10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第44話 009-7の甥と3人の美少女

 日本の東京都内某高校。009-7の甥っ子――拓也は平和な学生生活を送る……はずだった。少なくとも本人はそのつもりだった。最初の転校生が来たのは月曜日。金髪、青い瞳、アメリカ人美少女。流暢な日本語。自己紹介だけでクラスがざわついた。 『エミリーです。よろしくお願いします♪』 男子全滅。拓也も普通に見惚れた。だが、問題は彼女がなぜか真っ直ぐ拓也の席へ来たことだった。 『あなたが拓也くん?』 「えっ」 『よろしくね♪』 距離が近かった。妙に近い。クラスが騒然となった。そして三日後。今度はロシアから。銀髪、透き通るような白肌のクール系美少女。 『アナスタシアです。アーニャと呼んでください』 また教室が死んだ。しかも、彼女もまっすぐ拓也の席へ来た。 『隣、いいかしら?』 「えっ」 エミリーが止まった。アーニャも止まった。空気が少しだけ火花を散らした。拓也は(何これ)って顔だった。さらにおかしいことに、二人とも妙に拓也へ距離を詰めてくるのだ。 『一緒に帰ろ♪』 『ノート見せて』 『今日遊びに行っていい?』 男子たちが死んだ。 「何であいつ!?」 「普通の男子だろ!?」 「いや伯父が009-7だけど!!」 そこだけ普通じゃなかった。

 

 そして、ついに家へ来た。拓也の母――つまり009-7のおっさん時代の妹は大喜びだった。 「えっ!? 何この可愛い子たち!!」 「拓也あんた彼女!?」 「違うって!!」 だが、母は完全に浮かれていた。 「お兄ちゃん!!」 テレビ電話で009-7へ連絡した。 『見て見て! 拓也に美少女の彼女できた!!』 009-7はメロンソーダを吹きかけた。

 

 一方、日本政府の公安と内閣情報調査室。頭を抱えていた。 「アメリカ」 「ロシア」 「両方同時」 「偶然なわけあるか」 完全に009-7周辺への接触工作だった。しかも甥っ子経由。 「えげつない……」 対抗措置が決定した。 「こちらも送る」 「……何を?」 「エージェントだ」 数日後、また転校生が来た。日本人美少女だった。黒髪ロング、優等生、運動神経抜群、礼儀正しい、完璧。 『神代 詩織です』 クラス全員が理解した。(またか) そして当然のように、詩織も拓也へ向かった。 『席、隣ですね』 「えっ」 『よろしくお願いします』 エミリーが停止した。アーニャも停止。空気が凍った。 拓也だけが(人生始まった!?) って顔をしていた。結果、教室がおかしくなった。昼休み。拓也の周囲に美少女三人。男子たちは死んだような顔をしていた。 「何なんだよあいつ!!」 「俺だって009-7の甥になりてぇ!!」 「無理だろ!!」 一方、三人は表向き穏やかだった。 『このお弁当どうぞ♪』 『ロシアのお菓子持ってきたよ、一緒に食べよ』 『ノートまとめてあります、説明しますね』 だが、水面下では普通に牽制し合っていた。エミリー(CIA系)(日本エージェントいるじゃない……) アーニャ(FSB系) (アメリカも来てる) 詩織(公安系)(両方とも露骨すぎる……) 全員、互いを察していた。なのに、拓也だけは気づかなかった。その夜、拓也はベッドでニヤけていた。 「うへへ……」 青春だった。だが、隣室の母親はもっとひどかった。 「拓也がお嫁さん連れてくる……!」 泣いていた。

 

 一方、中東自由連邦では009-7が頭を抱えていた。 「何で甥っ子が国際諜報戦の中心になってるの……」 004は静かに言った。 『血筋だろう』 「嫌すぎる」 002は爆笑していた。 「いやでも羨ましいぞあいつ!!」 003は少し呆れながら紅茶を飲んでいた。 『そのうち本当に修羅場になるわよ』 遠く日本では、拓也が三人の美少女に囲まれながら完全に舞い上がっていた。結局、事態が大きくなりすぎた。CIA、FSB、公安。三カ国の思惑が、一人の男子高校生の周囲で交錯している。しかも本人は完全に青春していた。

