*切歌視点*
2日後は響さんの誕生日なのに、本人はあまり乗り気じゃなかったのデス。確かに今は、錬金術師やビーストのことがあって大変な時なのは分かってるデス。
けど、あたしはお祝いしたいデスよ。
せっかくのちゃんとした誕生日なのに.....
「切歌か。一人でいるなんて珍しいな」
「え?.....あ、リアンさんデスか」
廊下を歩いてたら、リアンさんとばったり出くわしたのデス。
昨日のビーストのことで、何か用事があったんデスかね?
「大丈夫か?いつもより元気が無いな」
「あ、あはは.....そうデスか?」
「ああ。今も何か誤魔化しているように見えるぞ」
「.....全部お見通しみたいデスね」
「無理に聞こうとはしない。心配になっただけだからな」
その心遣いが、とってもありがたいのデス。
.....リアンさんになら、打ち明けていいかもしれないデスね。
「.....その、聞いてほしいことがあるのデス」
──
────
「なるほど。
誕生日を祝いたいのに、そういう空気じゃなかったってことだな」
「はい。
クリス先輩からもお気楽だと言われてしまったのデス」
「そうだったのか」
「リアンさんはどう思いましたか?」
「そうだな......切歌が響の誕生日を祝いたいのは、今も変わらないんだろ?」
そんなの、決まってます───
「当然デス。
あたしは本当の誕生日を知らないから.....誰かの誕生日は大切にしたいのデス」
「なら、それでいいじゃないか。
響の誕生日を盛大に祝うといい」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥につっかえていたものが少し軽くなった気がした。
「.....本当にいいんデスかね?」
「もちろんだ。本人が嫌がっているなら無理にしろとは言えないが、響が言うにはタイミングの問題なんだろ?」
「そうデスね」
「だったら、勝手に祝いの会場を用意してしまえばいい。そしたら観念するだろ。
それか、13日が来るまでに錬金術師との戦いを終わらせてしまえば問題ないだろう。ビーストは俺が対処するって伝えたらいい」
「む、無茶苦茶デスよ!お気楽がすぎるんじゃ.....」
「お気楽はダメなのか?」
「......その、ダメというわけじゃないのデスが。前に愚者の石を探していた時、錬金術師からも言われたんデス。お気楽だって。
あの時はリアンさんが逃げた人を守ってくれたから何事もなかったのデスが、もしいなかったらって思うと.....」
「俺はそのままでいいと思ってるぞ」
「どうしてデスか?」
「それが暁切歌だからだ。別に悪いことをしているわけじゃない。
それに、あの時お前が『大丈夫』と伝えたことで、安心できた人もいたはずだ」
「けど──」
「お前一人で抱えきれないことは、仲間がカバーする。
だから、お前は今まで通りでいい」
あたしは、あたしのままで。
「それに、誕生日は年に一度しかない大切な日だ。その日に祝わないなんて勿体ないじゃないか。
今は色々あるが、それはそれ。これはこれだ。楽しまないと」
「......リアンさん、ありがとうなのデス。
おかげで吹っ切れたデス!」
「役に立てたのなら良かったよ」
「それじゃあ響さんのお誕生日会に向けて、飾り付けとか色々考えるのデス!」
「張り切りすぎて空回りしないようにな」
「何を他人事みたいに、リアンさんも参加するんデスよ!
だから手伝ってほしいのデス!」
「な、何で俺が.....」
「背中を押したのはリアンさんなのデスから、言うなれば共犯者デスよ!」
「共犯って.....それに、男の俺が混ざるより女子だけで集まった方が──」
「気にしない、気にしないデスよ。
さぁ、行くデス!」
「ま、待て!こっちはプレゼントも何も用意してないんだぞ!」
「じゃあ、すぐに用意しないとデスね!お誕生日会の準備をしながら一緒に考えるデス!」
.....楽しい。
さっきまで悩んでいたのに、今はお誕生日会のことで頭がいっぱいデス。
唆したのはリアンさんなのデスから、最後まで付き合ってもらうのデスよ。
*主人公視点*
切歌の相談に乗った後、半ば無理やり会場の装飾品作りに参加させられた。後から来た調には驚かれてしまったな。
しかし、何で俺まで参加する流れになってしまったのか。
行ってはみたいが、明らかに場違いだろう。
......けど、切歌のあの明るさには救われてるよ。
昨日はかなりまいってたからな。あの元気な姿を見ると、俺も気が楽になる。
遅くなる前には帰らせてもらったが、この後に大祭壇が設置される。休む時間はあまりないな。
