秋、高校体育祭の季節だった。校庭にはテントが並び、歓声が響く。そして今年、全校生徒の視線を集めていたのは――。 「やばくない?」 「一年のあの三人。」 「モデル?」 「いや、映画か何か?」 エミリー、アナスタシア、詩織の三人だった。
まず徒競走。スタート直後。「速っ!?」 エミリーが風のように駆け抜けた。フォームが綺麗すぎた。続いてアーニャ。無駄がない軍人みたいな走り。詩織も軽やかだった。結果、一年女子上位ほぼ独占。観客席がざわついた。 「何あれ。」 「運動神経バグってる。」 「しかも顔面まで強い。」 さらに、午後のダンス競技。音楽が流れ、三人が動いた瞬間、空気が変わった。 「……え?」 レベルが違った。リズム感、姿勢、表情、動きのキレ。まるで舞台。CIA、FSB、公安。潜入訓練には社交ダンスや身体操作訓練も含まれていた。結果、一般高校生から見ると完全にプロだった。観客席は騒然とした。 「なんで高校にいるの!?」 「芸能事務所スカウト来るだろこれ!」 教師たちすら拍手していた。
当然、上級生男子たちも放っておかなかった。 「一年の金髪やばい。」 「銀髪も美人すぎ。」 「黒髪の子、清楚系だな。」 だが問題は三人とも他の男子には全く興味を示さないことだった。 「LINE交換しない?」 「ごめんなさい。」 「今度遊ばない?」 「忙しい。」 「先輩と話そっか?」 「必要ない。」 冷たい、というか全員、視線が009-7の甥っ子、拓也へ向いていた。 「お疲れ。」 「飲み物いる?」 「次、一緒に回ろ。」 自然に囲んだ。距離が近い。周囲の男子たちの殺意ゲージが上がった。結果、ヘイトが全部、拓也へ向かった。 「なんなんだあいつ。」 「調子乗ってね?」 「一年のくせに。」 嫌がらせが始まった。ロッカーを荒らされ、靴を隠された。体育倉庫に閉じ込められた。だが、三人はすぐ気づいた。 「……やったな。」 エミリーの笑顔が消えた。アーニャの目が冷えた。詩織はため息をついた。 「また?」 数日後の校舎裏、上級生グループは浮かれていた。 「え、マジで呼び出し?」 「金髪の子かな。」 「やべぇ。」 だが、待っていた三人の空気を見た瞬間、全員の顔色が変わった。怖い、明らかに怖い。エミリーが微笑んだ。だが目が笑っていなかった。 「後輩いじめ、楽しかった?」 「え、いや……。」 アーニャが一歩前へ出た。それだけで圧がすごかった。 「次やったら。」 短い沈黙。 「消す。」 上級生たちが震えた。詩織は柔らかい声で言った。 「普通に仲良くできないかな?」 その優しい声が逆に怖かった。一人が耐えきれず土下座した。 「すみませんでした!!」 「ごめんなさい!」 「許してください!」 完全敗北だった。
その帰り道、三人は何事もなかったように拓也と歩いていた。 「タピオカ飲みたい。」 「肉まん。」 「クレープも。」 「食い過ぎだろ。」 夕焼け、商店街、買い食い、笑い声。 完全に青春だった。拓也は呆れながら笑う。 「なんか最近、普通の高校生活じゃないよな。」 エミリーが肩をすくめた。 「楽しいからいいじゃん。」 アーニャも頷いた。 「悪くない。」 詩織が微笑んだ。 「こういう平和、好き。」 拓也は少しだけ照れた。 「……そっか。」 その後ろで遠巻きに見ていた男子生徒たちは死んだ目をしていた。 「なんだあのラブコメ。」 「世界が不公平。」 「爆発しろ……。」 嫉妬は集まっていた。