『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
講堂での説明会が終了し、私たちは更衣室で持参した動きやすい格好に着替え、それから各々に割り当てられた試験会場へと移動をした。
当初、動きやすい格好と聞いて学校指定のジャージにしようかと思ったのだけど、よくよく考えたら、私にとって最も動きやすい格好なのはジャージよりも剣道の時によく来ている道着だったので、今日はソッチの方を持ってきた。
だって、ジャージは三年間しか着てないけど、道着の方は約九年間も着てるんだもん。
その間に多少のサイズ変更はしたけど、それでも一番着慣れている服と言えば道着になる。
「ここが私の割り当てられたC会場か…」
なんつーか…モロに街ですな。
広くてデカくて、なにより再現度が半端じゃない。
成る程、ここならば確かに実技試験にはもってこいかもしれない。
それはそれとして、こんなバカデカい会場を幾つも制作し、更にはこの中に無数の試験用ロボットを投入していると考えると、雄英高校の底知れない資金力にドン引きする。
(にしても、今から出てくる『仮想敵』って、もしかしてダブルオーに出てきたオートマトンみたいな物かな?)
もしそうなのだとしたら、こっちとしても気が少しは楽なんだけど。
「おい…あの子…」
「あれって…もしかして剣道着か?」
「かなり目立っているけど…」
「滅茶苦茶似合ってるから、何とも言えねぇよな…」
「手に持ってる木刀も相まって、完全な剣道少女って感じだな…」
やっぱり目立ってたか…。
ま、この程度で狼狽えてたらガンダムになんて永遠になれはしない。
それに、ヒーローになったらそれこそ嫌でも目立つんだから、気にしてなどいられない。
(さて…他の二人はどんな感じかな…?)
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俺が来たのはB会場。
少し周囲を見てみると、出来そうな奴は割と少ない。
(ここが試験会場ね…上等じゃねぇか…!)
模擬市街地演習とはよく言ったもんだ。
これはもう『模擬』の領域を完全に超えてやがる。
「ま…俺には関係ねぇがな」
ここがどこで、相手が何だろうとどうでもいい。
俺は俺に出来る全力で、俺のやるべきことを成すだけだ。
それだけは何一つとして変わっちゃいねぇ。
(デクの野郎は体を鍛えて、更には個性を手に入れた。刹那も、ガキの頃から目標だった個性のインターバル1分を達成した。なら…今度は俺の番だろうがよ…!)
今の俺は『真ん中』だ。
後ろからはデクが全力で追いかけてきて、前では刹那が全力で走ってやがる。
俺はその二人の間に挟まった状態。
このままデクに追いつかれるのが先か。
それとも、刹那に追いつくのが先か。
(雄英高校…悪ぃが…この試験すらも俺の踏み台にさせて貰うぜ…!)
ここから俺の…ナンバー1への道が始まるんだ!
足踏みなんざしてられっか!!
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僕が割り当てられたA会場。
模擬市街地演習って言ってたけど…これもう殆ど街じゃないか!?
なんか、その気になればここで生活出来そうだ…。
(凄いなぁ…誰一人として緊張している様子が無い…)
それだけ自分の個性に自信があるって証拠なんだろう。
そして、それは同時に嘗ての僕に決定的に不足しているものでもあった。
(けど…もうそんなことにはならない! かっちゃんや刹那ちゃんと一緒の道を歩むためにも…僕はもう二度と情けない『デク』には戻らない! 覚悟を…決めたんだ!!)
刹那ちゃんが教えてくれたように、まずは深呼吸。
気休めかもしれないけど、これで少しだけ落ち着いた。
「ん?」
あそこで同じように深呼吸してるのって…さっき僕を個性で助けてくれた女の子?
いつもなら俺の一言でも言いに行く所だけど、今は精神集中しているみたいだから近づかないでおこう…。
(あ…あれはさっきの委員長!?)
あの顔は流石に覚えている!
