*主人公視点*
一瞬だがビーストの気配を感知した気がした。エボルトラスターを確認するが、反応はない。
.....俺の気のせいか?だが、あの感じは───
「念の為確かめてもらうか」
翌朝、俺はS.O.N.G.本部に訪れていた。
「リアン君か。
こんなに朝早くから、一体どうしたんだ?」
「司令、頼みたいことがある。
昨日の22時以降で行方不明になった人を調べて欲しい」
「何故そんなことを?」
「装置は反応していない。あくまで俺の勘でしかないが、ビーストが現れたような気がしたんだ」
「.....分かった!調べてみよう」
「いいのか?」
「他ならぬ君の勘だ。調べてみる価値はある」
「ありがとう」
可能性は低いだろうが、何か見つかるかもしれない。
~30分後~
「調べてきたぞ。
捜索願いが出されて、まだ行方が分かっていないのは20件だな」
「.....その中で、不可解な消え方をした人物はいるか?」
「不可解な.....む、これは。
夜のキャンプ場でその場にいた全員が倒れ、気がつくと1人だけいなくなっていた。
.....これはかなり怪しいな」
もしかしたらそれが.....
「そのキャンプ場で何か異常がなかったか調べてもらえないか?」
「そうした方がよさそうだ。友里、衛星からの映像を出してくれ」
「分かりました」
すぐに当日の映像が流れてくる。
「キャンプ場に22時15分頃から、半径500mに渡って濃霧が確認されています。その霧は未だ晴れていません」
「ここまでの霧だと、単なる自然現象ではないな」
このやり口、あのビーストか?
だとするとここに装者たちを連れていくのは危険だな。
「.....俺が調べに行く。S.O.N.G.は周辺の住民を避難させる準備をして待機していてくれ」
「危険だ。もしビーストがいたら──」
「そうなるのを警戒して俺だけで行くんだ。ビースト振動波が確認できていない以上、襲われたら救出が困難になる。
それに、絶対出るってわけじゃないんだ。ここは任せてくれ」
「.....無茶はするなよ」
「当然。
もしビーストを確認したら合図を出す。そうしたら避難を始めてくれ」
「分かった。
では装者たちも配置しておく。危なくなればすぐに戻るんだぞ」
「了解」
そういうわけで、俺一人でキャンプ場に入った。S.O.N.G.の人たちは入口前で待機している。
「.....霧が濃いな。周りがよく見えん。
それに──」
ジジ.....ジ....
通信機を持たせてもらったが、霧の影響で電波が乱れて連絡が取れない。
俺一人で来て正解だったな。はぐれたら大変なことになってた。
「あいつが出す霧と特徴は同じだ。
なら、奇襲にさえ気を付ければ....」
俺はゆっくりと中を進んでいく。
ビースト振動波は確認できない。頼れるのは耳と直感だけだ。
──
────
かなり歩いたはずだ。
事前にキャンプ場の地形は把握している。もう霧の中心付近まで来ているはずなんだが。
「何処にいるんだ....」
今このキャンプ場にいる人間は俺だけだ。
捕食するなら俺を狙うしかないはず。警戒されているのか?
「面倒だが、探すしかないな」
そう思い、また歩き出そうと1歩を踏み出したその時──
「.....いる」
直感だが、狙われているという感覚がある。
近くに潜んでいるな。獲物を捕らえるチャンスを見計らっている。
このまま立ち止まっていたら、奴も攻撃してこないだろう。
俺はゆっくりと歩き出す。
ビシュッ!
「──ッ!」
攻撃が飛んできた。
俺はそれをすんでのところで回避する。
地面についた攻撃の跡から奴の居場所が分かった。
「そこかっ!」
ブラストショットを素早く構えて攻撃する。
「キィィィィィ!!」
命中した!
