はい、またお待たせしてしまいました。申し訳ない!2話分あるから許して......
それと、また評価していただきありがとうございます!更新遅くなりがちですが、頑張って書き続けます!
*主人公視点*
「では作戦の内容を伝えるぞ。とは言っても、やることはいたってシンプルだがな。
弓美には人通りが少ない場所を歩いてもらい、匂いに寄ってきたビーストと護衛が戦闘する。その時に発信機をつけて逃がすだけだ」
「ビーストは逃げてくれるでしょうか?」
「そこは問題ないな。奴らの知能は高いから、不利を悟ったら逃げるだろう。
実際、響が最初に戦った時は逃げ出したんだろ?」
「あっ、確かにそうでした」
「ただ、その時はあくまで逃げられる余地があったから逃げたんだろう。弓美の護衛を何人もつけていたら、逃げられないと判断して死に物狂いで襲ってきてもおかしくはない」
ビーストを倒すだけなら護衛を増やせばいいが、今回の目的は討伐ではない。発信機をつけて、巣に戻らせないと作戦は失敗だ。
『であれば、護衛の人数は少ない方がいいということか』
「そうだな。護衛は一人、想定外の事態に備えて予備をもう一人用意するのが妥当だ」
『なら、人選はどうする?』
「護衛は俺が。予備には広範囲をカバーできるクリスがいいだろう。
全員、これで問題はないか?」
『こちらに異論はない』
「あたしもそれで大丈夫です。
約束、守ってくださいね。ビースト退治の専門家さん」
「当然だ」
でなきゃこの力を持っている意味がない。これ以上奴らに好き勝手させてたまるか!
「それじゃあ急ぐぞ。闇夜に紛れて逃げられたら厄介なことになる。
巣の襲撃は、何としても日が落ちる前に終わらせるんだ!」
『了解!』
俺たちは囮作戦を実行するため、手早く準備を進めていく───
──
────
時は進み、現在は14時50分。
作戦開始まであと10分となった。
俺は作戦中に怪しい奴が近づいてこないか探るため、建物の屋上から辺りを見下ろしている。隣には念のため配置されているクリスも一緒だ。
「しっかし、囮作戦たぁ思い切った作戦を考えたもんだな」
「考えつくまでは誰だってできるさ。実行に移せたのは彼女の勇気があってこそだ」
「なら、こっちが気合いを入れないわけにはいかねぇよな。
しっかりやれよ。ま、お前がしくじるとは思わねぇが」
「任せろ。上手くやるさ」
そうこうしているうちに、弓美を乗せた車が近づいてくる。
「時間だな。持ち場についてくれ。
怪しい奴を見逃すなよ?」
「たりめーだ。スナイパーの目を甘く見るなよ?」
そう言ってクリスが傍を離れていく。
少しすると、弓美が車を降りる姿が見える。一瞬たりとも気を抜けない時間の始まりだ。
『これより作戦を開始する!三人とも準備はいいな?』
「ああ」『はい!』『おう』
『よし、では始めてくれ!』
ここからが勝負だ。
「弓美、お前はただまっすぐ歩くだけでいい。曲がるタイミングは俺が指示する」
『わ、分かりました』
弓美は緊張した面持ちで歩き始めた。
俺は彼女が不安にならないように、時折無線で声をかけながら周囲の警戒を続ける。
そして、作戦が開始して10分が経過した時───
「クリス、弓美の50m程後方にある建物の影から怪しい奴が出てきた。確認できるか?」
『......ああ。こっちも確認できた』
そいつは厚手のコートに身を包み、早歩きで弓美へと近づいている。
「顔は見れたか?」
『......ダメだ。フードで隠れてよく見えねぇ』
「分かった。クリスは周囲の警戒を続けてくれ」
あいつが偶々ここに来た一般人の可能性もあるからな。
彼女に手を出そうとするまでは迂闊に姿を晒さない方がいい。
「弓美、後ろから近づいている奴がいる。
歩くペースを緩めてくれ。そいつがビーストなら、今の場所で戦いたい」
「......はい」
彼女がスピードを緩めたことで、距離がどんどん縮まっていく。
あと30m......20m......10m......5m......
