004に春の気配が漂い始めた頃、日本ではまた別の爆弾が投下された。深夜バラエティ番組で人気AV女優が酒を飲みながら突然言った。 『私、004さん好きなんですよね』 スタジオが止まった。 『えっ』 『004!?』 『そっち!?』 司会者が困惑する。 『いや何でまた00ナンバー!?』 女優は真顔だった。 『だって最近、優男多すぎません?』 『あー……』 『004さん、本物の男って感じする』 『わかるようなわからんような』 『寡黙で、不器用で、でも絶対守ってくれそう』 全国の視聴者が静かに頷いた。 『あとあの傷跡』 『声が低い』 『でも子供に優しい』 『落ちる』 SNSが爆発した。 『004、女性人気高すぎ問題』 『硬派需要が限界突破』 『葉巻が似合う男ランキング一位』
一方、中東自由連邦の難民キャンプでは004は普通に仕事していた。そこへ、002がニヤニヤしながらスマホを見せてきた。 「おーい004〜?」 『何だ』 「モテてるぞぉ〜?」 『興味ない』 「AV女優から公開告白」 004の動きが止まる。 『……は?』 002は爆笑した。 「“本物の男が好き”だってよ!!」 『帰れ』 「照れてる!!」 『殺すぞ』 さらに悪いことに009-7が面白がった。 「004、意外と人気あるんだね」 『意外とは何だ』 「いやだって怖いし」 『お前も大概だ』 003まで微妙に笑っていた。 『でもわかるわ』 『003まで!?』 『004って、今どき珍しいタイプだもの』 009が頷いた。 『寡黙だけど責任感強いし……』 004は頭を抱えたくなった。なぜ仲間に分析されているのか。
だが、本当に問題だったのはエレナだった。難民キャンプの休憩室でエレナがスマホを見ていた。そして、「……へぇ」 004が嫌な予感を覚えた。 『何だ』 「人気なのね、あなた」 『知らん』 「AV女優さん、綺麗な人」 『だから何だ』 エレナはじーっと004を見た。 「……ちょっと気になる?」 『ならん』 「即答」 『当然だ』 004は仏頂面だった。だが、耳が少し赤かった。エレナは見逃さなかった。 「ふふ」 『笑うな』 「可愛いところあるのね」 『ない』 その時、外で子供たちが騒ぎ始めた。 『004ー!!』 『テレビ出てたー!!』 『モテモテー!!』 004は本気で帰りたくなった。
一方その頃の日本。そのAV女優はさらに燃料を投下していた。 『004さんって、絶対恋愛不器用ですよね』 『でもそこがいい』 『あと多分、好きな相手にはめちゃくちゃ一途』 日本のAV女優は完全に悪ノリしていた。 『004さんリスペクト作品です♡』 公開された新作タイトルはどう見ても、どう考えても004だった。黒コート、低い声、葉巻、傷跡メイク、無口。しかも男優が妙に似ていた。SNSが炎上した。 『怒られるぞ!!』 『ギリギリを攻めすぎ』 『でも似てる』 『雰囲気が完全に004』 さらに問題だったのは女優本人が異様に熱演していたことだった。 『好きな男を演じてるので気合い入りました♡』 コメントが強かった。
中東自由連邦の親衛隊本部。マッチョたちは頭を抱えていた。 「日本のAV業界、攻めすぎだろ……」 「でもちょっと完成度高い……」 「見るな」 一方、009。年頃の男子であった。当然、興味はあった。 『……』 深夜、部屋でタブレットとイヤホンを用意した。完全に“こっそり見る態勢”だった。009は葛藤していた。 「いやでも……」 004は仲間である。しかし、タイトルが気になる。しかもレビューが妙に高い。SNSで話題。 「……ちょっとだけ」 再生。数分後、009は頭を抱えていた。 「何で完成度高いんだよ!!」 妙に004っぽい。特に不器用そうな仕草が似ていた。 「いや004こんなことしないだろ!!」 と思いつつ。 「でもちょっと言いそう……」 変なリアリティがあった。009の情緒が死んだ。
その時、通信が入った。003だった。 『009』 『!?!?!?』 009が飛び上がった。 『な、何!?』 『今忙しい?』 『い、いや全然!?』 003は数秒沈黙した。 『……何見てるの』 『えっ』 『顔赤いけど』 『通信でわかるの!?』 009は死を覚悟した。 003の目が細くなる。 『……004のやつ?』 『ち、違』 『図星ね』 『違うんだ003これは研究というか社会現象の分析で――』 『009』 『はい』 『あとで話しましょう』 『はい……』 通信終了。 009はベッドに突っ伏した。 「終わった……」
一方その頃、004本人はエレナから例の動画の存在を知らされていた。 「……見た?」 『見てない』 「本当に?」 『本当だ』 「ふーん」 エレナは妙に楽しそうだった。 「でも、ちょっと似てた」 004が無言になる。 「特に不器用そうなところ」 『……』 「あと好きな相手には優しそうなところ」 004は煙草を取り出そうとして失敗した。手元が狂った。エレナは吹き出した。 「動揺してる」 『してない』 「してる」 004は本気で戦場より疲れていた。