テレビから派手な声が響いた。 『今度は女性を応援します!!』 一同が振り向いた。画面に映っていたのは超高級ホストクラブのオーナーだった。金色のスーツ、無駄にキラキラしていた。 『戦う女性にも癒やしは必要です!!』 背後でシャンパンタワー。 『00ナンバーサイボーグの女性は無料!!さらに009-7親衛隊所属の女性隊員には特別割引を適用!!』 003が固まった。 「……は?」 『疲れた心を、我々が全力で癒やします!!』 009が嫌な予感しかしない顔になった。 「……003、行かないよね?」 「行かないわよ!」
しかし数日後、女性親衛隊員たちはぽつぽつと行き始めた。 「思ったより楽しかった。」 「普通に会話が上手い。」 「ストレス発散にはなるかも。」 「あと顔が良い。」 基地の女性隊員たちの空気が微妙に明るかった。003は呆然としていた。 「……なんなのこの組織。」 さらに問題なのは、003自身がちょっと気になり始めていたことであった。食堂で女性隊員たちが盛り上がっていた。 「ちゃんと話を聞いてくれるんですよ!」 「褒め方が自然なんです!」 「あと自己肯定感が回復する!」 003は紅茶を飲みながら聞かないふりをしていた。だが耳は完全に向いていた。009は気が気でなかった。 「……003。」 「何。」 「その、ホストクラブって……」 「別に興味ないわよ?」 「そ、そうだよね!」 だがその時、扉が勢いよく開いた。 「面白かったぞ!」 一同が振り向いた。そこにいたのは009-7だった。 「行ったの!?」 003が叫んだ。009-7は平然としていた。 「市場調査だ。」 「絶対違う!!」 002が腹を抱えて笑った。 「で!? どうだった!?」 「騒ぎになった。」 「でしょうね!!」 009-7は淡々と語った。 「店内に入った瞬間、ホストたちが整列した。」 「うわぁ。」 「“姫”と呼ばれた。」 003が頭を抱えた。 「そりゃそうなるわよ……。」 「あとシャンパンタワーが出てきた。」 「なんで!?」 「店長が泣いていた。」 004がぼそりと言った。 「宗教だな。」 009-7は続けた。 「興味深かった。男性たちは非常に高度な対人技能を持っている。」 「分析しないで。」 「特に、“君は頑張っている”という言葉は効果が高い。」 003が微妙な顔になった。 「……まあ、それはちょっと分かるかも。」 009がぎくりとした。 「えっ。」
その翌週、003は女性親衛隊員たちに囲まれていた。 「一回だけですって!」 「視察ですよ視察!」 「009-7様も行きましたし!」 「ストレス発散になります!」 「行かない!」 三十分後、003は高級ホストクラブの前に立っていた。 「なんでこうなるのよ……。」 隣では009-7が真顔で頷いている。 「大丈夫だ。彼らは礼儀正しい。」 「そういう問題じゃないの。」 店内は豪華だった。やたら豪華だった。ホストたちは003を見るなり一瞬静止し、それから騒然となった。 「やばい美人来た!!」 「本物!?」 「女神!?」 003は引いていた。 「帰りたい。」 だが席に着くと、意外なほど空気は穏やかだった。 「お疲れなんですね。」 「いつも頑張ってるんでしょう?」 「無理しすぎないでくださいね。」 003は最初こそ警戒していたが、次第に肩の力が抜けていった。普段、彼女は“しっかり者”でいることが多かった。みんなを支える側だった。だがそこでは、ただ「疲れてもいい人」として扱われた。それが妙に心地よかった。数時間後、帰り道で003は夜風を浴びながら歩いていた。 「……なんか、すっきりした。」 009がものすごく複雑そうな顔をする。 「そ、そうなんだ……。」 「何その顔。」 「いや別に!?」 003はふっと笑った。 「安心しなさい。別にどうこうなったわけじゃないわ。」 009は露骨にほっとした。 その様子を見て、009-7が真顔で言った。 「ジョーは分かりやすいな。」 「うわああああ!!」