そして、彼女に向けて右手を伸ばした瞬間───
「そこまでだ」
「!?」
その手が彼女に触れる前に掴んで止める。
さらに、空いた手でフードを掴み、そのまま勢いよく引っ張った。
「ま、そうだろうな」
フードの下から現れたのは、人の顔ではなくバグバズンブルードの顔であった。
俺は蹴りをビーストの腹に浴びせ、遠くへ吹き飛ばす。
「本部、発信機はちゃんと動いてるか?」
『問題ありません。発信機の反応はビーストから出ています』
さっきフードを掴んだ時、その内側に発信機を取り付けることには成功したみたいだ。
「よし。あとはあいつを追い払うだけだな。周辺区域に警戒警報を出してくれ」
「グルル......!」
あの蹴りをくらった程度じゃ逃げないよな。
ビーストが勢いよく襲いかかってきた。なら、今度はあれを狙ってみるか。
「弓美、俺から離れるなよ?」
「は、はい!」
ところが、彼女はビーストが出たことに動揺してしまったのか、離れるなと聞いて俺の服をしっかりと掴んでしまった。
「ち、違っ!そういう意味じゃ───」
「ギシャアッ!」
仕方ない。今は近づいてくる奴の対処だけに留めるか。
俺は向かってくるビーストに前蹴りをくらわせる。まともに受けたビーストは、再び同じ方向へと転がっていく。
「ごめんなさい!邪魔しちゃって......」
「いや、俺の言い方が悪かった。気にするな。
離れた時を狙われないよう、傍にいてくれるだけでいい」
「分かりました」
これでよし。
ビーストの方は......さっきの攻撃でうずくまってるな。さっさと逃げてくれるといいんだが。
『聞こえるか!お前たちの方に走って来る奴らがいる!
左右から一体ずつだ!挟み撃ちにされるぞ!』
クリスからの連絡を聞き、左右を確認する。確かに俺たちへと向かってくるのが見えた。
ちょうどいい。さっき出来なかったことをするチャンスだ。
「伏せろ」
「──ッ!」
俺は冷静にブラストショットを取り出し、片方に向けて撃ち出す。直撃したビーストは跡形もなく消し飛んだ。
あと一体。そいつはもうすぐそこまで迫ってきている。
俺は身体をひねり、回し蹴りを繰り出す。
狙うは───側頭部!
「はあっ!」
バキィッ!
「グギャアッ」
何かが壊れた感触があった。上手くいったか?
ドクンッ!ドクンッ!
『───ッ!ビースト振動波を確認!でも、なんでいきなり......』
共鳴腔を傷つけることができた。これで振動波でも後を追うことができる。
「さっき頭を蹴った時、探知されないための何かが壊れたのかもな」
『よし、これでその個体の位置は丸わかりだ。あとはどちらかが巣へと逃げ出したら、作戦は成功だ』
『まだ安心するには早えぞ。今度は10体の集団がお出ましだ』
10か......撃って離れてを繰り返せば倒せるだろうが、少し面倒だな。
いや、逃がす予定の二体はまだ走れる状態じゃない。この状況は利用できるか。
「クリス、俺はそいつらを引き付けて移動する。少し離れた曲がり角で待機してくれ」
『なんだ、もう限界か?』
「ただの時短だよ。
弓美、少しの間我慢してくれ」
「え?わっ──」
俺は彼女を抱き抱える。
あとは追いつかれない程度の速さで、クリスが待機してる場所まで走れば───
「派手に頼むぞ、クリス」
「オーケー、最後にぶっぱなしてやる!」
さっき通った角から、続々と追っ手がやってくる。
だがその先には、クリスが既に攻撃の準備を整えて待ち構えているぞ。
「くらいやがれぇ!」
《MEGA DETH PARTY》
大量のミサイルにより、追ってきた10体のビーストは消し炭となった。大勢の敵を殲滅するなら、やっぱりクリスを頼るのが一番だな。
「おつかれ、クリス」
「なぁに、これくらいどおってことねぇよ」
頼もしいこって。
さて、あいつらはどうなったか確認するか。
「司令、あの二体はどうなってる?」
『先程のミサイルによる爆発が発生した後、どちらもその場から離れたようだ』
「それって──」
