10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第54話 ブラックゴーストの暗躍

 戦況は急速に悪化していた。ブラックゴーストは単なる麻薬密売では満足しなかった。“国家そのもの”を蝕み始めたのだ。中東自由連邦周辺国では、軍幹部、国境警備隊、地方軍閥、政治家など、ブラックゴーストは麻薬カルテル経由で静かに彼らを汚染していった。 最初は接待、次に依存、そして支配。気づけば、国境地帯で小競り合いが頻発し始めていた。砲撃、越境襲撃、偽旗工作。SNSでは憎悪が煽られ、民族対立、宗教対立、古い傷が再び開かれていく。009は作戦室で拳を握った。 「また戦争を起こすつもりか……!」 004は冷たく言った。 「麻薬と紛争は相性がいい。」 混乱、貧困、武器、密輸。ブラックゴーストはそれを熟知していた。

 

 00ナンバーサイボーグたちは各地の紛争対応に追われた。避難民救助、停戦監視、武装勢力排除、国境地帯の治安維持。005が崩れた建物を持ち上げ、003が負傷者を探知した。 009が銃撃の中を駆け抜けた。だが、本来の敵――麻薬カルテル本体には手が回らなかった。DEA責任者は苛立っていた。 「時間を稼がれている。」 009-7は頷いた。 「ブラックゴーストの狙い通りだ。」 カルテルを守るために地域を燃やした。あまりにも悪辣だった。

 

 アメリカはついに痺れを切らした。ワシントン、国家安全保障会議。巨大スクリーンにはカルテル拠点、精製工場、武装キャンプ、潜水艇密輸ルート。大統領が低く言った。 「もう十分だ。」 CIA長官が頷いた。 「カルテルは国家レベルの脅威です。」 国防長官。 「軍事的解決は可能。」 数秒の沈黙の後、「やれ。」

 

 深夜の南米、ジャングル。突然、空が裂けた。ステルス爆撃機、巡航ミサイル、武装ドローン、特殊部隊。米軍による全面攻撃だった。カルテル基地が炎上した。 「敵襲!!」 「米軍だ!!」 だが圧倒的だった。通信施設破壊、滑走路破壊、武器庫爆破、逃走ルート封鎖、海軍特殊部隊が潜水艇基地を制圧、デルタフォースがカルテル幹部を拘束、CIA工作員が秘密口座を凍結。わずか数日で巨大カルテルは壊滅した。

 

 世界は騒然となった。 【米軍、主権国家内で大規模軍事行動】 【国際法違反ではないか】 【事実上の侵攻】 【南米各国が抗議】 国連は緊急会合を開いた。欧州各国は困惑。だがアメリカ側は強硬だった。ホワイトハウス報道官は断言した。 「カルテルは数十万人を殺してきた。」 「我々は国家安全保障上の脅威を排除した。」 一蹴だった。各国も反応した。中東自由連邦。009-7は記者会見で静かに語った。 「麻薬カルテルは国家を腐敗させる。」 「我々は米国の行動の背景を理解する。」 全面支持ではないが理解は示した。ロシアも意外な反応を見せた。 「麻薬組織は国家秩序への脅威である。」 FSB系メディアも同調。一方、中国は強く非難した。 「他国への軍事侵略である。」 「国際秩序を破壊する行為だ。」 世界は再び分断され始めた。その夜、009は作戦室でニュースを見ていた。燃えるカルテル拠点、拘束された指導者。泣く住民、歓声を上げる地域もあった。 「……これで終わるのかな。」 003が静かに隣へ座った。 「簡単には終わらないわ。」 009-7もモニターを見つめていた。 「麻薬は需要がある限り復活する。」 004が煙草をくわえた。 「だが頭は潰れた。」 009-7は頷いた。 「ブラックゴーストも次の手を考えるだろう。」 戦争は終わっていない。形を変えただけだ。窓の外、中東自由連邦の夜景は美しかった。巨大麻薬カルテル崩壊から数週間後、世界はようやく少しだけ落ち着きを取り戻していた。中東自由連邦周辺の紛争も沈静化し、ブラックゴーストの影も一時的に薄れていた。

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