かなり目立ってたしなぁ…。
(インテリ系に見えて凄い筋肉だ…相当に鍛えてるんだろうなぁ…)
自画自賛じゃないけど、僕も相当に頑張った自覚はある。
けどやっぱり、元から鍛えている人と比べると、どうしても見劣りしてしまう。
かっちゃんとかが良い例だな。
ああ見えて、かっちゃんって物凄く鍛えてるから。
特に足腰が凄い。
流石は山登りが趣味なだけはある。
(問題は、今回の試験で僕たちが相手をする『仮想敵』がどんなのかってことだけど…)
恐らくは試験用に用意したロボットだろうと言うのが、僕たちの共通見解だ。
雄英だって人手が無限にあるわけじゃない。
足りない部分は僕たちと同じように『道具』で補うのが道理ってものだ。
(もし本当に相手が機械なら…色々とやりようはある…!)
僕はまだオールマイトから授かった個性が使いこなせるわけじゃない。
もし使う場面が来るとすれば、それは恐らく例の『お邪魔虫』相手になるだろう。
僕たち三人の共通見解その2。
どう考えても怪しい『お邪魔虫』の存在。
ワザと言い忘れたような感じを演出し、あそこまで存在を主張するような言い方をする。
どう考えたって、今回の試験の最大の肝が『お邪魔虫』だろう。
僕の今回の課題は、その『お邪魔虫』登場まで、どれだけ個性を温存しつつ点数を稼げるか。
(力で及ばない部分は『知恵』と『機転』で乗り越える! 今の僕の真の最大の武器はそれだ!)
どんな時も刹那ちゃんみたいに冷静に。
だけど、同時にかっちゃんみたいに熱く!
平常心さえ忘れなければ、やってやれないことは無い!…はず。
『はい。ヨーイ…スタート』
は…始まった!
まずは開幕全力ダッシュ!って…あれ?
誰も走って来てない? なんで?
僕は、なんか条件反射的に走っちゃったけど…。
『おいおい! どうしたぁっ!? 実戦じゃご丁寧にカウントダウンなんてしねぇんだよ! とっとと走れ走れぇ! 今の俺の声に反応したのは、全会場内でもたったの三人だけじゃねぇか! もう賽は投げられてんだぞ!?』
全会場内で三人って、もしかして僕とかっちゃんと刹那ちゃん!?
あの二人も今ので走り出してたんだ!
流石だよ…本当に!
だからこそ、僕は二人にずっと憧れてたんだ!!
「し…しまった!」
「完全に出遅れちまった!」
「俺達も急ぐぞ!!」
他の皆も今の声でようやく走り出した!
きっとすぐに追いつかれるだろうけど、このリードは上手に利用したい!
そう思って走っていると、いきなりビルの壁を突き破って一体のロボットが出現した!
『標的補足! ブッ殺ス!』
「いや、かっちゃんかよっ!?」
おっと。思わずツッコんじゃった。
このロボット…腕の部分に『1』って書いてある!
ってことが、これが1Pの敵か!
(なんだろう…昔の僕なら絶対にビビって足がガクブルだったんだろうけど…)
今は不思議と微塵も怖くない!
この道の先には、僕の幼馴染たちが待っていると知っているから!
こんな僕の背中を、最高のヒーローが後押ししてくれていると知っているから!!
「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
このロボット…よく見たら腕の部分がかなり脆そうだ!
だったら、まずはこの腕を引きちぎる!
この程度…あの無駄にデカくて重かった粗大ゴミと比べたら…!
「大したこと…なぁぁぁぁい!!!」
ロボットの右腕をちぎってから、それをそのままロボット自身に叩きつける!
こいつ…思った以上に脆い!
一番点数が低いせいなのか簡単に壊れた!
「これなら…行ける!」
こいつを起点にして、このまま一気にやろう!
このロボットを、そのまま武器として使って個性を温存だ!
「あいつ…ロボット自体を武器にしてやがる!」
「そうか! その手があったか!」
「確かに、さっきの話でも『倒した仮想敵を武器にしてはいけない』とは言われてない!」
「ああして、後半まで個性を温存する作戦か!」
「たった10分とは言え、個性を使い続けたら途中で疲れ果てるのは必至!」
「あいつはそれを見越して動いてるのか!」
なんか周りが勝手に勘違いしてるけど、それならそれで都合がいい!
