ロシア連邦保安局FSBは分析していた。 【アナスタシア作戦:成功】 【009-7親族への接触により関係改善】 【対象家族の心理的安定に寄与】 【有効性高】 そして、結論は「次段階へ移行」 ターゲットは009-7の娘、美由紀。FSBは慎重だった。何しろ相手は009-7なのだ。超高性能電子戦サイボーグである。下手な工作は即座に見抜かれる。だから、今回は“自然”を徹底した。まず、制裁で撤退していたロシア系日本法人が限定的に業務再開し、スタッフが着任した。その家族も来日した。完全に合法で自然なことだった。そして、その中に一人の少年がいた。イワン。長身で銀髪混じりの黒髪。端正な顔立ち、しかも成績優秀。日本語も自然で礼儀正しい。さらにスポーツ万能。女子生徒たちは即座に騒いだ。 「転校生やばい!!」 「映画俳優!?」 「ロシア系イケメン……。」 しかし、FSBの指示は明確だった。 【最初は接触するな】 【自然な距離を維持】 【知人から始めろ】 アナスタシアの経験から学んでいた。焦ると009-7に察知される。
一方、009-7は転校生データを軽く確認していた。 「ロシア系企業駐在員の息子か。」 数秒分析した。 【娘への接近行動:無し】 【危険度:低】 判断は「問題なし。」 スルーした。FSBの思う壺だった。だが、予想外のことが起きた。美由紀の方が興味を持った。昼休みに女子たちが騒いでいた。 「イワン君って超優しくない?」 「ノート貸してくれた!」 「しかも良い匂いする。」 美由紀は最初、ふーんと思っていた。だが、廊下ですれ違った瞬間。 「……。」 イワンが自然にドアを押さえた。 「どうぞ。」 「え、あ、ありがとう。」 微笑みが爽やかだった。自然で嫌味がなかった。しかも、娘の正体を知っていても特別扱いしなかった。それが逆に新鮮だった。 (……なんか感じいい。) FSB本部では報告を受けた担当官が静かに頷いた。 「順調だ。」
イワンの評価は爆上がりしていた。 【自然】 【押しつけがましくない】 【対象が自主的に関心】 理想的だった。FSB上層部は満足していた。 「優秀だ。」 「アナスタシア級の成果も期待できる。」 だが、当然、他国も黙っていなかった。まず気づいたのはCIAだった。 「FSBが動いた。」 「009-7の娘を狙っている。」 「対抗措置を。」 結果、上級生としてCIAエージェントが送り込まれた。金髪で爽やか。運動部所属。しかも娘の部活の先輩だった。「困ったことあったら言えよ。」 自然に優しかった。女子たちがざわついた。 「先輩もイケメン……。」 さらに、警察庁公安部も察知した。 「FSBとCIAが接触開始。」 「こちらも人員投入。」 今度は同級生の転校生。黒髪、知的系イケメン。穏やかで会話が上手い。しかも同じクラスだった。完全に包囲網だった。そして、009-7が異変に気づいた頃には遅かった。
娘は完全に“モテ期”に入っていた。 「えー?」 「また誘われてる。」 「いいなー。」 部活の先輩、ロシア系優等生、同級生の知的男子。その他一般男子も周囲がチヤホヤする。 娘は気分が良くなっていた。 (……悪くないかも。) 今まで恋愛ゼロ、男子に避けられてきた。それが急にイケメンたちが優しい。話しかけてくる、褒めてくれる。そりゃ調子にも乗る。009-7は作戦室で青ざめていた。 「……増えている。」 モニターには【娘接触男性】 【急増】 【しかも高性能】 003が後ろで笑いを堪えていた。 「手遅れね。」 「そんな……。」 「今まで排除しすぎた反動よ。」 009-7は真剣にモニターを見た。イワン、CIA先輩、公安転校生。全員スペックが高かった。しかも自然で排除理由が見つからない。 「どうすれば……。」 004が煙草をくわえる。 「諦めろ、父親。」 009-7は人生最大級に動揺していた。一方、娘本人はカフェで友人たちに囲まれながら上機嫌だった。
中東自由連邦本部では009-7が深刻な顔をしていた。 「……日本へ戻る。」 009が首を傾げた。 「急だね。」 「娘と話す必要がある。」 003は嫌な予感しかしなかった。 「まさか本当に言う気?」 009-7は静かに頷く。 「父として。」 004が煙草をくわえた。 「過保護だな。」 「当然だ。」 その後ろで002が恋人の芽依とイチャついていた。 「日本デートだな!」 「もう少し空気読んで。」 だが002も普通について来る気満々だった。 007は笑っていた。 「絶対面白いことになるぞ!」