10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第64話 002は幸せだった

 その頃、002と芽依は異常なくらい幸せだった。日本滞在中、二人は普通に街を歩いていた。手を繋ぐ、自然に肩を寄せる、目が合うたび笑う。完全に恋人空間であった。芽依はしみじみ呟いた。 「なんか今でも信じられない。」 「何が?」 「002さんと付き合ってること。」 002は照れながら笑った。 「俺もだよ。」 「だって世界的英雄だよ?」 「でも好きになったの、お前だけだし。」 芽依が真っ赤になった。 「そういうの急に言うんだから!」 002は悪気ゼロだった。 「本当のことじゃん。」 芽依は完全に限界だった。 「好きぃ……。」 そのまま抱きついた。通行人がざわついた。 「またイチャついてる。」 「仲良すぎ。」

 

 002は本当に幸せだった。今まで戦って飛び回って孤独だった。でも今は違う。帰る場所がある。自分を心配してくれる人がいる。それが嬉しくて仕方なかった。ある夜、ホテルのラウンジで夜景を見ながら芽依が呟いた。 「なんで私だったの?」 002は少し考えた。 「……お前、俺を002じゃなくてジェットとして見てくれたから。」 芽依は目を見開いた。 「世界を救う英雄とかじゃなくて。」 「不器用で、寂しがりで、恋愛下手な男として見てくれた。」 002は照れながら笑った。 「だから好きになった。」 そして。 さらっと続けた。 「お前が素敵な女だからだよ。」 芽依は完全停止した。 「……。」 「芽依?」 「無理。」 「え?」 「好きすぎて無理。」 愛情が爆発した。そのまま002へ抱きつき頬へキス連打。 「好き好き好き!!」 「ちょ、おい、人いる!」 「知らない!!」 完全にバカップルだった。

 

 そして、当然周囲が放っておくわけがない。一般人が撮影しSNS投稿。さらに、YouTubeまとめ動画化。 【002様、彼女に甘すぎる件】 【世界的英雄、恋人の前ではただの彼氏】 【バカップルまとめ】 再生数は爆発した。動画内容は、【好きぃ!!】→抱きつく芽依 【お前かわいいなぁ】→頭撫でる002 【寒くない?】→五回目 【手離すなよ】→真顔 【俺の彼女だから】→周囲絶叫。コメント欄には、【甘すぎる】 【見てるこっちが死ぬ】 【尊い】 【世界救った男が恋愛初心者なの好き】 【002様かわいすぎ】 炎上した。ただし幸せ方向に。

 

 00ナンバーサイボーグたちは呆れていた。009が遠い目をした。 「最近ずっとこれだよ。」 003は苦笑した。 「幸せそうだからいいけど。」 004は煙草を吸いながら一言。 「うるさい。」 007は腹を抱えて笑っていた。 「ジェットが恋愛脳になってる!」 009-7ですら少し引いていた。「ここまでになるとは。」

 

 一方、009-7の娘、美由紀はスマホでその動画を見ていた。 【好き好き好き!!】 【お前ほんと可愛いな】 【離れるなよ】 娘は無言だった。友人がニヤニヤしていた。 「羨ましい?」 「……別に」 「顔真っ赤」 「うるさい」 だが、少しだけ胸が締め付けられた。 (いいなぁ……。) あんなふうに、自然に好きになって、好きって言い合えて、守られて、笑い合える。そんな恋愛してみたかった。

 

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