*主人公視点*
.....俺、ちゃんと生きてるか?
うぐっ.....体中が痛い。痛みを感じてるってことは生きてるんだよな?
メフィストを倒すためとはいえ、ちょっと無茶をしすぎたかもしれん。あの爆発で確実に倒したのかは分からないが、少なくとも重傷は負っただろう。
今いる空間を見る限り、またフリューゲルに回収されたみたいだ。
ネクサスのサポートが手厚くて助かる。
「絆紡さん、おかえりなさい。
私との約束を守ってくれましたね」
「当然だ」
「.....けど、酷い怪我です。体中ボロボロになるまで戦ったんですね」
「そうしないと倒せない相手だったからな」
「絆紡さん。もう今回みたいに、無理をして戦いに行かないでください」
「.....それは約束できない。そうしなければならない時が、きっとくる」
「けど、そんな事を続けてたら体が」
「俺は大丈夫だ。ここで怪我も治せるし、何も心配することは──」
「大丈夫なわけないじゃないですか!
凶悪な敵を相手に、いつも真っ先に立ち向かって、守って、傷ついて。これからもそうするのでしょう?
あなたは自分がどれだけ傷付いても、他を守ることが出来たらそれでいいのですか?少しも弱音を見せないで、心配しても返ってくる言葉はいつも『大丈夫』の一言だけ。
これじゃ.....いつ倒れてもおかしくないと思っちゃうじゃないですか....」
セレナ.....いつも俺を気にかけてくれていた時、ずっとそんなことを思っていたのか。
「そこまで心配してくれていたのか。ありがとう、セレナ。
けど、本当に大丈夫なんだ」
「また『大丈夫』なんて言って!このわからず屋!」
「.....俺はな、自分のことをどうでもいいなんて思ってるわけじゃないんだ。けど、俺が戦うことで救える命があるなら、俺は戦いたい。
助けなくて後悔はしたくないんだ」
「だけど!それであなたの身にもしものことがあったら──」
「ビーストと戦う以上、覚悟はしておかなくちゃいけない。
だけど、そう簡単に死ぬつもりはないぞ。叶えたい未来があるからな」
「──っ!.....ですけど、それが叶うなら命を捨ててもいいって思ってるんじゃ」
「さっきも言っただろ。自分のことを軽視してるわけじゃない。
それに、俺はかなり欲張りでな。その未来のもっと先まで、自分の目で見たいと思っている。
だから、俺に頑張らせてくれないか?」
「.....ズルいですよ、絆紡さん。
そんなことを言われたら、ダメなんて言えないじゃないですか」
「すまないな。けど、止まるわけにもいかないんだ」
「分かりました。
けど、少しくらい休憩してもいいとは思いませんか?」
「それは、どういう──」
「今だけは、ゆっくりしてもいいんですよ」
「.....なるほど。分かったよ。
確かに、ちょっと頑張りすぎたかもな」
「ええ。だから、聞かせてください」
「.....戦いには疲れたよ。だから、少しだけ休ませてもらう」
「はい。しっかり休んでくださいね」
セレナには心配させすぎてしまったな。
今は体を癒すことに専念しよう。
本調子には程遠いが、動けるくらいには回復したな。
ウェルがちゃんと回収されてるか確認しないと。
「了子はいるか?」
「あ、やっと出てきてくれた!心配したんだからね!」
「すまなかったな。今回もギリギリの戦いだったんだ。
ところで、協力者は無事に連れてこられたか?」
「それについては問題ないわ。
正体を明かした時はかなり驚かれて、説明するのに苦労したわ」
「おいお前!この女は本当に本物のフィーネなのか!?」
「間違いない。俺が復活させたんだから」
「これが知られたら世界がひっくり返るな」
「だからこうやって隠してる。お前も死んだことになってるだろうから、ここで大人しくしててくれよ。世界に名が轟く前に、また消しに来られるぞ」
「分かってますよ。そんなヘマはしませんって」
「これからは私たち2人で研究を進めるわけね。
他の人の意見も聞きたかったから助かるわ」