そして、やはりお前だったか。
「ギギギィ」
【アースロポッドタイプビースト バンピーラ】
俺はこの霧を出している噴霧口へ狙いを定めて追撃を放った。
ここを傷付けておけば、しばらくの間は追加で霧を出す心配もない。
そして、さっきの攻撃で奴の周りの霧を晴らすことが出来れば──
*マリア視点*
ビーストが潜んでいる疑いのあるキャンプ場に、彼が一人で入ってから1時間以上が経った。私たちは彼が戻ってくるまで待機するしかない。その時間がひどくもどかしかった。
「リアンさん、大丈夫でしょうか?」
「通信機に連絡が取れなくなってから、かなりの時間が経ったな。
何事もなければいいが....」
「やっぱり、あたしたちも探しに行った方がいいんじゃないデスか?」
出来れば私もそうしたいけど──
「ダメよ、切歌。私たちも入ってしまったら、彼の捜索を邪魔してしまうかもしれない。
それに、ビーストのことを一番よく知っているのは彼よ。その力を信じましょう」
「けど、この霧の中じゃ万が一のことだって──」
「このくらいでやられるようなタマかよ。あいつなら絶対大丈夫だ」
『リアン君はビーストが見つかれば合図を出すと言っている。
それが来るまで、お前たちはそこで待機しておくんだ』
「けど、合図って何なんデスかね?」
「この霧では、合図を出したところでよく見えないと思うが....」
ビー!ビー!
『──!?』
『霧の中心にビースト振動波を確認!』
「随分と分かりやすい合図を出すわね」
『住民の避難はこちらで済ませる!お前たちは発生地点へと向かうんだ!』
「了解!」
──
────
私たちはシンフォギアを纏い、急いで霧の中心へと向かった。
そこには、巨大なクモのようなビーストが暴れていた。
「リアンさんはどこに!」
「霧が残っていてよく見えないわね。もう撤退したのかしら」
「この霧の中では視界が悪い。まずはこれを何とかせねば」
「だったらあたしに任せな!」
《MEGA DETH SYMPHONY》
クリスが6基のミサイルをビーストに放ち、それが無数のミサイルに分裂し広範囲に爆発を起こした。
これで周囲の霧が一気に晴れて、かなり見やすくなる。
「キィィィ!」
「流石先輩デス!」
そして、このタイミングで──
ドォン!
「ウルトラマン!」
「シェアッ!」
これでこちらがかなり優勢になった。
「私たちは彼の邪魔にならないよう、援護に徹するわよ!」
「よし、ではゆくぞ!」
錬金術師でないのなら、この力を使える!
『イグナイトモジュール、抜剣っ!(デス)』
決戦機能を使えば、こちらの攻撃でも大きなダメージを与えられる。
ウルトラマンの攻撃に合わせて私たちも攻撃を繰り出していく。
勝負は決まったかのように思えた時──
ビシュッ!
「何っ!?くそっ、なんだこの糸!」
「クリス先輩!」
ビーストの背後から攻撃していたクリスが、奴の尻尾から吐き出される糸に捕まってしまった。
「うわあっ!」
「クリスちゃん!!」
ビーストが尻尾を振り、クリスが木に叩きつけられそうになったところを、間一髪のところで響が間に入り、その衝撃を抑えることが出来た。
「立花!雪音!」
翼がすぐさま駆け寄り、糸を断ち切る。
これで追撃は免れたわね。
「大丈夫デスか!?」
「は.....はい。何とか」
「すまねぇ、下手打っちまった」
「2人とも、今は下がってなさい。後は私たちがやる。
翼、2人を安全なところまで」
「分かった」
翼が2人を連れて離れていく。
「マリア....」
「行くわよ!調!切歌!」
「はいデス!!」
「ハアアッ!」
「キィィィィィ」
向こうでは、ウルトラマンがビーストを投げ飛ばしていた。
その隙に姿を青色に変化させ、亜空間を作り出そうとしている。
「私たちも一緒に戦わせて!」
「お願いしますデス!」
「足手まといにはならない.....!」
私たちの想いに応えてくれたのか、こちらを見て深く頷く。
「ありがとう」
そして瞬く間に景色が変わり、戦いの場は亜空間の中へと移った。
*主人公視点*
響とクリスに怪我を負わせてしまった。
奴の尻尾から吐き出される糸にもっと注意するべきだった!
「ギギィィ」
メタフィールドへ引き込むことには成功したが、このまま一気に攻めきれるか...
「あの穴は!」
そう簡単にはさせてくれないか。
バンピーラの上に穴が空き、そこから闇の力を与えている。
「あのビースト、みんなの攻撃で傷がついてたのに治ってる」
「もしかして、この前彼が話していたダークザキの力なの?」
「ビーストの再生、実際やられるとかなり厄介デスよ」
だが、フィールドを変えられてはいない分、リザリアスと戦った時より状況はいい。
「シュア.....!」
「傷を治すなら、一撃で倒しきればいい!
