*主人公視点*
キャロルたちが向かった後、俺はカリオストロとプレラーティにこう告げた。
「単刀直入に言う。
戦いが終われば、俺たちに協力してくれないか?」
突然の頼みに、二人は顔を見合わせる。
「いきなりなワケダ。
それに、そう頼むってことは、敗北なんて少しも考えてないワケダ」
「みんなが力を合わせてるんだ。負けないさ、絶対に」
「大した信頼なワケダ」
「けど、どうしてあーしたちのことを誘うの?
さんざん暴れて、今じゃ世界中でお尋ね者よ。そんなあーしたちを誘っても、面倒なことになるだけだと思うけど」
「だとしても、お前たちの力を借りたい。
話だけでも聞いてくれると助かるんだが」
二人は少し考えるように黙り込む。
「......まぁ、お前にはついさっき助けられたから、話くらいは聞いてもいいと思っているワケダ」
「本当か」
良かった。
話はさせてもらえるみたいだ。
「だけど、あーしたちはいいとして、サンジェルマンはどうするの?」
「そっちはキャロルが勧誘してくれるよ」
「それで彼女がおいそれとついてくるとは思えないワケダ」
「そこはキャロルを信じるよ。
ここに来る前、必ず連れていくと言っていたしな」
「大丈夫かしら?」
「いざとなれば、私たちからメッセージを送ればいいワケダ」
「それもそうね」
「なら、彼女たちが勝つのを見届けるとしよう」
──
────
「......アダムを倒したようだな」
この距離でも、あれだけデカいと倒したって分かりやすいな。
「サンジェルマンたちがやってくれたワケダ」
「それじゃあ、どこで話をするの?」
「このテレポートジェムで俺たちが住んでる家まで帰る。
そこで話をしよう」
「あら、いきなり家まで連れ帰るなんて大胆ね」
「キャロルも一緒とは、実は数百歳離れた年上が趣味だったりするワケダ?」
「......ふざけたことを言ってないでさっさと移動するぞ」
「ちょっとした冗談じゃない───って、サンジェルマン?どうしたの?」
突然、カリオストロとプレラーティの表情が変わる。
メッセージか。向こうで何かあったのか?
「おっ、おい!サンジェルマン!?」
「どうしたんだ?」
「いきなりキャロルに拘束されたって連絡が.....」
「あー、なるほど」
実力行使ってことか。
「これでは勧誘じゃなくて誘拐なワケダ」
「すまないな。手荒なまねをしてしまって」
「まぁ、サンジェルマンにはこれくらいしないとダメそうだったし」
「とりあえず、私たちも向かうワケダ」
「そうだな」
俺はテレポートジェムを起動した。
──
────
研究室に着くと、そこには糸に拘束されながらキャロルと言い合っているサンジェルマンの姿が見えた。
「いいから早くこの拘束を──はっ、カリオストロ!プレラーティ!
二人とも無事だったか!」
「無事というか、そんなことになってるのはあなただけよ」
「私たちは話し合ってここに来たワケダ」
「なっ!キャロル!!」
「やかましい。この方が手っ取り早かろう」
「......今更かもしれないが、俺たちと協力するかどうか、その話だけでも聞いてくれないか?」
サンジェルマンは警戒を解かない。
だが、拒絶するような敵意は感じられなかった。
「......もう来てしまったのだから、聞くだけ聞こう。だが、そうしたからって必ず手を貸すということでは無いぞ」
「ああ。最終的に決めるのはそっちだ。
キャロル、拘束を解いてくれ」
「分かった」
サンジェルマンが拘束から解放される。
正直、かなり目に毒だったから助かった。
「それで、私たちに何を手伝ってほしいんだ?」
「お前たちが知っての通り、俺はビーストを専門に戦っている。
だが、大型のビーストを相手にする時はどうしても力が足りない。だから、対ビースト用の武器を完成させることにした」
「今日使ったあれだな?
あれで完成ではないのか。威力は充分だろう」
「ダメだ。あのまま世界中に渡したら、後に軍事利用されるのがオチだろう。
俺たちが目指しているのはそんなものじゃない。そのために、お前たちの知恵を貸してほしい」
「......なるほどな。お前の考えは理解した。
だが、断らせてもらう」
「理想のためか?」
「そうだ。私はまだ、月遺跡の掌握を諦めたわけではない」
「だがアダムが倒された今、結社は崩壊するだろう。
それに方法も見つかっていないのに、まだ続けるのか」
「それでも。何百年経とうと、必ず方法を見つけ出し、それで──」
「......必要になれば、多くの犠牲者を出してでもか?」
「──ッ!.....それは」
「響が伸ばし続けてくれた手を、お前は払い除けるのか。
止まることができるのは今しかないんだぞ」
「しかし、ここで歩みを止めてしまうなど。許されるはずが.....」
「誰が許さないんだ?死んでいった人たちか?
人を殺したら、目的が達成するまで進まなければならないなんて、そんなわけないだろ。
人の命を、止まれない言い訳にするな」
「......だったらどうしろと言うのだ!!
