10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第60話 002がバカップルに

 事件は突然起きた。夜の繁華街で爆発。武装テロだった。ブラックゴースト残党による無差別攻撃だった。炎上するビル、崩れる看板、逃げ惑う人々。00ナンバーサイボーグは即座に出動した。 「急げ!」 009が駆けた。004が敵を制圧し005が瓦礫を持ち上げた。 そして002は、ある場所を見て凍りついた。 「……嘘だろ。」 いつものキャバクラが爆発に巻き込まれていた。002は迷わず飛び込んだ。煙、炎、崩れた店内。 「芽依!!」 初めて名前を叫んだ。返事はなかった。002は超加速で瓦礫をどかした。その奥に倒れている女性がいた。 「いた!」 芽依だった。気を失っていた。だが生きていた。002は震える手で抱き上げた。 「よかった……。」 その声は世界を救う英雄ではなく、一人の男の声だった。

 

 医療チームへ引き渡し、戦闘は終わった。ブラックゴースト残党は壊滅した。だが002は落ち着かなかった。数時間後、彼は医療施設へ向かっていた。 「……。」 病室の前で立ち止まった。緊張していた。009が呆れた。 「戦場より緊張してない?」 「うるせぇ!」 病室で芽依は目を覚ましていた。002を見た瞬間、涙ぐんだ。 「……来てくれた。」 「当たり前だろ。」 少し沈黙があった。そして、芽依は勇気を振り絞った。 「私……。」 声が震える。 「ずっと002さんが好きでした。」 002は固まった。 「え。」 「不器用で、優しくて……。」 「世界を救うところも凄いけど。」 「普通に寂しがってるところも好き。」 涙が零れた。 「心配で、放っておけなくて……。」 002は顔を真っ赤にしていた。数秒沈黙して頭を掻いた。 「……反則だろそれ。」 「え?」 「そんなこと言われたら。」 002は照れながら笑った。 「俺も好きになるに決まってんじゃん。」 芽依の目が見開かれた。 「……ほんと?」 「ほんと。」 次の瞬間。 二人は抱き合っていた。

 

 後日の00ナンバーサイボーグ事務所。003がニコニコしていた。 「よかったねぇ。」 009も嬉しそだった。004は煙草を吸いながら呟いた。 「ようやくか。」 009-7は静かに頷いた。 「長かったな。」 002は真っ赤だった。 「うるせぇ!!」 だが、その顔はとても幸せそうだった。窓の外では平和な街の灯りが輝いていた。002は幸せだった。人生でここまで幸せだったことがあっただろうか、というくらい幸せだった。

 

 病院で再会してからというもの、芽依の愛情が完全に爆発していた。 「002さん!」 会うたび抱きついた。 「無事でよかったぁ……。」 泣く、撫でる、離れない。瓦礫の中、炎の中、自分を抱き上げて助けてくれたのが本当に002だった。その事実が芽依の中で完全に“運命”になっていた。 「だって普通、空飛んで助けに来ないよ!?」 「まあそうだけど。」 「しかも王子様みたいだった!」 「やめろ恥ずい!」 002は顔を真っ赤にしていた。

 

 問題は、002が真面目な恋愛経験に乏しかったことであった。女性と遊んだことはある。軽口も叩けた。だが、本気で付き合うとなると加減がわからない。結果、めちゃくちゃ甘くなった。 「寒くねぇ?」 「大丈夫。」 「いや絶対寒い。」 上着をかけた。 「荷物持つ!」 「歩き疲れてない?」 「腹減ってない!?」 過保護だった。しかも、芽依の方も全力だった。 「002さんかっこいい。」 「好き。」 「今日も好き。」 「毎日好き。」 002は耐えられなかった。 「心臓がもたねぇ!!」結果、完全なバカップルが誕生した。デートで手を繋ぐ、見つめ合う、自然にくっつく、距離が近い、甘い、周囲が見えない。009が遠い目をした。 「……すごいね。」 003が苦笑した。 「初恋の高校生みたい。」 004は煙草を吸いながら呟いた。 「見てるこっちが恥ずかしい。」 006はニヤニヤした。 「でも幸せそうアル。」 007は腹を抱えて笑っていた。 「ジェットがこんなんなるとはなぁ!」 002本人は開き直っていた。 「うるせぇ!好きなんだからしょうがねぇだろ!」 003が吹き出した。 「堂々と言った!」

 

 さらに謎だったのは、親衛隊の反応であった。なぜか、評価が爆上がりしていた。 「002様……。」 「純愛。」 「尊い。」 「世界を救った英雄が一人の女性を幸せに……。」 「理想の男では?」 特に若い親衛隊員たちが盛り上がっていた。SNSでは、【#002様幸せになって】 【#英雄の純愛】 【#バカップルでも尊い】 など意味不明なタグが流行した。さらに、瓦礫から芽依を救出した監視映像の一部が流出した。炎の中を飛び込む002。お姫様抱っこ、真剣な顔。完全に映画だった。人気が爆発した。一方、芽依は突然、自分が世界中から注目されていることを知った。 「えっ!?」 「002様の恋人!?」 「いやいやいや!!」 パニックした。しかし、002は真顔で言った。 「俺の彼女なんだから堂々としてろ。」 芽依は顔を真っ赤にした。 「そ、そういうの急に言うのズルい……。」

 

 冬休み前、009-7は日本へ帰省することにした。本来は短期の私的訪問……のはずだった。だが、「俺も行く。」 002 が即答した。003も普通に荷造りしていた。004は「別に暇だからだ」と言いながら航空券を持っていた。006は日本食を楽しみにしていた。007は観光ガイドを読んでいた。009が呆れた。 「みんな普通に行く気満々だね。」 009-7は静かにコーヒーを飲んだ。 「……まあ賑やかな方がいいかな。」 そして002は当然のように恋人の芽依を連れて行くことにした。 「えっ、私も!?」 「当たり前だろ。」 「でも仕事……。」 「休ませる。」 002は真顔だった。 「数日でも離れるとか無理。」 芽依は顔を真っ赤にした。 「そういうこと自然に言うのやめてぇ……。」 完全にバカップルであった。

 

 日本に到着した。空港ではいつもの大騒ぎ。 「009だ!!」 「003さん!」 「002様ー!!」 「009-7だ!!」 マスコミ、群衆、スマホ、フラッシュ、歓声。芽依は呆然としていた。 「えっ……すご……。」 自分の彼氏は改めて考えると世界的英雄だった。 002は自然に芽依を守るように肩を抱いた。 「離れるなよ。」 「う、うん……。」 周囲の女性ファンたちは一瞬ショックを受けた。 だが、「彼女守ってる002様尊い……。」 「リアル王子様じゃん。」 逆に好感度が上がった。芽依はさらに混乱した。

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