場所は埼玉県の氷川神社だが、そこまでバレないように向かうのはかなり難しそうだ。S.O.N.G.も結社の目的を把握しているから、あの辺りは警戒してるだろうし。
だが、俺はそこに行って阻止したいことがある。向かわない選択肢はない。
「監視の目をすり抜けて行くしかないか」
祭壇を設置する正確な時間は分からないから、神社から少し離れた場所で待機して、そこから戦闘音が聞こえたら動くことにした。
──
────
......激しい戦闘音が聞こえてきた。そろそろ向かうとするか。
見つからないように闇夜に紛れて移動する。
俺が着いた頃には、サンジェルマンとの決着がついているようだった。
「そこまでにしてもらうよ。茶番は」
アダムもこの場にやってくる。
いよいよ最終局面に近づいてきたな。
そして、神いづる門が開かれた──
膨大な量の光がティキへと降り注いでいく。
その様子を見ていたサンジェルマンは、この力で自らの目的を達成出来るのかをアダムに問うが、アダムはそれを叶える気はさらさらないことを告げる。
「謀ったのか!」
彼女から激しい怒りを感じる。当然だ。
この目的のためにどれ程の人を犠牲にしてきたか。
俺も彼女たちの前に出る。
「なら、お前の目的は何だ」
「お前は.....!」
「リアンさん!?」
「来たのか。お前も。
勢揃いだな。役者が」
「それで、俺の質問には答えてくれないのか?」
「答えてあげるよ。それくらい。
より完璧な存在へと至ること。それが僕の目的だよ」
「そんなことのために.....!」
「用済みだな。君も」
パチンッ
アダムが指を鳴らすと、ティキがこちらへと向く。
そして口から高威力の光線を放とうとしている。
後ろを見ると切歌がLiNKERを打とうと構えているが、俺は視線で止める。
過剰投与で体に薬害は出させない。
力を貸してくれ、ネクサス。
俺はブラストショットを構えて、全力でバリアを展開する。
ドォォォン!!
凄まじい速度で放たれた光線がバリアと衝突する。
そして、衝突で飛び散った光線が周囲を破壊していく。
「リアンさん!」
「大丈夫だ。どうってことない。
その場から動くなよ」
これなら耐えられる!
数秒続いた光線を完全に防ぎきった。
「忌々しいな。その力は!」
「リアンさん!守ってくれてありがとうなのデス!」
「ああ」
良かった。
LiNKERを一つも使わなかったし、これで俺が来た目的は果たせたな。
「統制局長、神の力の占有を求めるならば、貴様こそが私の前に立ちはだかる支配者だ」
サンジェルマンが俺たちの前へと歩き、アダムに向かって宣戦布告する。
「それが答えかな。君が選択した。
しかし間もなく完成する。神の力は」
響もサンジェルマンの隣へ歩み寄り、戦う覚悟を決める。
そして二人は言葉を交わす──
「私たちは互いに正義を握り合い、終生分かり合えぬ敵同士だ」
「だけど今は、同じ方向を見て、同じ相手を見ています」
「敵は強大、ならばどうする!」
「いつだって、貫き抗う言葉は一つ!」
「「だとしても!!!」」
「......さすが響さんデスね。
さっきまで戦ってた相手と共闘しようとするなんて」
「それが彼女の凄いところだろうな」
「そうデスね。
けど、あたしたちを忘れないでほしいのデス!」
「俺たちも加勢するぞ」
「はい!
響さん!この戦いに勝って、2日後にお誕生日会をするデスよ!」
「──っ、......うん!
楽しみにしてるね!切歌ちゃん!」
「させないよ。僕の邪魔は」
そう言うと、アダムが帽子を勢いよく投げつけてくる。
狙いはサンジェルマンだ。彼女もスペルキャスターで撃ち落とそうとするが、かなりの強度を持つ帽子はものともしない。
サンジェルマンに当たりそうになったその時、響が弾き返して彼女を守った。
念の為バリアを張れるように構えていたが、その必要はなかったな。
「何故私を!?」
「わがままだと、親友は言ってくれました」
「わがまま?」
「サンジェルマンさんとは話し合いたいと、体が勝手に動いてました」
「──!.....立花響、お前はティキを狙え。神の力へと至る前に器を壊せば、奴の目論見は失敗する。
この共闘は馴れ合いではない。私のわがままだ!」
「そのわがままに、あたしも付き合うデスよ」
「響は迷わず、真っ直ぐ進め。俺たちが支える」
「思い上がったのか?群れればどうにかできると!」
そこからは俺たち4人とアダムとの戦いが始まる。
ティキを守ろうと立ち塞がるアダムに響が突っ込んでいく。
アダムは
しかし響は止まらない。攻撃へと真っ直ぐ突き進んでいく。
ちゃんと信頼してくれているな。
俺は響に攻撃が当たる前にバリアを張って守る。