大人しくお前に従って、理想を捨てろと言いたいのか!!」
「違う。やり方を変えろと言っている。
犠牲を厭わないのではなく、手を取り合って理想を目指せばいい」
もう、お前たちに人殺しをさせたくはない。
「お前も立花響のようなことを......!
そのようなこと、出来るわけがない。私たちは追われる身だ。今更そのような手段など──」
「出来る。俺がどうにかする」
「──お前......どうしてそこまで」
「約束する。
だから、信じてほしい」
返事はない。
研究室に静かな沈黙だけが流れる。
「.........」
「......サンジェルマン、彼を信じてみてもいいんじゃないかしら。彼の言葉に嘘は感じられないわ」
「カリオストロ.....」
「私たちは、出来るわけがないと思い込みすぎたワケダ。だったら、思考を変えてみるのもいいと思うワケダ」
「プレラーティ.....」
俺は右手を差し出す。
「俺を信じてくれるなら、この手を取って欲しい」
「..............」
サンジェルマンが俺の手を取ろうとするが、触れそうになったところで手を少し引っ込めてしまう。
なら───
「あっ──」
俺はその手を追って掴んだ。
「確かに、お前には少し強引にいった方がいいのかもな。
よろしく。サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ」
「......ああ。こちらこそ、よろしく頼む」
「あーしからも。これからよろしくね」
「世話になるワケダ」
......あぁ、良かった。
これで一件落着だな。
「ようやく終わったか」
「すまない、待たせたな」
「なら、さっさと上に行くぞ」
「そうだな。他の仲間に三人を紹介しないと」
「他の人たちって、一体どんな人なの?」
「会ってみれば分かるよ」
──
────
「「「..............」」」
三人とも絶句してる。
そりゃそうか。
「あら、ちゃんと仲間にできたのね。良かったわー」
「これで、全て丸く収まったわけですね」
「これからよろしくお願いします」
「......少し待て。これは現実か?
そこにいるフィーネも、本物なのか?」
「あなた、多分昔に会ったことがあるわよね?
これからはよろしくね」
「フィーネの他にも──」
「ん?僕に何か?」
「あなたまでいるなんてね。それに、オートスコアラーたちも。
あーしたちが知らないのはそこの女の子だけかしら」
「彼女はアガートラームの元装者で、マリアの妹のセレナだ」
「セレナ・カデンツァヴナ・イヴです」
「......うっそ!え、なんでいるの!?記録じゃあなたは──」
「ええ。最近までは死んでましたが、彼に助けてもらったんです。
今はキャロルさんに作って頂いたホムンクルスの体で生活しています」
「頭がパンクしそうだ」
「ここにいるメンバーだけで簡単に世界を牛耳れそうね」
「この家のことを知られれば、世界は3回転半くらいひっくり返るワケダ」
「それだけで済めばいいがな。
お前からも言うことがあるだろ」
キャロルが俺に話を振ってくる。
「そうだな。
S.O.N.G.のみんなにはリアンと名乗っていたが、それは偽名だ。
俺の本名は、神代絆紡っていうんだ」
名前を伝えるのと同時に、フードも取った。
「そ、そうか。改めてよろしく。神代絆紡」
「キャロルが脅してくるから、何を言うかと身構えていたワケダが」
「それくらいなら許容範囲よねぇ」
「それと、ウルトラマンの正体は俺だ」
「「....................」」
「5回転半なワケダ」
それから三人が落ち着くのを待って、これからのことを話し始める。
「三人にも目指してほしいのは、人を傷つけず、ビーストのみに効果がある武器だ。
そのために、ラピス・フィロソフィカスが鍵になるんじゃないかと思ってる」
「ラピスが?」
「そうだ。ビーストの細胞が不浄であると判断されるなら──」
「最後のピースになるかもしれないわね」
「そういうことだ。三人とも、頼めるか?」
「任せておけ。必ず完成させてみせよう」
「ラピスのことなら、あーしたちに並ぶ人はいないんだから」
「かなり興味をくすぐられる研究なワケダ」
やる気は充分みたいだな。
「皆、よろしく頼む。
ビーストに地球を滅ぼされないために、できる限りを尽くしてほしい」
『了解!!』
懸念としては、ダークザギの存在だ。
もし、今までのこと全てが奴の手のひらの上だったとしたら......
俺は、勝てるのだろうか。
......いや、弱気になっちゃダメだ。
みんなが俺の力になって、支えてくれている。ダークザギの策略を打ち破って、必ず幸せな未来を掴み取ってみせるんだ!
*風鳴の屋敷*
夕刻──
そこでは、風鳴訃堂と風鳴八紘が会話を交えていた。
「米国は、安全保障の観点からミサイルの発射の正当性を主張してきたか」
「国連決議を蔑ろにする独断や、ウルトラマンがいたにもかかわらず発射したことに、各国は非難を表明しつつ、それでも強く対応できないのは──」
「──神を冠する、あまりにも強大すぎる力に加え。人知を超えた巨人たちの力を目の当たりにしてしまったが故」
「はい.....」
「八紘。あの力がどちらも我らにあれば、夷狄による国土蹂躙も、特異災害による被害も、防げるとは思わぬか?」
「───ッ!」
力を求めるものが、また一人現れるのだった。
-その望み、叶えてやろうか?-