『うむ、作戦は成功だ!』
ちゃんと逃げたか。そのためにわざわざ離れたんだから、狙い通りに動いてくれて良かった。
「よ、良かった〜」
弓美は作戦が成功した安堵感からか、力が抜けて座り込んでしまった。
「弓美の助けのおかげで、奴らの巣を突き止めることができそうだ。
ありがとう」
「よくやったよ。怪我はしてねぇか?」
「はい、大丈夫です。この通り、かすり傷ひとつついてません!」
「ちゃんと守れたようだな。すぐに迎えがくる。あとは任せてくれ」
「頑張ってください!もうあいつらに襲われる人を増やさないために!」
「ああ。任せろ」
弓美を迎えに来た人たちに預け、俺とクリスはビーストの後を追う。
──
────
ビーストを追っているうちに日が傾いていく。空は赤く染まり始めていた。
発信機と振動波の反応は、都市から離れた森林の中にある。俺とクリスはそこに入る前に、他の仲間の到着を待つことにした。
数分後、響たち装者がギアを纏って到着する。
「リアンさん、クリスちゃん。待たせてすみません」
「二人とも、よくぞ成功してくれた」
「ああ、ギリギリ日が沈む前に済んで良かったよ」
「それで、これからどうするつもり?もうこの中に突っ込むのかしら?」
「いや、待ってくれ。あと少しで来ると思うんだが......」
「他に誰が?」
「それは──」
「全く、いきなり呼び出すなんて。人使いが荒いなぁ、お前」
来たか。これで戦力は揃った。
「オートスコアラー!?」
「よっ、お前ら。久しぶりだゾ」
「まさか、来るのがオートスコアラーだったとは」
「今回は殲滅戦だからな。人手は多い方がいい。
それに、奴らの匂いは人には効果があるだろうが──」
「我々には効果がないということだ」
「確かに、言われてみればそうなのデス」
「全員揃ったことだし、中に入るぞ。周りには十分注意してくれ」
俺たちはビーストの反応を追いながら、慎重に中へ進んでいく。
だが、少し経った時にある異変が起こった。
『発信機、振動波の反応がどちらも消失しました!』
「消えた!?一体どういうことだ......!」
「反応が消えた場所まで進もう。そうしたら分かるはずだ」
さらに奥へ進んでいき、あと少しで反応が消えた場所に着きそうになった時だった。俺からすれば既に知った光景。だが彼女たちにとっては驚くべき光景が、そこには広がっていた。
「なんだ......あれは」
そこは森林から抜けた先にある、開けた場所だった。
だが、その中心には地面から尻尾が突き出しており、そこから出る触手が、擬態したビーストたちを次々と捕食している。
「ビーストがビーストを食べるっていうの?」
「それにあの触手。何だか見覚えが......」
「以前廃病院で響たちを襲ったやつだな。それに、マリアたちのヘリも襲ってたな」
「嫌な記憶デス」
「でも、何であのビーストが......」
「おそらく、あれがあいつにとっての人を襲うやり方なんだろう。自らが産み出した子に人間を捕食させる。そして戻ってきた子を食べることで糧とし、そしてまた新たな子を産み出すんだ」
『なんて歪な生態系......子は親にとって使い捨ての捕食器官ということですか......!』
「親を倒さなきゃ奴らは無限に湧いてくるな。司令、既に戦闘機は向かってきているな?」
『ああ。あと1分もすれば到着するだろう』
「よし、なら俺たちはここら一帯の子を殲滅していくぞ。
装者たちは二人で一組になってくれ。もし相方が意識を失った場合は、すぐに引き連れて撤退するんだ」
「分かりました!リアンさんはどうするんですか?」
「俺はガリィたちの誰かと組む。先に戦いに向かってくれ」
「承知した。行くぞ、みんな!」
装者たちは散開していく。これで俺の正体はバレずに済みそうだ。
「それで私たちはどうするのですか?」
「好きに暴れろ」
「......いいのカ?そんなこと言って、どうなっても知らないゾ?」
「変な命令を出すより、その方が分かりやすいだろ?
