩いた。 「みんなそう言うんだよ!!」 実際、002は女性受け自体は悪くなかった。明るい、話が上手い、顔もいい。だが、なぜか付き合う直前で終わるのだ。 「お茶して終わり」 「連絡先交換して終わり」 「“楽しかったです!”で終わり」 002は天を仰いだ。 「何でだよぉぉぉ!!」 003が冷静に言った。 『軽薄だからじゃない?』 「003、容赦ねぇな!?」 004は葉巻をくわえながらぼそっと言った。 『落ち着きがない』 「004まで!?」 009は苦笑した。 『でも002って、どこか“本気”を見せないところありますよね』 002が黙った。図星だった。

 

 数日後、002は突然言った。 「ちょっと旅してくる」 『どこへ?』 「ニューヨーク」 故郷だった。久しぶりのニューヨーク。高層ビル、地下鉄、クラクション、雑踏。全部が懐かしかった。002は帽子を深くかぶって街を歩いた。 「……変わったなぁ」 いや。 変わったのは自分かもしれない。超高速能力、戦い、仲間、世界の危機。気づけば、“普通”から遠く離れていた。そして、足は自然と古い住宅街へ向かっていた。

 

 小さな公園、昔よく遊んだ場所、古びたベンチ、夕暮れ。002は苦笑した。 「ガキの頃、ここで転んで泣いたんだよなぁ」 「相変わらず馬鹿だったのね」 声がした。002が振り向くと 「……えっ」 そこにいたのは幼馴染だった。黒髪、少し疲れた目。でも笑い方は昔のままであった。 「久しぶり、ジェット」 002は、しばらく言葉が出なかった。彼女の名前はエミリー。子供の頃、いつも002の後ろをついてきた少女だった。気づけば50年以上会っていない。 「うわぁ……マジでエミリー?」 「失礼ね」 「いやだって」 「ニュースで見るより軽薄そう」 「ひどくない!?」 エミリーは笑った。その笑い方が昔と変わっていなかった。二人は近くの店へ入った。ハンバーガー、コーヒー。何でもない店。なのに002は、妙に落ち着いた。 「で?」 エミリーがストローを回す。 「世界救ってる気分はどう?」 「雑な聞き方だなぁ」 「テレビで見てると実感ないのよ」 002は少し笑った。 「……疲れるよ」 ぽつり。 「最近みんな恋愛だ何だってやっててさ」 「うん」 「俺だけ置いてかれてる気がして」 エミリーは静かに聞いていた。 「街で女の子ナンパしても続かないし」 「それナンパやめたら?実年齢考えなよ」 「正論やめろ」 エミリーは吹き出した。 少し沈黙の後、エミリーが、ふっと真面目な顔になった。 「ねぇジェット」 「ん?」 「あなた昔から、“本気で傷つく前に逃げる”癖あった」 002が止まった。 「軽く振る舞って」 「冗談ばっかり言って」 「でも本当に好きになったら、怖くなる」 図星だった。002は視線を逸らした。 「……変わってねぇな、俺」 「変わってない」 エミリーは少し笑う。 「でも、そこ嫌いじゃなかった」 夕暮れの光が、窓に差し込む。002は、しばらく黙っていた。それから。 「……なぁ」 「うん?」 「また会える?」 エミリーは少し驚いてそして優しく笑った。「こんなおばあちゃんでよければね」 002が改造されてから年月が経っていた。

 

 一方その頃、中東自由連邦では003が通信履歴を見ながら呟いていた。 『……002、最近元気でたね』 009-7はメロンソーダを飲みながら言った。 「良いことだ」 004は静かに煙草を吸っていた。009は 『……何か最近、周囲の雰囲気おかしくないですか?』 と言っていた。

 

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