僕は、このスタイルでこの試験を戦い抜く!
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・・・
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・
「こんなものか。思っていたほどじゃないな」
私の木刀の一振りで、3Pの仮想敵が粉々になる。
まだ一回もトランザムを使っていないのに、あろうことか素の身体能力だけでなんとかなってしまっていた。
「な…なんだ…あの子…」
「個性を使わずに、木刀だけで仮想敵をぶっ壊してるぞ…」
「なんか…本人も困惑してね? こんなもんなのかー的な…」
「個性無しで、あの実力かよ…すげぇ…!」
うーん…もうちょっと歯ごたえのあるのを想像してたんだけどなー。
試験用だからか、武器らしい武器も搭載されてないし。
こっちの方がお邪魔虫って感じがするのは私だけ?
「また来たか」
今度はご丁寧に1・2・3Pが並んでやって来た。
けど、これもまた木刀の横一閃でさようなら。
「あ…危ねぇ!!」
「ん?」
誰かの声と同時に後ろを振り向くと、そこには2Pの仮想敵が私に飛び掛かろうとしていた。
これぐらいの攻撃ルーチンはあるんだ。
けーどー…?
「ふん」
「え?」
この程度の奇襲じゃあ…私は討ち取れないなぁ~。
「す…素手で…受け止めた…?」
「ふん!」
そこから地面に叩きつけ、そのまま刹那ちゃんのフットスタンプ!
はい。お掃除完了。
「あ…あれ? 俺…もしかして余計なお世話だった?」
「お前は…」
よく見たら、近くに黒い髪のガタイの良い男の子がいた。
彼の周りにも仮想敵の残骸が転がっているのを見ると、相当にやっつけてるみたいだな。
「いや、そんなことは無い。お前の声が無ければ、私は思わぬ怪我をしていたかもしれない。感謝する」
「お…おう…どういたしまして…」
なんか顔が赤いんですが。
風邪でも引いたか? なんちゃって。
この反応…出久君と同じように初心なだけでしょ。
可愛い奴め。
「その礼と言ってはなんだが…」
「ん?」
「後ろだ」
男の子の背後から迫っていた1Pの仮想敵目掛けて木刀をシュゥゥゥゥゥッ!
超! エキサイティンッ!
「うをっ!? い…いつの間に…! サンキューな!」
「どういたしまして」
仮想敵の所まで行って、そのまま木刀を引き~…抜かない!!
木刀が突き刺さったままの状態で持ち上げて、偶然にも近くにいた別の2Pの仮想敵に、スクラップになった1P仮想敵を投擲…っと。
これで一気に3Pゲットですな。
「大和撫子っぽい見た目なのに、やることはワイルドなんだな…」
「そうか?」
実際のガンダムマイスターは、も~っと派手だぞ~。
特に、ファーストシーズンの前半はほぼ無双状態だったしね~。
「私は、もう少し北に進んでみる。お前はどうする?」
「なら、俺も一緒に行くぜ! 今さっきの借りを返さねぇといけねぇしな!」
「これは一応試験なんだが? 全員がライバルなんじゃないのか?」
「それはそれ! これはこれだ! このまま借りの作りっぱなしってのは、俺の漢としてのプライドが許さねぇ!」
「プライド…か」
なんと言いますか…このご時世にはしては珍しく熱い子ですなぁ…。
ま、嫌いじゃないけどさ。
偶にはGガンダムみたいな熱血路線も悪くはない…かな?
私も、あの作品は大好きだし。
「俺は切島鋭児郎! お前は!?」
「私は藤原刹那だ。着いてくると言うのなら勝手にしろ。先に行くぞ。切島鋭児郎」
ってなわけで、時間も無いので全力ダーッシュ!
お先に失礼するぜ~! 切島君とやら~!
「あ…足速っ!? つーか、なんでフルネーム!? ま…待ってくれ藤原~!」
こうして、何故か私は会場で知り合ってしまった男の子と行動を共にするのでした。
これもまた人の縁ってやつなのかねぇ~。