10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第53話 009-7の家族の護衛

 009-7の娘、美由紀は机に突っ伏していた。 「……なんで。」 不機嫌であった。 「なんで従兄弟ばっかり。」 スマホ画面には叔母から送られてきた写真。美少女三人とすき焼き、楽しそう。 「なんで私には何もないの!?」 友人が苦笑する。 「いや、護衛とか嫌じゃない?」 「嫌じゃない!」 「そこ即答なの?」 美由紀は机を叩いた。 「普通、娘の方が重要人物でしょ!?」 実際、その通りだった。彼女自身も、かなり危険な立場にいた。だが、護衛の“方針”が違っていた。

 

 彼女の学校、表向きは何も変わっていないように見えた。まず、英語教師が変わった。 「Hello, everyone.」 爽やかなイケメン教師。女子生徒たちがざわついた。 「え、かっこよ。」 「映画俳優みたい。」 「英語発音やば。」 だがその正体はCIAエージェント。しかも現場経験豊富な工作員だった。さらに担任教師も変わった。優しそうな女性教師、だが実際は公安エージェント。校内監視と情報収集担当。そして、用務員のおじさん、一見、ただの温厚なおじさん。しかし本職は麻薬取締官、元潜入捜査官だった。他にも、目立たない転校生、近所のコンビニ店員、商店街の警備員、バス停のサラリーマン。全部護衛網だった。

 

 文化祭の日、校内は他校生徒で溢れていた。その中に明らかに空気の悪いグループがいた。 「うぇーい。」 「だりぃ。」 「なんか食いもん奪うか。」 ガラの悪い不良たち。教師も少し警戒していた。そして彼らは美由紀のクラスへ入ってきた。 「お、かわいくね?」 「写真撮ろうぜ。」 空気が張り詰めた。だが、「なあ。」 目立たない男子生徒が不良たちに声をかけた。地味で印象が薄かった。クラスでも特に目立たない転校生。 「外に面白いのあるぜ。」 「あ?」 「来いよ。」 不良たちはなんとなくついて行った。それっきり戻ってこなかった。数時間後、遠くの公園でなぜか全員ぐったり座り込み、 「すみませんでした……。」 と反省していた。転校生――CIA協力員は静かにイヤホンへ呟いた。 「問題解決。」 別の日、美由紀が友人たちと商店街を歩いていた。 「クレープ食べたい!」 「私タピオカ!」 そこへ酔っ払いが絡んできた。 「お姉ちゃ〜ん。」 「ちょっと付き合ってよ〜。」 友人たちが怯えた。だが、近くにいた普通のサラリーマン風の男が自然に間へ入った。 「課長、こんな所にいたんですか。」 「あ?」 「奥さん探してましたよ。」 「え、いや……。」 男は笑顔のまま酔っ払いを連れて行きそのまま消えた。 公安協力員だった。美由紀はぽかんとしていた。 「……何あれ。」 友人が震えた。 「なんか怖いくらい自然だった。」

 

 009-7たちは電子モニターで状況を確認していた。AI解析、衛星監視、通信傍受、護衛ネットワーク。009-7は頷いた。「娘の護衛は正常に機能している。」 003が苦笑した。 「そりゃそうよね……。」 目立たず自然。学生生活を壊さない。高度な護衛だった。だが甥っ子側のモニター映像では美少女三人とすき焼き、ゲーム、宿題。妙に楽しそう。009-7は沈黙した。 「……なぜだ。」 003も真顔になった。 「なんであっちだけラブコメみたいなの。」 002は机を叩いた。 「羨ましい!!」 「そこか。」 004が煙草をくわえた。 「……護衛担当者の性格の差だろう。」 009-7は少し考え込んだ。 「つまり。」 「向こうは自由すぎる。」 モニターの中では、エミリーが甥っ子をからかい、アーニャがゲームで煽り、詩織が笑っていた。009-7は遠い目をした。 「……青春しているな。」 002が真顔で頷いた。 「めちゃくちゃしてる。俺もしたい!」

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