10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第40話 ロシア訪問

 「右から来る!」 『了解!』 003の超感覚。009の加速。二人はもはや言葉すらほとんど必要なかった。視線、呼吸、一瞬の動き、全部が噛み合った。敵ドローンが飛来。003が位置を把握。次の瞬間には、009が超加速で空中を駆け抜け無力化。完璧だった。002が口笛を吹く。 「はいはい新婚夫婦つよいですねぇ〜」 『新婚じゃない!』 『まだ違います!』 声が揃った。004がぼそっと言った。 『確かに、まだ新婚ではないな』 二人とも真っ赤になった。

 

 一方、隣国王子はまだ諦めていなかった。豪華な花束、宝石、詩、外交名目の食事会。 あらゆる方法で003へ接触してきた。だが、最近の003は強かった。 『ごめんなさい』 『私、好きな人いるので』 王子は撃沈した。側近たちが頭を抱えた。 「また駄目でした……」 王子本人はわりと潔かった。 『……いや、あれ見たら無理だろ』 前線で並ぶ003と009。お互いを信頼しきった視線。あれはもう誰も割り込めなかった。

 

 モスクワ。雪、重厚な石造りの街並み。そしてクレムリンの奥深く、ロシア大統領府では側近たちが静かに議論していた。 「西側の制裁は続いています」 「中国とも距離感が難しい」 「だが――」 大型スクリーンに映るのは中東自由連邦。量子演算、AI、新素材、エネルギー技術。もはや単なる新興国家ではない。科学技術国家だった。 「彼らは西側以上の先端技術を持つ」 「しかも独立性が高い」 「……接触すべきだ」 静かな結論であった。

 

 数週間後、世界中がざわついた。ロシア大統領、中東自由連邦訪問。各国メディアが緊急特番を組んだ。アメリカ政府も緊張していた。 『軍事同盟か?』 『新冷戦構造の始まりか?』 だが、会談内容は意外なものだった。 『一般科学技術交流』 量子医療、宇宙工学、エネルギー、AI倫理。軍事ではなく表向きは学術交流だった。009-7は会見で言った。 「科学は、本来人類全体のものだから」 その台詞がまた妙に格好良かった。

 

 そして、今度は009-7側がモスクワを訪問することになった。同行メンバー、004、002、009、003。003は最初、留守番の予定だった。だが、途中で『……やっぱり行く』 となった。理由は009がロシア女性にモテそうだからである。002が爆笑した。 「信用ゼロじゃねぇか!」 『違うわよ!!』 「目が本気だぞ003!」

 

 モスクワ空港。歓迎式典、軍楽隊、報道陣。ロシア側も本気だった。特に、004の人気が異常だった。スペツナズ隊員たちは004を見た瞬間に察した。 「……本物だ」 空気、視線、歩き方、全部が戦士だった。004も相手を見て少し目を細めた。 『いい兵士だ』 スペツナズ側も静かに敬礼した。その夜、軍関係者交流会。004は珍しく酒を飲んでいた。 隣には巨大なスペツナズ隊員。 「兄弟」 『何だ』 「お前、熊と戦ったことあるか」 『ある』 「あるのかよ……」 妙に盛り上がった。銃器、寒冷地装備、戦場。004は久々に“男同士の空気”を楽しんでいた。002が頷いた。 「004、ああいう時だけ妙に饒舌なんだよな」

 

 一方、009。こちらは別方向で大変だった。ロシア女性人気が異常だった。 「可愛い……」 「守ってあげたい」 「でも強い」 「最高では?」 空港からずっと黄色い声。しかもロシア女性は積極的だった。 『写真いいですか!?』 『一緒にお茶しませんか!?』 『連絡先――』 009が困惑した。 『え、えっと』 003の空気が冷えた。さらに悪いことに、ロシア語通訳AIが妙に好意的翻訳をした。 『あなたの瞳はシベリアの星のようです』 『えっ!?』 『009さん素敵!って意味よ』 『だいぶ違わない!?』 003の視線が刺さった。009は冷や汗を流した。その夜のホテル。003は不機嫌だった。 『……モテモテだったわね』 『ぼ、僕何もしてないよ!?』 『へぇ』 『本当に!!』 009は必死だった。003は腕を組んでいた。だが、本気で怒っているというより、嫉妬している自分に少し照れていた。009は観念したように、そっと003の手を握った。 『003が一番だから』 数秒沈黙。003の顔が赤くなった。 『……ずるい』 009は少し笑った。

 

 一方その頃、009-7はロシア科学アカデミーでロシア人科学者たちと量子AIについて徹夜で議論していた。002が呆れた。 「また技術談義してる……」 004はウォッカを飲みながら静かに言った。 『あいつは、あれでいい』 009-7が楽しそうに笑っていた。国家元首、AI融合、世界的美少女。なのに、中身は相変わらず、科学オタクだった。モスクワ滞在三日目、009-7はロシア科学アカデミー地下研究区画にいた。巨大な量子演算施設。低い駆動音、白い照明。そこは世界でも数少ない“009-7とまともに議論できる研究者”たちの巣窟だった。

 

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