 

 「……もう直接行った方が早い」 009-7が頭を抱えた。004が頷いた。 『同感だ』 002は笑っていた。 「甥っ子、絶対今人生楽しいぞ」 『だから危ないのよ』 003がため息をついた。こうして、00ナンバーサイボーグたちは日本へ向かうことになった。都内某高校、朝から異常事態だった。黒塗り車列が到着し、SPと政府関係者が現れた。校長は顔面蒼白だった。 「ほ、本当に来るんですか……!?」 そして、校門前に009-7が登場した。サングラス姿、無機質な美貌、世界的有名人。生徒たちは絶叫した。「009-7だぁぁぁ!!」 「本物!?」 「顔小さっ!!」 「発光してない!?」 してない。たぶん気のせいである。さらに、003、004、002、009。00ナンバーサイボーグが勢揃いした。学校がパニックになった。女子は009を見て騒ぎ、男子は003と009-7に舞い上がった。運動部は002に群がり、一部男子は004へ憧れの視線。

 

 問題の教室では、拓也は完全に調子に乗っていた。右にエミリー、左にアーニャ、後ろに詩織。さらに、009-7まで来た。結果、四人の美少女に囲まれる状態。男子たちが死んだ目をしていた。 「何なんだよあいつ……」 「アニメの主人公か?」 拓也本人はちょっとニヤけていた。

 

 だが、004は容赦なかった。 『そろそろ説明するぞ』 「えっ」 004は静かに三人を見た。 『CIA』 エミリーが硬直した。 『FSB』 アーニャが停止した。 『公安』 詩織が静かに目を閉じた。教室が完全に凍結した。 「……は?」 拓也の顔から血の気が引いた。 『え』 『うそ』 『えっ』 クラスもパニックになった。拓也は三人を見た。 「じゃあ……」 「全部、任務だったの?」 その声は、かなり傷ついていた。三人ともすぐには答えられなかった。最初は確かに任務だった。009-7周辺への接触、情報収集、国家戦略。全部事実。だが、エミリーが小さく言った。 『……でも』 アーニャも続いた。 『楽しかった』 詩織も静かに頷いた。 『国家とか関係なく』 『一緒にいるの、普通に楽しかった』 教室が静かになった。拓也はしばらく黙っていた。ショックだった。 でも、彼女たちの顔を見ると嘘をついている顔ではなかった。任務だけなら、あんな風に笑わない。放課後にゲームしたり、コンビニ行ったり、くだらない話で盛り上がったり。 あれは、たぶん本物だった。 「……そっか」 拓也は、小さく笑った。 「じゃあ、まぁいいや」 「えっ」 「だって楽しかったのは本当なんでしょ?」 三人とも止まった。そして、少しだけ泣きそうな顔で笑った。

 

 009-7はその光景を見ていて妙に複雑だった。 「……何か私たちの周り、みんなこうなるね」 003が苦笑する。 『国家と恋愛が混ざりすぎなのよ』 002は笑った。 「でもまぁ、青春じゃん」 004は静かに言った。 『最初は偽装でも』 『途中から本物になることはある』 009-7は少し考え、それから小さく笑った。 「……そうかもね」

 

 その後、四人――拓也+三人の美少女は普通に一緒に帰った。周囲は大騒ぎ。男子たちは瀕死だった。だが、拓也は少しだけ成長していた。国家とか、任務とか、そういうものを知った。それでも、一緒にいた時間は本物だった。そして帰り道でエミリーが聞いた。 『……これからどうする?』 拓也は少し悩んで言った。 「とりあえず」 「また遊ぼうよ」 三人は同時に笑った。その瞬間だけは国家も任務も関係ない、ただの高校生だった。

 

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