俺が守ることを見越して向かっていた響は、その勢いのままアダムへと殴り掛かる。そこに切歌が攻撃に加わり、装者同士の見事な連携でアダムを追い詰めていく。
サンジェルマンも初めての共闘とは思えない程的確な援護で響たちを支える。
さすがのアダムでもここまで息のあった連携に押され、響から重い一撃をもろに喰らい、吹き飛ばされてしまう。
その隙にサンジェルマンが、ティキへと続く足場を空中に形成する。
響がそれを利用して一気にティキへと近づくが──
「させはしない、すきに」
「ぐあっ!」
あともう少しといったところでアダムに邪魔をされる。
「僕だけなんだよ触れていいのは!ティキのあちこちに!」
「あとちょっとだったのデス!」
「このままじゃ!」
刻一刻と、神の力の完成へと近づいている。
「だが、奴もかなり消耗しているはずだ。その証拠に、黄金錬成を使ってこない。
手心なんて加えずに、あのバカ火力を使えばいいものを」
「嫌われるぞ。賢しすぎると」
「なら、まだまだやるデスよ!」
「もうひと踏ん張りだな」
「行くぞ、立花響!」
「はい!」
響がもう一度アダムへと向かう。
アダムも帽子を投げて迎え撃つが、それを俺とサンジェルマンの攻撃で相殺する。
その際に生じた爆発でアダムの視界を奪い、爆発の中から切歌の《封伐・PィNo奇ぉ》がアダムへと迫る。
「小賢しい!この程度の攻撃!」
だが、切歌の攻撃に気を取られて接近する響には対応が遅れる。
「はああっ!」
「くっ!」
アダムは響のパンチを片手で受け止め、その隙にサンジェルマンがアダムの腕を切りつける。
「ぐあっ!」
「今だ!立花響!神の力へと至る前に!」
響がティキの方へ向かおうとする時、アダムが俺たちの前に立つ。
そして、響たちがアダムの違和感に気づく。切られた箇所から血は出ず、代わりに電流が走っているのだから。
「アダムは、人じゃなかったのデスか....」
「人形....」
「人形だと?人形だとぉぉ!!」
「許せない!アダムを傷つけるなんてぇ!」
そして、ティキも神の力へと至り、ディバインウェポンへと変化した。
その巨大で強大な姿に、響たちは言葉も出せずにいた。
「知らしめようか。完成した神の力の恐怖を」
ティキから放たれる光線は、辺り一面を次々と消し飛ばしていく。
俺がバリアを展開したから響たちに被害は出ていないが、周囲はどんどん破壊されてしまう。
「怪我はないな」
「はい。
けど、周りが....」
もう瓦礫の山だな。破壊され尽くしてしまった。
俺はどうするべきか。
全力でバリアを張れば耐えられる.....とは思っているが。
ドクンッ!
ここでビーストだと!
「おいお前、どうしたんだ」
「.....ビーストが現れた」
「確かに、今連絡が入りました。
ここから離れた場所に出現したみたいです」
「どうやら僕に味方するようだね。運は。
さぁどうする。もう他にいないんだろう?戦える者は」
「.....行ってください、リアンさん。ここは私たちに任せて!」
「ビーストはお願いするデス!」
「二人とも....」
「お前一人抜けたところで何ともない。
早く行け」
「サンジェルマン。
.....なら、頼んだぞ」
向かわせてくれと言うまでもなかったな。
俺はフリューゲルを呼んで、出現地点へと移動する。
──
────
俺はフリューゲルから出て、辺りを探索する。
反応はここで間違いないのだが、ビーストの姿が一向に見えない。
「どこだ、この反応の強さはすぐそこにいるはずなのに」
待て、姿が見えない?
......そういうことか!
キィーン
ヒュンッ
危ないっ!
飛び退いて何とか攻撃を避けれたな。
そして、今攻撃に使った特徴的な口。やはりお前だったか。
「ギシャアアッ!」
【インビジブルタイプビースト ゴルゴレム】
さっさと倒させて貰うぞ!
俺はネクサスへと変身する。
「フッ!」
変身を完了させると同時に、ジュネッスブルーへと変わる。
だが──
キィーン
なっ!逃げただと!
ゴルゴレムは半透明どころか、完全に違う位相へと姿をくらました。
一体どうなってる。
何のために出てきたっていうんだ。
完全に別位相へと逃げ込まれると、俺からできることはない。
次に奴が姿を現すまで待つしかないのか。
仕方なく、俺は一度変身を解いた。
奴は今も一直線に移動している。この先は、まさか.....
「響たちのいるところか?」
だが、いくら巨体でも歩いて向かうには少し距離がある。
1日以上かかると思うが.....
いや、そういうことなのか?
ゴルゴレムは13日に到着するよう歩いている。
そう考えると合点がいくが、どうしてそんなことを。
.....メフィスト。これはお前が仕組んだことなのか?