警報は出てかなり経ってるんだ。もうこの辺りに一般人はいないだろう。残ってる怪しい奴は、全員ビーストだと思っていい。ま、見つけたら念のため声をかけてから攻撃してくれ。
襲ってくるようなら......叩き潰せ」
「フッ、なるほど。ならば派手にいかせてもらおうか」
「存分に力を使ってくれ。あ、ミカは山火事にしないよう注意してくれよ」
「分かったゾ!」
「それと、ガリィは俺の分身を作ってくれ。通信機も全て渡しておく」
「はいはい、すぐに作りますよ」
ガリィが水を操作すると、あっという間に俺の分身ができる。
「よし、ならお前たちも行ってくれ。油断はするなよ?」
「あんな奴らにやられるかっての」
「よーし、誰が一番倒せるか競争だゾ!」
四機とも勢いよく飛び出して行く。
先に向かった装者たちの方から戦闘音も聞こえてきた。本格的に戦いが始まったな。
ズドーン!
「ギシャアァッ!」
【インセクトタイプビースト バグバズングローラー】
周りで子がやられて、親が地中から出てきたか。
俺たちも行くぞ、ネクサス!
エボルトラスターを手に取り、天にかざす。
「シュアッ!」
ネクサスへと変身し、ビーストと対峙する。
そして、皆に被害が出ないようにすぐさまブルーへと姿を変え、メタフィールドを展開しようとするが──
(アンノウンハンド......ダークザギか)
展開しようとしたメタフィールドが上書きされ、ダークフィールドGへと変えられてしまった。
俺にとって不利な場へと変わっただけじゃない。ダークザギはさらにブルードにも力を与え、巨大化させた。
「グオオオッ!」
二体一か。
今は苦しい戦いになりそうだ。
*戦闘機内*
日本政府が極秘裏に運用する秘密基地。
その格納庫から出撃する戦闘機の中では、いつ出撃命令が出てもいいように五人が待機していた。
「いよいよ出撃ね。張り切りすぎて墜落しないでちょうだいね」
「安心してくれよ了子さん。この日のために、今日までずっとシミュレーションを使って特訓を続けてたんだ」
「ヒヒッ、ようやくこれを使える時が来た......!胸が躍る!」
「おいお前、興奮しすぎていざって時に外したりするなよ」
「......先行きが不安だ」
機内には出撃前の緊張感が漂っていた。それぞれが自分の持ち場を確認しながら、いつでも出撃できるよう準備を整えている。
やがて、待ち望んでいた通信が入った。
『こちら本部。巣のおおよその場所が特定できた。今送った地点に向かって出撃してくれ』
「待ってたぜ旦那!」
「もう準備はできてるわ。奏ちゃん、飛ばしてちょうだい」
「よーし、行くぞ!」
五人を乗せた戦闘機が飛び立ち、猛スピードで目的地へと向かっていく。
──
────
通達された地点まであと30秒といったところで、司令から連絡が入った。
『たった今、奴らの親である大型のビーストとウルトラマンが交戦を開始し、両者とも亜空間へと移動した』
「ならば、オレの作った装置の出番というわけか。
そのまま亜空間が展開された場所に向かえ。スピードを出したまま突っ込むんだ」
「了解。みんな、衝撃に備えてくれ」
戦闘機が亜空間の壁と衝突すると、機内には大きな衝撃が走った。
そして、装置によって開いた穴をさらにこじ開け、亜空間の中へと少しずつ侵入していく。
「装置に異常はない。そのまま行け!」
「もう少し......!」
視界が開けていく。機体が半分以上侵入すると、一気に入り込めた。
「成功ですね」
「ええ、機体も問題なさそう。早くウルトラマンを探しましょう。
どうやらここは、彼が作った空間ではなさそうだし」
「......いた、あそこだ!」
視線の先に、ウルトラマンの姿があった。だが、彼の状況が芳しくないことは一目見て分かる。
「二対一か。かなり押されてるな」
「僕たちは取り巻きを倒しましょう。今なら不意打ちも───」
「グギャアオッ!」
だが、ブルードはいち早く奏たちの存在に気付く。