「期待しているぞ。2人とも」
「僕が対抗策を見つけ出してみせますよ」
「あら、私の方が知識については上よ?」
「そんなもの、すぐに追い抜いてみせますよ」
「頼もしいのはいいが、ちゃんと協力をしてくれよ?」
「分かってるわよ〜。けど、こうやって競争してた方が発見も多かったりするのよ?」
確かに、そういうのもあるのか。
「その辺の折り合いはプロに任せるよ」
「なら、まずはデータを見るところから始めましょうかね」
「だったら纏めたものをあなたに渡すわ。ちょっと待ってて」
「他にも何か必要なものがあるなら了子に言うといい。ここの資金は全部彼女に預けているからな」
「分かりましたよ」
数日後、大量の菓子類が届くことになった。
後はエルフナインの様子を見に行かないと。
日付は確認していて、今日があの爆発から3日後だ。今夜、キャロルがエルフナインに体を譲り渡すはず。
病室の近くで待機してるんだが、いつ来るんだろうか。夜ってことしか分からないから待ち続けるしかない。
───
──────
「来たか」
「.....お前は誰だ」
警戒しているな。まぁ当たり前か。
「そう警戒しなくていい。危害を加えるつもりはない。
今日は、お前に協力してくれないか頼みに来たたいだけだ」
「お前はオレのことを知っているのか?」
「面識はないがな。名前と、どんなやつだったかは知ってる」
「なら教えてくれ。記憶が断片的で、何も分からないんだ」
「俺から教えなくても、答えてくれる人がそこにいるよ。
知りたかったから、ここに来たんだろ?」
俺は病室の扉を開ける。
「あなたは.....リアンさん。無事だったんですね」
「ああ。それと、お前に会いに来たのがもう1人いる」
「.....キャロル」
「キャロル.....それがオレの名前」
「記憶.....障害。
思い出のほとんどを焼却したばっかりに」
「目を閉じると瞼に浮かぶお前なら、オレのことを知ってると思いここに来た」
「君は、もう1人のボク。
2人で、パパの遺した言葉を追いかけてきたんです」
「そんな大切なことも、オレは忘れて....」
「なら、取り戻したいか?」
「え?」
「俺なら、お前が焼却した記憶を取り戻すことができる」
「本当か!?」
「リアンさん、ボクからもお願いします。
キャロルの記憶を戻してあげてください」
「分かった。
だが、それをするにはエルフナインの協力が必要だ。まずはお前の怪我を治しておく」
エボルトラスターから出る光がエルフナインの体を癒していく。
「すごい....」
「どうだ?もう動けるか?」
「はい、大丈夫です」
「なら、こっちに来て立ってくれ」
「分かりました!」
エルフナインがベッドから降りると、
ピーーー
「「「あ」」」
「.....急ぐぞ。見られたら面倒だ」
「は、はい」
「なら、キャロルに額を合わせて、手を重ねるんだ。その間、大切な記憶を強く思い浮かべてくれ。そこから様々な記憶を呼び起こしていく」
「大切な記憶....」
「よし、いくぞ。準備はいいか?」
「大丈夫です」
エルフナインの声を合図に、光が2人を覆っていく。
「キャロル、思い出してください。とっても大切な、パパとの思い出を」
「.....ああ、そうだったな。思い出せたよ」
2人の大切な思い出が根となり、そこから大樹へと成長していく。
───
──────
10分ほど経っただろうか。光が収まっていく。
「キャロル....」
「.....全て思い出したよ」
「成功だな」
「ありがとうございます...!リアンさん」
エルフナインが涙を滲ませながら言っている。
問題なく終わって、俺もホッとしてるよ。
「それで、キャロルはこれからどうするつもりだ?」
「さぁな。特に思い浮かばないが」
「それなら、さっき伝えたことを受け入れてくれるか?」
「協力の申し出か。
.....だが、オレがお前に協力する理由はないぞ」
「なるほどな。なら、こういうのはどうだ?
