10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第93話 今度は映画

 AKB劇場での大騒ぎから一か月後、009-7は平和な休日を過ごしていた。コーヒー、新聞、静寂。理想的だった。そこへ娘が飛び込んできた。 「お父さん!」 「なんだ?」 「大変!」 「またか!」 最近、この言葉で始まる話はろくなものではなかった。娘は封筒を差し出した。009-7は開封した。数秒後 「誰だ?」 娘が頭を抱えた。 「知らないの!?」 「知らん」 「世界的映画監督!」 「そうなのか?」 「そうなの!」 監督は有名だった。数々の戦争映画、アカデミー賞、国際映画祭。受賞歴だらけ。その監督が言ったのだ。 「次の映画はこれだ。」 タイトル【戦場の天使】 主人公009-7。娘は興奮していた。 「やるべき!」 「またか」 「絶対やるべき!」 結局、一回だけ。いつもの条件だった。

 

 打ち合わせ当日、映画会社。009-7は少し不安だったので、002、004、009の三人が付き添った。監督は三人を見て固まった。そして叫んだ。 「最高だ!」 全員「は?」 監督は興奮していた。 「本物じゃないか!」 嫌な予感がした。数時間後、出演契約書。009-7主演、002脇役、004脇役、009重要人物。 「なんでだ?」 004が言った。 「顔」 監督が答えた。

 

 そして、撮影が開始された。監督は009-7に驚いた。演技指導不要、戦場の歩き方の指導不要、銃の扱い方の指導不要、緊迫感の指導不要。全部本物だった。監督は泣いていた。 「理想だ……」 スタッフも感動していた。 「本当に戦場を知っている人間だ」 当然だった。実際に戦っているのだ。爆発、煙、銃声、その中心を歩く009-7。圧倒的だった。監督が呟いた。 「演技じゃない。存在感そのものだ。」

 

 さらに問題が起きた。009であった。映画の中盤での女優とのシーン。見つめ合う、静かな会話、微笑み。 監督「完璧!」 スタッフ「完璧!」 女性スタッフ「素敵!」 その映像を偶然見た003は沈黙した。 再生、停止。再生、停止。再生、停止。 「ジョー」 009が震えた。 「はい」 「これは演技よね?」 「もちろん」 「演技よね?」 「もちろん!」 002は大爆笑だった。004は離席した。巻き込まれたくない。

 

 数か月後、公開日となった。映画館は満員。上映終了後、静寂。誰も立たない。数秒後、拍手、大喝采。世界中でヒットした。戦争映画、ヒューマンドラマ、アクション、全部高評価だった。特に009-7。 「本当に戦場の天使だった」 「神々しい」 「かっこよすぎる」 「お姉様!」 そして、舞台挨拶がとんでもなかった。会場には数千人。009-7、002、004、009が登壇すると、歓声、悲鳴、絶叫で収拾不能になった。009-7が挨拶した。歓声。004が一言話す。歓声。002が手を振った。歓声。そして、009が微笑んだ。 会場が崩壊した。 「きゃあああああ!」 003は客席ではなく舞台袖にいた。監視であった。009はその視線を感じた。背筋が寒かった。

 

 映画監督は感動していた。 「続編を作ろう!」 009-7は即答した。 「断る!」 「三部作で!世界展開!」 「断る」 「ハリウッド!」 「断る」 監督は本気で落ち込んだ。 その横で娘は叫んでいた。 「もったいない!」 009-7はため息をついた。芸能界の熱量は恐ろしい。

 

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