10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第8話 報道

 戦闘は隠しきれなかった。山岳地帯一帯で発生した大規模爆発、電子障害、自衛隊出動、さらにSNSへ流出した映像。大手マスコミ各社は即座にヘリを飛ばした。夜の山、 炎、ミサイル。 そして――。 『現在、現場上空です!』 ヘリカメラが捉えた。空を飛ぶ男、銃弾を超える速度で移動し爆炎の中を駆け抜ける加速能力者。さらに、銀髪の少女。赤い瞳が光り、周囲のドローンが次々停止し、ミサイルが空中で方向転換していく。電子ノイズで映像が乱れる。だが逆に、それが現実味を増していた。『な、なんですかあれは……!?』 レポーターの声が震えた。テレビの前の日本中が凍りついた。SNSは数分で崩壊状態となった。 【本物?】 【CGだろ】 【いや自衛隊いるぞ!?】 【銀髪の子かわいすぎる】 【魔女だ】 【人間じゃない!?】 世界規模で情報が拡散していく。 もはや隠蔽は不可能だった。

 

 榊家のリビングでは、テレビ画面を見ながら家族全員が固まっていた。画面の中では、 009-7が電子戦を行っている。赤い瞳、銀髪、無数の火花、ミサイルを止める姿。娘が震え声で呟く。 「……お父さん?」 妻はソファへ座り込んでいた。 「こんな危険なことを……」 009-7が命懸けで戦っている。しかも相手は軍隊規模。今さらながら家族は理解した。彼女が“普通ではない世界”に生きていることを。近所でも騒ぎになっていた。 「あの子でしょ!?」 「ほら、榊さん家にいた!」 「ええええ!?」 娘の同級生の女子生徒たちは大興奮だった。 「マジで本物の超能力者!?」 「しかも超美少女!」 「かっこよすぎる……!」 一方、かつて009-7へ告白した男子高校生は青ざめていた。テレビでは、009-7が敵無人機を一瞬で制圧、戦車砲が逸れ、ドローン群が墜落していた。銃弾が命中して火花を散らす中、無傷で身を翻し光線銃で敵をなぎ倒す。人間ではなかった。男子高校生は震えた。 「……俺、何に告白したんだ?俺、死んでてもおかしくなかった……」 友人が肩を叩く。 「生きててよかったな」 「マジでな……」 あの“魔女”に告白した男として、学校で変な尊敬を集め始めていた。

 

 世界最強の美少女に絡んだ男 佐藤健二、二十一歳。 職業、半グレ予備軍。今は布団の中で震えていた。「……俺、生きてる」。深夜のコンビニ。なんかめちゃくちゃ綺麗な銀髪の女がいた。ナンパした。軽く脅した。仲間と囲んだ。路地裏へ連れ込もうとした。そこまではいつものノリだった。問題はその後だ。「……なんでナイフが折れるんだよ」思い出しただけで震える。仲間の一人が刺した。確かに刺した。なのに、銀髪の少女の肌へ触れた瞬間、バキン、とナイフの方が折れた。しかも本人は『痛くも痒くもない』という顔をしていた。さらに怖いのはその後、仲間が鉄パイプで殴った。すると、鉄パイプが曲がった。「意味わかんねえ……」 その後は地獄だった。チンピラ数人が小柄な美少女一人に文字通り転がされた。しかも全然本気じゃなかった。まるで子供相手みたいに。テレビを見た。あの銀髪、あの赤い目、あの顔。テレビの中で軍隊を無力化していた。ミサイルを止め、戦車を翻弄する化け物。つまり自分は世界最強クラスの存在に絡んでいた。 「俺なんで生きてんの……?」

 

 数時間後、戦闘は終結した。ブラックゴースト側無人兵器群は停止。山岳地帯には煙が漂っていた。疲弊した00ナンバーサイボーグたちが集まった。009は肩で息をしていた。 「……終わったか」 「一時的にはな」 004が答えた。004の服も破れていた。002が空から降りてきた。 「下が大騒ぎだぜ」 報道ヘリ、警察、自衛隊、マスコミ、全部集まっていた。そしてついにマスコミが彼らを取り囲んだ。 「こちらをご覧ください!」 「あなたたちは何者なんですか!?」 「政府の特殊部隊ですか!?」 「世界で起きている事件との関係は!?」 ライト、カメラ、怒号。完全な記者会見状態であった。 009は頭を抱えた。 「うわぁ……」 「苦手か」 004が聞く。 「戦闘よりキツい」

 

 その中でも特に注目を浴びたのは、009-7と003だった。003は気品ある美しさ、009-7は幻想的な異質さ。カメラが集中した。 「銀髪の女性は!?」 「本当に人間なんですか!?」 009-7は盛大に疲れた顔だった。 「帰りたい……」 003が苦笑する。 「人気者ね」 「嬉しくない」 一方、009は妙に女性人気が高かった。 「009さんこっち向いて!」 「笑ってください!」 「かっこいいー!」 本人は困惑していた。 「なんで?」 002が爆笑した。 「お前、昔から女受けいいんだよ!」 004は相変わらず近寄りがたい。だが逆に一部から熱狂的支持を受け始めていた。 「あの無口な人やばい……」 「渋すぎる……」 009-7はその光景を見て呆れていた。 「世界滅亡寸前なのに芸能ニュースみたいになってる」 003が静かに言った。 「でも、人は恐怖だけじゃ壊れるわ。憧れや希望が必要なのよ」 009-7は少し黙って周囲の歓声を見た。人々は怯えている。だが同時に、00ナンバーサイボーグへ希望も見ていた。

 

 その夜、ネットでは009-7の通称が定着し始めていた。 《銀の魔女》《電子の魔女》《赤い目のサイボーグ》。ファンアート、陰謀論、崇拝、恐怖。全てが混ざり合った。009-7はスマホを見て絶望していた。 「……なんで私の切り抜き動画が百万再生されてるんだ」 009が吹き出した。 「人気者だな」 「嫌だ!」 そこへ004が来た。 「政府が接触を求めている」 「だろうな……」 「さらに各国も動き始めた」 009-7は頭を抱えた。 「最悪だ」 彼女は理解していた。 もう後戻りはできない。 00ナンバーサイボーグ、そして009-7は世界へ知られてしまったのだ。

 

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