宝塚公演の騒ぎから数週間後。一人の男が悩んでいた。プロデューサー、春元泰。 「困った……」 アイドル業界は変化していた。新しいスターが出ない。話題性が続かない。SNSの流行は一週間で終わる。そんな時だった。宝塚公演の映像。画面いっぱいの悲鳴。女性客の熱狂とSNSトレンドの独占。春元は立ち上がった。 「これだ!」 スタッフは困惑した。 「何がです?」 「009-7だ!」 「は?」 「アイドルだ!」 「いや違います」 「違わない!」 その日のうちに手紙が送られた。
数日後の009-7の自宅。 「なんだこれは」 封筒を開いた。娘が覗き込んだ。数秒後、絶叫。 「えええええええ!?」 009-7が飛び上がった。 「どうした?」 「お父さん!」 「うん」 「春元泰!」 「誰だ?」 娘は倒れそうになった。 「知らないの!?」 「知らん」 「伝説のプロデューサー!」 「そうなのか。」 娘は机を叩いた。 「やるべき!」 「いや」 「やるべき!」 「私は戦う方が本職なのだが」 「絶対やるべき!」 結果、一回だけ、という条件で出演が決まった。AKB劇場の楽屋でアイドルたちは大騒ぎだった。「本物!?」 「本物だ!」 「テレビで見た!」 「戦車止めた人!」 「お姉様!」 009-7は頭を抱えた。 「またお姉様か。」 しかし、メンバーたちは目を輝かせていた。 「写真!」 「サイン!」 「握手!」 「筋トレ何してますか!」 最後の質問だけ少し違った。
本番が始まった。劇場では、ファン、アイドルファン、宝塚ファン、なぜか軍事マニアも加わって大混戦になった。そして、ステージ中央に009-7が登場した。会場は爆発した。 「お姉様ぁぁぁぁ!」 「生きててよかったぁぁぁ!」 歌う。歓声。踊る。歓声。微笑む。大歓声。009-7は理解した。何をしても騒がれる。終演となった。無事終了した。 「疲れた……。」 楽屋で倒れ込んだ。そこへ、差し入れを持った男たちが現れた。002、004、009。 「お疲れ」 「助かったよ」 その瞬間、楽屋が静まった。アイドルたちの視線が三人に集中した。 「002さん!」 「004さん!」 「009さん!」 大騒ぎになった。
特に009は完全に囲まれた。 「一緒に写真!」 「握手!」 「サイン!」 009は困りながらも笑顔だった。 「はいはい」 写真、写真、さらに写真。002がニヤニヤしていた。004は距離を取っていた。そして、誰かが投稿した。SNS【009さんと記念写真】 投稿、拡散、超拡散。数時間後の基地で003がスマホを見ていた。沈黙があった。009は危険を察知した。 「003?」 返事がなかった。 「どうしたの?」 まだ返事がなかった。 「怒ってる?」 003が微笑んだ。とても綺麗な笑顔だった。009は後ずさった。 「ジョー?」 「はい」 「楽しそうね。」 「何が?」 「写真」 「いや」 「可愛い子たちに囲まれて」 「仕事だよ!」 「へぇ」 002が爆笑した。004は新聞を顔に被せた。巻き込まれたくなかった。009-7はため息をついた。 「また始まった」 数分後、基地中に響く声。 「誤解だー!」 逃げる009、追う003。爆笑する002。知らん顔の004。そして009-7はソファでお茶を飲みながら思った。 「世界の危機より、この二人の方が定期的に騒ぎを起こすな」