009-7が00ナンバーサイボーグたちと合流して数か月たった頃。彼女――いや、まだ本人にもその呼び方がしっくり来ていなかった――は、自室で頭を抱えていた。 「なんだこれは……」 ベッドに座り込み、真剣な顔をしていた。戦闘訓練ではなく、敵の陰謀でもなかった。いや、広い意味ではブラックゴーストの陰謀かもしれなかったが、個人的な問題だった。体調が悪いのだ。思考がはっきりしない。腹部に痛みがある。出血もあった。知識としては知っていたので、できる範囲で対応もした。でも落ち着かなかった。とてもリビングに行って他の皆と過ごす気分になれなかった。部屋に閉じこもっていた。
ドアがノックされた。 「入るわよ。」 003だった。009-7は慌てて立ち上がった。 「いや、ちょっと待て。」 「どうしたの?」 003はすぐに異変に気付いた。普段の009-7らしくなく、どこか落ち着きがなかった。 「何かあった?」 003が尋ねた。しばらく迷った末、009-7は小さな声で言った。 「身体がおかしい。」 003は一瞬だけ心配そうな顔になった。 「故障?」 「故障じゃない」 「痛いの?」 「痛みはあるけどひどくはない」 さらに数秒。 「女性の身体って大変なんだね……」 その一言で003は理解した。 「ああ」
009-7は元々中年男性だった。結婚もしていた。知識としては知っていたし、妻と生活していた。しかし、自分自身が経験するのは初めてだ。003は隣に腰を下ろした。 「びっくりしたでしょ」 「かなり」 「故障じゃないから安心して。」 009-7はため息をついた。 「戦車と戦う方が楽だ」 003は思わず笑った。 「普通はそう思わないわ。」 その後しばらく003は女性の身体の変化について説明した。体調、気分の変化、生活上の注意。009-7は真面目に聞いていた。話が終わる頃には、少しだけ表情が明るくなっていた。 「ありがとう」 009-7が素直に言った。003は微笑んだ。 「私たち仲間でしょ。」 窓の外では夕日が沈み始めていた。
戦闘では誰よりも強い009-7だったが、新しい身体についてはまだ初心者だった。そして003は、その戸惑いを理解できる数少ない存在だった。こうして009-7はサイボーグとしてだけでなく、一人の人間としても少しずつ新しい人生に慣れていくのだったが、素朴な疑問があった。009-7の身体は完全に人工なのだ。なんで戦闘に差し障るような機能まで作り込んでいるのだろう?鏡に映った自分の姿が見えた。絶世の美少女だ。なんとなく嫌な想像に到達した。ひょっとしてブラックゴーストは009-7をハニートラップに使おうとしていたのかも。妊娠もできるのかも。誰に聞けばいいんだろう?