日本では009-7の甥っ子、拓也はほっとしていた。 「やっと普通の生活に戻れる……。」 本当にそう思っていた。だが、翌朝、教室に入った瞬間、彼は固まった。 「え?」 窓際の席の金髪碧眼の美少女が手を振る。 「Good morning♪」 エミリーだった。普通に制服を着ていた。 「なんでいるの!?」 「留学。」 次、後ろの席には銀髪少女が無表情でゲーム機をいじっていた。アナスタシアだった。 「アーニャと呼んで。」 「いやだからなんで!」 「親が日本法人幹部。」 さらに、教室の扉が開いた。 「今日から転校してきました。」 黒髪ポニーテール、微笑む詩織。クラス男子がざわついた。 「美少女多すぎない!?」 「何このクラス!?」 担任が咳払いする。 「仲良くするように。」 拓也は頭を抱えた。 「終わってない……。」
状況は以前より悪化した。昼休み、エミリーが当然のように隣へ座った。 「お弁当食べる?」 アーニャは自然に反対側へ。 「席取っておいた。」 詩織は微笑みながらお茶を置く。 「はい。」 男子たちの視線が刺さる。 (なんなんだあいつ。) (羨ましい。) (爆発しろ。) 甥っ子は胃が痛かった。そんな中、009-7の娘、美由紀が遊びに来た。迎えに行った甥っ子は呆然とした。 「なんでそんな大荷物なの。」 「長期戦になるかもしれないから。」 「何の!?」 009-7の娘は三人と顔を合わせた。一瞬、空気が張り詰めた。 「あなたがエミリー?」 「そう。」 「へぇ、美人。」 「そっちもね。」 アーニャがじっと見る。 「……強い。」 「そっちも。」 詩織は苦笑した。 「なんか初対面の気がしないね。」 そして数時間後、四人は普通に盛り上がっていた。 「このクレープ美味しい!」 「ゲームやる?」 「カラオケ面白い。」 「プリクラ撮ろう!」 女子会だった。甥っ子だけ置いていかれていた。 「なんでこんな馴染むの……。」
しかし、平和な空気の裏で微妙な駆け引きが始まっていた。エミリーは自然に腕を組んで言った。 「映画行こっか。」 アーニャは無言で隣を確保した。 「ここ座れ。」 詩織はさりげなく距離を縮めた。 「勉強教えて?」 美由紀はそれを眺めながらニヤニヤしていた。 「青春してるなぁ。」 「他人事みたいに言うな!」 だが美由紀本人も甥っ子に妙に距離が近いのだ。 「ね、今度二人で買い物行かない?」 「お前もか!?」 四方向からの圧。クラス男子たちは死んだ目だった。 「なんであいつ。」 「ラノベの主人公か。」 「世界滅びろ。」
一方、中東自由連邦では009-7たちはモニターを見ていた。映像には美少女に囲まれて赤くなる甥っ子、拓也。笑う美由紀。仲良く騒ぐ女子たち。002が机を叩いた。 「羨ましい!!」 「まだ言うか。」 004が煙草を吸った。 「……完全にラブコメだな。」 003は苦笑していた。 「平和になった証拠じゃない?」 009は複雑そうだった。 「でも胃痛すごそう。」 009-7は静かに頷いた。 「若者らしくて良い。」 そして少し考えてから付け加える。 「ただし修羅場化の可能性は高い。」 003が吹き出した。 「分析しないでよもう。」
拓也の学校生活は、もはや普通ではなかった。昼休み、教室の中心には自然と人だかりができた。理由は、エミリー、アナスタシア、詩織。この三人だった。三人とも、あまりにも“強い”。勉強ができる。運動神経がいい。礼儀正しい。しかも気品がある。男子たちは遠巻きに見ていた。 「レベル高すぎる……。」 「近寄れねえ。」 「でもあいつ普通に話してる。」 「なんなんだよ009-7の甥。」 一方、女子たちは逆だった。 「エミリーちゃん英語教えて!」 「詩織ちゃんノート綺麗!」 「アーニャちゃんかわいい!」 完全に人気者だった。しかも三人とも意外と面倒見がよいのだ。結果、クラスの中心になっていた。 そして、拓也はその真ん中にいた。当然、周囲の視線は集まった。 「……胃が痛い。」 本人だけが疲弊していた。