数日後の日本。高校近くのカフェに009-9の娘、美由紀は呼び出されていた。行ってみると00ナンバーサイボーグが揃っていた。 「なんでいるの!?」 周囲の一般客がざわついていた。 「本物!?」 「009だ!」 「003さん綺麗……。」 「002様彼女連れてる!」 カフェが半分イベント会場になっていた。
美由紀は嫌な予感がした。 「……で?」 009-7は静かにメロンソーダを置いた。 「最近、男性との接触が増えているね。」 「監視してたの!?」 「父親として当然だ。」 「当然じゃない!!」 003が頭を抱えた。だが、009-7は真剣だった。 「美由紀」 「なによ」 「男を見る目は重要だ」 「わかってる!」 「もしお前を望むなら。」 数秒沈黙した。そして、009-7は超真顔で言った。 「私を倒せる男でなければいけない」 店内が凍った。 「言った!!」 009が頭を抱えた。003がテーブルに突っ伏した。007は爆笑した。002は芽依に「これが親ってやつだ」と謎解説していた。美由紀は真っ赤だった。 「サイボーグに勝てるわけないでしょ!!」 「覚悟の無い男は認めない。」 「相手ただの高校生だよ!!」
だが、004が静かに口を開いた。 「……いや。」 全員が見る。004は煙草を灰皿に押し付けた。 「“ただの高校生”じゃない。」 空気が変わった。004は調査していた。いつもの癖だった。美由紀に近づく男たちは妙に出来すぎていた。違和感があった。そして、調べた結果、全部出た。まずイワン、ロシア系企業駐在員の息子。「FSB工作員候補」 美由紀は固まった。 「……え?」 次、部活の先輩。「CIAエージェント」 「は?」 最後、同級生転校生。「公安。」 美由紀の顔色が消えた。009が言った。 「うわぁ……。」 003も引いていた。 「包囲されてる……」 002は素直に感心していた。 「美由紀ちゃん人気者じゃん。」 「そういう問題じゃない」 美由紀はしばらく理解できなかった。 「……え。」 「え?」 「みんな?」 004が頷いた。 「全員、情報機関関係者だ。」 「……。」 美由紀の頭の中で。 最近の出来事が蘇った。妙に自然な会話、距離感、偶然、優しさ。全部、任務。美由紀の目に涙が溜まった。 「……最低」 静かな声だった。 「普通に仲良くしてくれてると思ったのに」 ぽろっと涙が零れた。 「またお父さんのせいじゃん……。」 009-7は珍しく言葉に詰まった。 「……。」 美由紀は泣きながら立ち上がった。 「もうやだ!」 そのまま店を飛び出した。
沈黙と重い空気。003がため息をつく。 「やりすぎなのよ。」 009-7は珍しく苦い顔をしていた。 「……守りたかっただけだ。」 004は淡々と言った。 「お前が娘を特別扱いしすぎた結果だ。」 002の恋人、芽依が小さく呟く。 「普通の恋愛って難しいんですね……。」 009が苦笑した。 「僕ら普通じゃないからね。」
その夜、美由紀は部屋で泣いていた。 「なんなのもう……。」 怒り、悔しさ、恥ずかしさ。 そして少しだけ、イワンにときめいていた自分が悔しかった。スマホが震えた。メッセージがきた。 【ごめん】 イワンだった。短い文章だった。 【最初は任務だった】 【でも君と話すのは本当に楽しかった】 美由紀はスマホを見つめた。涙がまた零れた。彼女の前途は多難だった。その夜、美由紀はベッドで天井を見ていた。 「……普通の恋愛したい。」 切実だった。だが、父は009-7。周囲には情報機関、候補者は工作員。環境が普通じゃなかった。そこへ、スマホ通知。【イワン】 メッセージは短い。 【本当に君と話したかった】 美由紀はしばらく画面を見つめていた。そして、小さくため息をついた。 完全に恋する年頃の女の子だった。