「私で童貞捨てたくせに」と学園美少女四天王から言われてるんですが、まったく記憶にございません。   作:会澤迅一

31 / 31
第5話 四天王、再び集結

 キーンコーンカーンコーン。

 

 放課後のチャイムが響く。

 それは本来、俺たち学生にとっては自由を告げる鐘の音のはずだ。

 

 だが、今の俺にとってはドナドナも同然である。

 

 帰りのホームルームが終わった瞬間、俺のスマホは不気味に震えた。

 

 画面に表示されたのは、『木南先輩』の四文字。

 ラインで送られてきた文面は、「第二会議室 全員集合」。

 

 マッド・ティーパーティー第二弾の開催だ。

 

「トーマ、行くよ!」

 

 コハルの細腕に引きずられるようにして、俺は教室を後にした。

 

 これから美少女四天王に囲まれ、四人の仲を取り持つ必要がある。不意打ちでアプローチされることもあろう。そのときは、当人にも他三人にも禍根を残さぬよう、爽やかに受け流す必要がある。

 

 緊急S級クエストである。

 俺の胃がストレスでマッハ!!!

 

 だが逃げるワケには行かない。

 これは俺が望んだ事態なのだから。

 

 ゆうべ見た夢の中で、俺は確かに能動的だった。

 フユミの肩を抱き、コハルの腰を引き寄せ、シミズの首筋に顔を埋め、アキハ先輩を押し倒し……。

 

 淫獣。性欲モンキー。伊藤誠の生まれ変わり。

 脳内を駆け巡る罵倒語に足取りをフラつかせながら、俺は第二会議室のドアへ近づいていく。

 

 一呼吸。二呼吸。

 もしこのドアの向こうが昨夜の夢の続きなら、極楽浄土のようなものだ。

 

 しかし現実は、一手のミスで“Nice boat.”一直線の詰み盤面である。

 

 頑張れ俺。ミスるな俺。死ぬな俺!!

 

 覚悟を決め、ドアノブを回した。

 

「……失礼します」

 

 部屋に入った瞬間、のしかかられたような重圧を感じた。

 

 上座。

 完璧な所作でティーカップを傾けている、木南(きなみ) 秋葉(あきは)先輩。

 たおやかな美貌は神々しく、まるで菩薩のようだ。実際には閻魔大王みたいな人なんですけどね。

 

 窓際。

 背筋をピンと伸ばして座るフユミ。

 俺が入ってきた瞬間、フユミの碧眼がチラリと俺を一瞥した。二人して顔を見合わせ、0.2秒で目をそらす。土曜日のあのキスの感触を、俺もフユミも忘れられずにいた。

 

 その対面。

 澄まし顔で茶菓子を食っているシミズ。

 雰囲気こそ落ち着いているが、俺が入室した瞬間に耳の先がほんのり赤くなり、さりげなく横髪で隠していた。日曜日に俺の耳を甘噛みしたことを思い出したらしい。俺も思い出した。ヤバい前かがみになりそう。アキハ先輩、早く俺を座らせてください。

 

「アタシ、どこ座ればいいですかー?」

 

 コハルが問うと、

 

火伏(ひぶせ)さんは、そちらへどうぞ」

 

 アキハ先輩は、フユミの隣の空席を手掌で指し示した。

 

「ありがとうございまーす! あ、フユちゃんお隣よろしくねー」

 

「ええ。よろしく、コハルさん」

 

 コハルが指示に従う。必然的に、俺はシミズの隣、一番の下座に着いた。

 

 コハルが元気いっぱいなおかげで、沈黙の法廷と化していた第二会議室も、なんとなく和やかな空気になっている。今日ずっとコハルに助けられてるな。コハルありがとう!!

 

 一方、アキハ先輩は俺が座るのを確認し、静かに書類を整えた。

 

「さて、全員揃いましたね。……日村さん、お体の具合はいかが? 今日は少し優れないようですが」

 

 え、なんで知ってるんですか?

 もしかしてクラスにアキハ先輩の手の者がいるのか!?