私たちはウルトラマンが技を出す隙を作るわよ!」
「了解デス!」
「キィィィ!!」
力を受け取ったバンピーラが勢いよく突っ込んできた。俺も真っ向から迎え撃つ。
2本の長い足をムチのように振り回してくる。地面に叩きつけられた足は土煙を上げるほど強力だ。
その攻撃を躱し、受け止めながら、奴の顔に向けて膝蹴りを喰らわせる。
だが、この程度の攻撃で奴は怯まない。
バンピーラは2本の足を使って俺の体を締め上げようとしてくる。
それを咄嗟に受け止めることに成功したが、奴は噴霧口から霧状のガスを俺の顔に浴びせてきた。
「グッ、アァ」
「今助ける!」
《HORIZON†CANNON》
「キィィィィィ!!」
マリアの狙い澄ました一撃で奴が怯んだ隙に、距離を取ることができた。
「あのビーストの攻撃、桁違いに強くなってる」
「迂闊に近寄れないデス」
「無理して攻撃を与えようなんて考えない!私たちはあくまで彼のサポートよ!」
ビシュッ!
「ハアッ!」
「避けて!」
口から糸を吐き出してきた。
俺は跳び上がってその攻撃を回避し、そのまま飛び蹴りを喰らわせた。
「ギィィ!」
今の一撃で地面に倒れ込んだ隙を逃さない。
一気に近づいて尻尾を掴み、地面へと叩きつける。
「ウオオォォッ!」
それだけで終わらず、今度は力任せに遠くへと放り投げた。
だが、相手もやられるだけではなかった──
パシッ
奴は投げ飛ばされながらも尻尾から糸を放ち、俺の足へ絡みつかせた。
「グアアッ!」
バンピーラが糸を一気に引き寄せ、俺の体は地面を引きずられていく。
「いくよ、切ちゃん!」
「ガッテン承知デス!」
《γ式 卍火車》
《切・呪リeッTぉ》
2人の攻撃で糸が断ち切られる。
助かったが、引きずられたせいで奴との距離がかなり近くなった。
俺のことを挟み込もうと、大きな足を振り上げて近づいてくる。
「危ない!」
もうすぐそこまで迫ってきている。
だが、向こうが油断して近づいて来るなら───
「ハアアァァ....」
右拳を力強く握り、エネルギーを蓄えていく。
そして奴の方へと振り返り、拳を大きく引き絞って──勢いよく敵の顔面に叩き込む!
「デヤアッ!」
《ジェネレードナックル》
「ギィィィィ!」
バンピーラはこの一撃をまともに受け、後方へ大きく吹き飛ばされた。
「今よ!」
ああ、これで最後だ!
「オオオォ.....フッ!」
アローアームドネクサスに弓状の光線を形成する。
「ギギッ!」
ビシュッ!
バンピーラも口から糸を吐いて阻止しようとするが、もう遅い。
「ハアッ!」
《アローレイ・シュトローム》
放たれた光線は、吐き出された糸を真っ二つに裂きながら、そのまま奴の体をも貫いた。
「キィィィ....」
バンピーラは断末魔を上げながら崩れ落ち、青い粒子となって爆散した。
「勝ったデーース!!」
「やった!」
3人のおかげで戦闘がかなり楽になった。
本当に助かったよ。
俺はメタフィールドを解除し、変身も解いた。
──
────
「3人ともお疲れ様」
「あ、あなた!近くにいたの!?」
「ああ。合図を出した後、ビーストからの攻撃があったから離れていてな。戦闘音を聞いてここに戻ってきたら、みんなとウルトラマンが戦っていたから、少し離れた場所で様子を見ていたんだ。
迂闊に手は出せなかったからな」
「そうだったんですか」
「さ、早く戻ろう。今後のことも考えないとな」
「そうデスね。それに、もうくたくたデス」
先に戻っていた翼たちと合流し、本部へと帰還した。
「今回の件で、ビースト振動波を確認できなくても、奴らが行動している可能性があることが分かった」
「そうだな。今後は行方不明者が相次いだり、不審な失踪事件があった場合は確認した方がいいだろう。
また俺の勘が働くか分からないからな」
「それは警察と連携して対処するとしよう」
「.....改めて思いましたけど、ビーストって怖いですね。
急に現れて、誰かを襲っていく。今回みたいに、人知れず命を奪われてしまうかもしれない」
「ああ。今後、同じように姿を隠すビーストが現れないとは限らん」
「みんなも充分注意してくれ。奴らはいつ、どこで襲ってくるか予想もつかないからな」
「分かりました!」
振動波を隠されたら、発見が遅れるだろう。けど、ビーストによって失われる命を1つでも減らすためには、みんなで協力していくしかない。