ウルトラマンへの攻撃を一時中断し、戦闘機へと勢いよく向かってくる。
「気付かれたか......!」
そして、その巨体からは想像もつかないほどの跳躍力で、一気に襲いかかってくる。
「──ッ!避けろ!」
「くっ......!」
間一髪のところで避けることに成功する。
あと少しでも反応が遅れたら、上空から叩き落とされていただろう。
「危ないところでしたね
ですが、あの身体能力はかなり厄介ですよ。今撃っても間違いなく避けられるでしょう」
「泣き言を言っても仕方ない。奴に当てる方法を考えるんだ」
サンジェルマンの発言を聞き、全員がブルードに攻撃を当てる方法を考える。
すると、奏が何か思いついたように口を開いた。
「......なぁ、あたしにみんなの命を預けてくれるか?」
「何か思いついたのか?」
「ああ。まずは奴の足を止める。
近づきながら足元にミサイルを二発撃って、爆発で怯んだ隙に距離を詰めるんだ」
「それで、どうするんです?」
「あたしが奴の目の前で急上昇する。あいつなら、さっきみたいにきっと追ってくる」
「なるほど。空中に誘い出すわけね」
「そういうことだ。乗ってくれるか?」
「やってみる価値はある。それでいこう」
奏は機体を反転させ、ブルードへ向かって一気に加速する。
ブルードがこちらに気づき、身体を低く構える。
「まだだ......」
戦闘機が接近する中、ウェルは照準をブルードの足元へ合わせた。
「......今だ!撃て!」
二発のミサイルが放たれる。
ドォン!ドォン!
「グギャアッ!?」
足元で連続して爆発が起こり、ブルードの巨体が大きくよろめいた。
奏はさらに機体を加速させ、一気にブルードとの距離を詰める。
そして、ブルードの目前まで迫った瞬間───
「ここだ!」
操縦桿を引く。
戦闘機が一気に上空へと駆け上がった。
「グオオッ......!」
ブルードは戦闘機を追うように大きく跳躍する。
「かかった!」
その瞬間、奏は操縦桿を切った。
戦闘機が急旋回し、ブルードの横をすり抜ける。
「グギャッ!?」
追いかけていたブルードだけが空中に取り残され、無防備な状態を晒している。
「今よ!」
「言われなくとも!!」
すかさずエルピスの照準をブルードへと向け、その一撃を浴びせる。
「グ......オ...オ......」
数秒間エルピスによる攻撃を受け続けたブルードは、空中で跡形もなく消え去った。
「よっし!!」
「やったわね!奏ちゃん!」
「見事な腕前でした。おかげで楽に仕留められましたよ」
「武器の威力も証明することができた。完璧な勝利だな」
「あとは......まだ手こずってるあいつの手助けをするか」
撃破した喜びから気持ちを切り替えて、五人はウルトラマンを援護するために機体を旋回させる。
*主人公視点*
グローラーと戦っている間に、まさか奏たちだけで倒すなんて......
俺だって彼女たちに負けてられない!いくぞ!
「───ハアッッ!」
グローラーへと一気に駆け出し、その勢いのまま飛び蹴りを繰り出す。
しかし、以前とは比べ物にならないほど強化された皮膚には、ほとんどの攻撃が通らない。
だが、効果は薄くても攻撃を続ける。度重なるパンチやキックで、少しずつダメージを蓄積していく。
相手もただ殴られるだけじゃない。巨大な鎌状の両手を連続で振り回して攻撃してくる。
まともに受けたらタダでは済まないだろう。
その攻撃を避けつつカウンターをくらわしているが、怯む様子が全くない。俺の攻撃は気にせず、その両手を振り回し続けてくる。
「グオオオッ!」
「グッ......!」
避け続けるのにも限界がきてしまい、振り下ろしてきた左腕を受け止めるしかなくなってしまう。
俺は強化されたその圧倒的なパワーを受け止めきれず、たまらず膝をついた。
奴の右腕は自由なままだ。仕留めるチャンスと言わんばかりに、右腕を高らかに上げて俺を狙っている。
このままではまずい。そう思っていると───
ドガァン!
