『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』   作:とんこつラーメン

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デメリットだトランザム!

 出久君が頑張っている間も、私や勝己君は立ち止まってはいない。

 勉強にジムでの特訓にと、充実した毎日を送っている。

 そんなある日、私は遂にトランザム最大のデメリットと向き合うことになった。

 

 それは、私がいつものように勝己君と一緒にジムに通い、例の特殊訓練場を使っていた時だった。

 

(もうすぐトランザムの五分が終わる…! 気を付けなくては!)

 

 私の中にある体内時計は、あと数秒でとトランザムが終了することを告げている。

 そんな私に向かって、巨大な鉄球が発射されてきた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 ジャンプをしながらの回し蹴りで鉄球を蹴り飛ばし、着地をしたと同時にトランザムが終了した。

 

「ふぅ…終わったか。後は一分待って…うっ!?」

 

 気を抜いた瞬間、急に立ち眩みがし、不意にその場に膝をついてしまった。

 

(体に…力が入らない…!? この感じは…まさか…!)

 

 今までにも、トランザムを使った後には多少の気怠さぐらいはあったが、それは別にそこまで支障がある程度じゃなかった。

 だが、今回のは明らかに違う。

 指に、足に、思うように力が籠められない。

 自分の身にトランザムが宿っていると知った時から覚悟はしていた。

 いつの日か必ず、この瞬間が来るだろうと。

 まさかそれが、目標達成後に来るとは思わなかったが。

 

「おい! どうした刹那!! しっかりしやがれ!!」

「大丈夫だ…問題ない…」

「そのセリフは明らかなフラグなんだよ!!」

 

 言われてしまった。

 別に意識して言ったわけじゃないんだけど、つい口から出てしまった。

 

 なんて会話をしている間に一分経過。

 すると、急激に体が良くなり、力も元に戻っていく。

 

「矢張りか…」

 

 インターバルの間だけの能力低下…これもまた原点のトランザムと同じ…。

 逃れられない宿命とは思っていたが、まさかこのタイミングで来るとはな…。

 

(後で電話で医者に相談してみるか…)

 

 幼い頃に私の個性を見てくれた医者先生。

 あの人ならば、この原因の予想でも出来る筈だ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 訓練場を出てから、私はちゃんと勝己君に事情を説明した。

 

「個性のデメリットだぁ?」

「恐らくはな。インターバルの間…つまり一分間だけだが思うように力が入らなかった」

「お前の個性の弱点ってことか…」

「だろうな。今まではこんなことは無かった。今回のような事例は今日が初めてだ」

「ってことは、テメェの個性のインターバルが一分にまで縮んだことと関係があるかもしれねぇ…ってことか」

「多分。だから、帰ってから私の専門医に電話相談をしてみようと思う」

「診断はしねぇんか」

「今はまだ…な。もし必要だと言われたら遠慮なくするつもりだ。向こうも忙しいしな」

「…そうか」

 

 ん? これってー…もしかして心配されてる?

 出久君の一件が片付いてから少しだけ物腰が輪やらかになったとはいえ、まだまだ獣のような荒々しさは残っている。

 キレデレがツンデレにランクダウンしたような感じ?

 

「お前はここで休んでろ。俺はまた行ってくる」

「そうか。頑張れよ」

「たりめぇだ。俺は…デクにも、オールマイトにも、テメェにも…負けるつもりはねぇんだからな」

 

 負けるつもりはない…か。

 別に私は君に勝っているだなんて思ったことは一度も無いんだけどなぁ…。

 私個人としては、こうして仲のいい友人と一緒の時間を過ごせるのが純粋に嬉しいんだけど…。

 

(そんなことを言ったら、まず間違いなく照れ隠しにキレるから絶対に言わないけど)

 

 もう勝己君のキレ芸は一種の伝統芸だよね。

 クラスの皆も、すっかり彼のキレ芸に慣れちゃってるし。

 毎日怒っている人間が怒っても全く怖くはないけど、普段大人しくしている人間がマジ切れしたら滅茶苦茶怖いってのと同じだろうね。

 逆に、勝己君みたいな子が、雨の日に段ボールに入った子猫や子犬を拾って家に持ち帰ったりしたら、まるで聖人君子みたいな扱いをされる。

 良くも悪くも、世の人間はギャップに弱いのだ。

 勿論、私もギャップ萌えには弱い。

 多分、普通に胸キュンする。

 なんて無意味なことを考えつつ、私は自分の掌を見つめる。

 

(これは…医者だけでなく、もう一つの専門家の意見も聞いてみた方が良いかもしれないな…)

 

 幸いなことに、日本一有名な専門家と話す機会があるのだから、これを逃す手はない。

 善は急げ。思い立ったが吉日。

 医者と話をした次の日辺りに、例の海浜公園に行ってみることにしよう。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

 私は事情を話して剣道場を休み、出久君とオールマイトがいるであろう海浜公園に赴いていた。

 因みに、勝己君も一緒に来ようとしたのだが、途中で彼のお母さんから電話が入り、またもや買い出しの手伝いをさせられる羽目となっていた。

 文句を言いつつも、結局はちゃんと手伝ってくれる辺り、彼の根っこの部分の人柄の良さが現れてるよなぁ~。

 

「おや? そこにいるのは…藤原少女? 君が一人でここに来るなんて珍しい。何かあったのかい? 緑谷少年なら…」

 

 こっちから話しかける前に、オールマイトの方が気づいてくれた。

 これはこれで話がしやすくなるから丁度いい。

 

「いや…今日はあなたの方に用事があって、ここに来たんだ」

「私に?」

「あぁ。話と言うよりは相談に近いのだが」

「ふむ…」

 