お前の記憶を戻した対価として、俺に協力するっていうのは」
「.....そういう事なら仕方ないな。
お前に協力してやる」
「リアンさん。キャロルのことをよろしくお願いします」
「任せておけ。
キャロル、詳しい話は後でする。先にこの住所に行っててくれ」
「お前は戻らないのか?」
「それは──」
ドタドタドタ
「.....心配をかけていただろうからな」
「分かった。なら先に向かっておく」
「キャロル!また、会いましょうね」
「ああ。またな、エルフナイン」
キャロルは窓から出ていった。
「大丈夫だ。必ずまた会える」
「ありがとうございます。リアンさん」
「あと、このことは絶対に秘密だからな」
「分かりました。けど、あなたは本当に何者なんですか?」
「さてな、いつか解き明かしてみるといい」
少ししたら勢いよく扉が開いて、響がエルフナインに飛びついていた。
良かった。もしその勢いで俺に来られたら、またダウンするところだったぞ。
「来たはいいものの、何なんだこのメンバーは」
「まぁ、ヤバいのが揃ってるのは自覚しているよ」
「あなたもその一員になるんだからね?」
「お前、この辺り一帯を更地にしたいわけじゃないよな?」
バレたらそうなるんだろうなぁ。
「そんなつもりは無い」
「頭が痛くなってきた。
それに、お前とまた会うとは思わなかったぞ」
「それは僕のセリフだ。まさか僕を刺したレディまでここにやってくるとは」
「過去のことは水に流して、これからは協力してくれ。
優秀な協力者を手放す気はないんでね」
「はぁ.....協力すると言ったんだ。それを違える気は無い」
「英雄は未来を見て生きる者ですからねぇ。僕も気にしてませんよ」
「それなら良かったよ。
これからは3人でビーストの研究を進めてもらうが、キャロルにはその前にして欲しいことがある」
「何だ?」
「ホムンクルスを作って欲しいんだ」
「セレナ、少しいいか」
「どうしたんですか?」
「実はセレナの体を用意できそうでな。身長や体重を教えて欲しいんだが」
「す.....少し恥ずかしいですけど、分かりました」
「あと、さばをよまないようにな。動かす時に苦労するぞ」
「うっ...、少しだけ伸ばすのもダメですか?」
「.....少しだけにしておけよ」
「はい!」
───
──────
そこから2週間かけてセレナのホムンクルスが完成した。
「ようやくセレナちゃんを自由にしてあげられるわね」
「ああ」
ここまで長かったなぁ。ようやくセレナをマリアと会わせることができる。
俺はセレナの魂をホムンクルスへと送る。
あとは定着することができれば───
「.....おはようございます。絆紡さん」
「おはよう。セレナ」
「体の具合はどうだ?」
「少し動かすのには慣れが必要でしょうけど、問題ありません」
「良かったわね、セレナちゃん。また姉妹で一緒に暮らせるわよ」
「はい。ですけど、それはもう少し後にします」
え?
「何故だ?」
「目を離していたらすぐに無茶をする人がいるので、見張っておかないといけませんから」
「あらまぁ」
「これからは、私も支えますからね」
「.....それがセレナのやりたいことなら、そうするといい」
「ふふっ、そうさせてもらいますね。
それと、キャロルさん。この体を作っていただき、ありがとうございます」
「ああ。そもし何か不調があれば、すぐにオレへ報告しろ
「はい。
ウェル博士も、これからよろしくお願いします」
「まさかマリアの妹に会えるとはね。
こちらこそ、よろしくお願いしますよ」
「了子さんも、よろしくお願いします。
後で料理を教えてください」
「よろしくね、セレナちゃん。
人数も増えたことだし、手伝ってくれるのは助かるわ」
この濃いメンバーの中でも、すぐに馴染めそうで良かった。
「キャロル。セレナのホムンクルスを作ってくれて助かった。
これからはビーストの研究をしてもらうが、同時に、キャロルの好きなように研究所を使ってくれても構わない」
「好きなようにとは言うが、特にしたいことは思い浮かばんな」
「.....なら、あのオートスコアラーたちを復活させたらどうだ?」
「お前、またオレがあいつらと一緒に暴れるとは思わないのか?」
「思わない。今のお前が父親の想いを無視して暴れるとは考えられないからな」
「わかったような口を。まぁ、考えておく」
これで、俺がしなくちゃいけないことは一段落ついたか。
俺の目指す未来まであともう少しだ。
-夜-
「ここは.....ネクサスが呼んだのか?」
俺が初めてネクサスと会話を交わした空間だった。
-こうして話すのは久しぶりだな-
懐かしい声だ。5年ぶりか?
「久しぶりだな、ネクサス。俺に何の用だ?」
-君に伝えたいことがあるんだ-
「一体なんだ?まさか、向こうが動き出したのか!?」
-悪い話ではない。君にとって良い話だ。
君が多くの人と絆を結んできたおかげで、更なる力を引き出せるようになった-
「更なる力?.....それってもしかして!」
-ああ。君が願った、もう1つの力だ-
「そうか。みんなとの出会いが、新たな力へと繋がったのか」
-これからも、君が望む道を歩むといい。それが、必ず君の力になるだろう-
「ありがとう、ネクサス。
.....よし、これから新しい力を使いこなすための特訓だな!」
絆を力に。みんなが俺と絆を結んでくれたっていう事実が、何よりも嬉しかった。
絶対、最後まで諦めないからな。
ノリと勢いでここまできたせいでノープランで進行しないといけなくて泡吹いてます。