「ギアァッッ!」
数発のミサイルが奴の鎌状の手に直撃し、粉々に吹き飛ばした。
横を見ると、奏たちの戦闘機が飛んでいるのを確認できた。
『今がチャンスだ!』
「───ッ!オオオッ!」
さすがのグローラーも鎌を壊されて怯んでしまい、俺への攻撃の手が緩んだ。その隙をつき、俺は右腕に《シュトロームソード》を出現させ、左腕の鎌を切り飛ばした。
「ギッ!」
両腕を使えなくされたグローラーは堪らず引き下がるが、まだ俺の攻撃は続いているぞ。
右手にエネルギーを集中させ、強力なパンチ技の《ジェネレードナックル》を繰り出すと、奴の身体は後方へと吹き飛び、そのまま地面に倒れ込んだ。
ちょうどそのタイミングで、俺のコアゲージも点滅を始める。時間も残り少ない。決着をつけるぞ。
「ハァァァ......」
俺は上空へと飛び、必殺技の準備をする。
その時、グローラーが起き上がり、背中の羽根を大きく広げて飛び立つ。俺の攻撃を阻止しようとしているのだろう。
飛ぶスピードもかなり速い。このままでは俺が撃つ前に辿り着いてしまう。
だが、それは俺が一人だった場合の話だ───
ズドォン!
「グオオッ!」
ジャスト1分。再使用可能となったエルピスから淡いピンクの光線が放たれ、奴の羽根に直撃する。
その一撃で羽根を分解されたグローラーは、空中で制御が効かなくなり地面へと落下した。これでお前は俺の攻撃を止めることができない!
「シュアッ!!」
《アローレイ・シュトローム》
「グアァァァ......」
弓状の光線を受けたバグバズングローラーは倒れ伏し、大爆発を起こして消え去った。
これで、また新たにブルードが生み出されることはないだろう。
ビーストが倒されたことで、ダークフィールドGも解除されていく。
俺も変身を解き、S.O.N.G.の皆にバレないように姿を隠す。早いとこガリィと合流してまた入れ替わらないと。
「おい、こっちだ」
「ガリィ。......良かった、怪我はしてないようだな」
「ガリィちゃんがあんなザコ相手に怪我するわけないっての。ほら、早く受け取れ」
ガリィから戦う前に渡した通信機が返ってきた。これで怪しまれずに合流できる。
「助かったよ。夜も近づいてきたことだし、早く皆のところへ向かおう」
俺とガリィが指示された合流地点に辿り着くと、既に全員が集まっていた。そこで作戦の成功を喜び合い、S.O.N.G.からの迎えを待った。
その後、S.O.N.G.では作戦の成功を祝い、ちょっとしたパーティが開催されることになる。弓美はパーティの主役として、皆から労いの言葉をかけられていた。
今回のビースト事件の後始末として、弓美には護衛がつけられることになった。作戦によって多くのビーストを倒すことはできたが、未だに生き残っている個体はいると判断されたためだ。
S.O.N.G.はこの生き残りを倒し切るため、三日かけて匂いの研究を進め、奴らと全く同じ匂いを再現することに成功した。これをデコイにつけることで奴らを誘き寄せ、残りのビーストも全て倒すに至った。
これで、今回の事件は完全に終わりを迎える。
あの事件から数日後───
「はぁ、あーしたちも参加したかったわ〜」
「仕方ないだろ。お前たちは自分のファウストローブがないんだから。
それでも倒せただろうが、念のために不参加にしたんだよ」
「それが悔しかったから、急いで完成まで漕ぎ着けたワケダ。
これで、また同じことがあれば私たちも参加できるワケダ」
「あんなことは二回も起こって欲しくないわねー」
「同感だな」
家のリビングでは平和な時間が流れていた。
そこへ、上機嫌なセレナがやって来る。
「おや、どうしたのですか?そんなに嬉しそうな笑顔をして」
「えへへ......実は、翼さんのライブのチケットを貰っちゃいまして。初めてのライブが楽しみなんです!」
「そうか、お前は長らく死んでいた身なのだったな。存分に楽しむといい」
「はいっ!ふふっ、待ち遠しいなぁ。マリア姉さんと一緒に見られるかな」
「......ライブか」
「どうしたの、絆紡くん?」
「......何でもない」
あのライブまで、あと三日に迫っていた。