 少し顎に手を当てながら考えた仕草をし、彼は近くの階段に腰かけてから私を手招きした。

 

「で、君ほどの人物が私に相談とは一体何なんだい?」

「私の個性のデメリットについてだ」

「君の個性の…デメリット…?」

 

 私はこの間の出来事を、出来るだけ事細かにオールマイトに伝えた。

 何が起き、自分でもどう思ったのかを。

 

「成る程…インターバルの時間が一分になった途端、個性発動終了後に謎の能力低下が発生したと…」

「そうだ。全身に力が入らず、思わずその場に膝をついてしまった」

「あれだけ鍛えている藤原少女が、そこまでになるとは…」

 

 あの感覚は体調不良と言うよりは、とてつもない疲労感と言った方が正しかった。

 まるでフルマラソンを休まずに全力疾走したような…そんな感覚。

 本当に、今まではこんなことは一度も無かったのに…。

 

「確か、最初のインターバルの時間は一時間だったんだよね?」

「そうだ。それでは流石に長すぎると言うことで、私はそれを少しでも短く出来るように頑張って来た。医者からも、それ以外の部分が協力過ぎるが故に、伸ばすことが出来る部分があるとすればインターバルの時間の短縮だと言われた」

「確かにね…普通に考えても、たった五分間だけとはいえ、自分の全能力を100倍にまで上げると言うのは物凄すぎるよ」

「そうなのか…」

「私も長い間ずっとヒーローをやって来たからね。その間に色んな個性を目撃してきた。その中には、私や君のような『強化系』に属する個性も沢山あった。だが、それでも藤原少女の『トランザム』は異次元だよ」

 

 自分で言うのもなんだけど、それには激しく同感。

 流石に100倍は無いよなぁ~って今でも思うもん。

 せめて原作みたいに3倍ぐらいならいいのに、どうして100倍なのかしらん?

 幾ら何でも桁が違いすぎるでしょうがよ。

 

「これはあくまで私の予想だが…それでも聞くかい?」

「是非とも」

「分かった」

 

 私よりは遥かに個性に関する知識は深い筈。

 どんな話であろうとも、必ず参考にはなるだろう。

 

「恐らく、当初の『一時間』という時間こそが、最も適した時間だったんだろう」

「最も適した時間…?」

「そうさ。トランザム使用後、君の体には100倍に向上した体の負荷が掛かっている。それを回復させる為に本来は一時間必要だったんだろう。だが、それを君は長年に渡る努力によって短縮させることに成功させた。これは非常に素晴らしいことだ」

「そ…そうか…」

 

 真っ向から褒められた…。

 流石に照れるな。

 

「回復時間が少し短くなる程度ならば、そこまで支障は無かったんだろうが、それが一分ともなれば話は違ってくる。なんせ本来の60分の1だからね。常識的に考えても、非常に大幅な短縮化だ。だが、流石に一分という短い時間で今まで通りに回復させるのは無理があった。だから、急速な体力回復の為に他の部分の機能を低下させ、その分を回復に回している…と、私は思ったよ」

 

 急速な回復をする為に、敢えて能力を低下させ回復に専念させている…か。

 成る程、成る程…。

 

「流石はオールマイトだな…。まさか、専門医と全く同じ意見が出るとは…」

「と言うと、この話は医者にも?」

「あぁ。昨日帰ってから電話で相談してみた。で、医者とはまた別の意味でのプロフェッショナルとして、貴方の話も聞いてみたいと思ったんだ」

「そう言うことだったのか。で、参考にはなったかい?」

「あぁ。医者とプロヒーロー…双方から同じ意見が出たと言うことは、もう間違いないだろう。そして、それは同時に私の新たな課題でもある」

 

 五分の超強化後に発生する、一分の弱体化。

 これをどう凌ぐか…これが次の問題ですな。

 

「それに関しては、そこまで深く考える必要はないと思うよ?」

「と言うと?」

「どんなに強力な個性にも、必ず弱点は存在している。寧ろ、その弱点を補完する為に、今も活躍している多くのプロヒーロー達は『サポートアイテム』を使ってるんだぜ?」

「サポートアイテム…」

 

 そうか…その手があったか…!

 ガンダムでいう所のサポートメカ…!

 GアーマーやGファルコン、ミーティアやフライングアーマー、そしてオーライザーみたいに!

 

「完全に目から鱗だった…。そうか…サポートアイテムか…」

「藤原少女程の子がプロになったら、寧ろ会社の方から『是非とも我が社のサポートアイテムを!』って言ってきそうだけどね」

「それはそれで嬉しい悩みだな」

 

 完全に頭から失念していた。

 人間は太古の昔から、自分の能力の及ばない所を『道具』で補ってきた。

 それは現代になっても決して変わることは無い。

 こんな単純なことすら思いつかなかったとは…。

 

「帰ったら、試しにサポートアイテムの会社をネットで調べてみることにする」

「それがいいよ! そうだ! 実は個人的にオススメな会社が幾つかあってね…」

「ほぉ…?」

 

 そうして私は、オールマイトからサポートアイテムの会社について色々と話を聞いた後に帰路に着いた。

 実際にネットで調べて驚いたのだけど、軽く調べただけでもサポートアイテムの会社って日本だけでも10000社以上あるんだね…めっちゃ驚いたわ。

 オールマイトからオススメの会社を教えて貰ってなければ、会社の名前を見て回るだけで夜が明けていたかもしれない。

 普通に興味深い話が聞けたのは本当に良かった。

 やっぱ、持つべきものは身近なプロヒーローですな。

 もし雄英に入学出来たら、これまで以上に色んなことが相談できるんだろうか。

 それはそれで地味に楽しみなんですけど。

 

 

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