 

 生徒会長の監視網、マジで洒落になっていない。俺の不意立ちが危うく生徒会案件になるところだったようだ。

 

「い、いえ。ちょっと低血圧だっただけで、今はもうピンピンしてます」

 

「そう。なら安心しました。では、本題に入りましょう」

 

 アキハ先輩は、プロジェクターのリモコンを操作した。

 スクリーンに映し出されたのは、『七曜祭・公式PR戦略案』という文字。

 

「パンフレットや公式サイト、そんな手法だけでは、今の若者を惹きつけきれません。必要なのは『ライブ感』と『個のカリスマ性』です。……そこで、皆様による潜入リポート動画をシリーズ化し、SNSで大々的に展開します」

 

「潜入リポート動画?」

 

 思わず問い返した俺に、アキハ先輩が微笑んで返す。

 

「ええ。

 月澄(つきずみ)さんのクラスでやっているカフェのリポート。

 冷水(しみず)さんによる演劇制作のリポート。

 火伏(ひぶせ)さんがSNSでやってらっしゃる企画のリポート。

 そして、私たち生徒会および実行委員会のリポート。

 それぞれ曜日ごとにローテーション実施する予定です。いかがでしょうか?」

 

「よさそうですね」

 

「さっすがアキハ先輩!」

 

「特進クラスの屋台も見てもらえるのは助かりますね」

 

「映像で文芸の魅力を伝えるというのは、やりがいがありますね」

 

 四天王の反応は良好だった。

 

「企画構成は広報担当の火伏さん。そして、動画の顔となるリポーターも彼女にお願いします」

 

「いいんですか!?」

 

「ええ。コハルさんはフォロワーも多く知名度が高いので、ぜひお願いしたいのです」

 

「やたー! せいいっぱいガンバります!!」

 

 コハルのテンションが最高潮に達する。

 

 ヨシ!

 これで俺は、一歩引いて機材の運搬でもしていればいいわけだ。

 

「そしたら、カメラマンは誰にしましょうかね」

 

 俺は呑気に問いかけた。

 生真面目で器用なフユミか、口達者で博識なシミズが良さそうだが……。

 

 どちらも美少女なので、大いに映えるはずだ。

 

 しかし、アキハ先輩の視線は俺をまっすぐ貫いていた。

 

「日村さん。あなたにカメラマンをお任せします」

 

「……え、 俺ですか?」

 

「ええ。これは生徒会長命令、兼、実行委員長としての公務です。火伏(ひぶせ)さんの魅力を最大限に、かつ、最も自然に引き出せるのは、彼女と気心の知れたトーマさんしかいません。……もちろん、撮影機材は生徒会で最高級のものを用意します」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

数多の世界のヤンデレ親友とのバッドエンドを見届けた俺、全ての記憶を引き継いでもう一週……え?!バッドエンドの方の親友達も記憶引き継いでるんですか?!  (作者:ハンノーナシ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼とある男、ライア・リーベルには愛する親友達が居た。▼個性的で、才能があって。▼そんな親友に囲まれた幸せな人生は、大人になるにつれ転機を迎える。▼親友達との才能の差、立場の差。▼そんな物がライアと、親友達さえ苦しめる。▼そんな些細な事から始まり、終わった『バッドエンド』達。▼ライアは過去に戻り、親友達を救う……。▼「えっ、別々の世界が過去に逆流した事によって…


総合評価:592/評価:7.83/連載:11話/更新日時:2026年05月31日(日) 20:49 小説情報

【休載】好感度が見えても上手くいくとは限らない(作者:かませ犬S)(オリジナル現代/恋愛)

好感度が見えたら家族が崩壊した。そんな話▼※複数サイト様にマルチ投稿しております


総合評価:835/評価:7.05/連載:25話/更新日時:2026年05月06日(水) 07:04 小説情報

男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴(作者:陽波ゆうい)(オリジナルファンタジー/恋愛)

男女比3:1の世界に転生した。▼って、おいこれ、男がチヤホヤされる貞操逆転世界ってやつじゃねーじゃん!?▼野郎が多くなったら、寝取りが増えるだけだろっ。▼だから俺は、女の子にモテることを諦めることにした。▼※カクヨムでも掲載しています。


総合評価:3199/評価:7.98/連載:24話/更新日時:2026年06月01日(月) 22:22 小説情報

魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます(作者:異星人アリエン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

『魔法少女マギアイリス』。それは人気がすこぶる高いアニメとして、名を馳せていたアニメタイトルであった。▼話としては、至極単純世界征服を目指す組織《ディスナンド》が、ミラクルパワーとかいう力を操る魔法少女によって倒される。そんな分かりやすい物語。▼だけど、そんな世界で生きることとなった身としてはたまったものではない。▼そんな世界に転生した男、須佐八雲は男である…


総合評価:5815/評価:8.25/連載:12話/更新日時:2026年06月06日(土) 11:11 小説情報

火遊びはよくない(作者:竹藪焼けた)(オリジナル現代/恋愛)

金の絡んだ火遊びをするのが大好きだった一人の男が、大変なことになる話。▼


総合評価:1507/評価:8.93/連載:8話/更新日時:2026年06月04日(木) 21:34 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>