『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
今後は、このようなことがないように努力していく所存です。
文字通り、僕は出てくるロボットを千切ってはぶつけ、千切ってはぶつけをしながら、なんとか点数を稼いでいた。
「はぁ…はぁ…これで…39P…!」
結構稼ぎはしたけど、お陰でかなり疲れた…!
ここには道具の持ち込みは基本的に許可されている。
事実、刹那ちゃんは武器として木刀を所持していたし、他にも色んな人が色んなものを持ってきている。
僕も実は少しだけ持ってきていたりする。
と言っても、そこまで自慢するような物じゃないんだけど。
(短い時間とはいえ…いや、短い時間だからこそ、油断をしないようにこまめな水分補給を行わないと!)
そう、僕が持ってきたのは小さい水筒。
専用のホルダーとベルトを使って腰からぶら下げて、いつでも飲めるようにしてある。
このサイズなら、そこまで邪魔にはならないしね。
「んっ…んっ…んっ…ぷは…! よし!」
ちょっとだけだけど、なんか元気出た!
流石に飲みすぎは禁物だけど、適度な量なら問題は無い。
「さっきのロボットを武器にしてた奴…水筒を…! くっそー…俺も持ってくればよかった…!」
「フルに体と個性を動かし続けるから…普通に喉が渇く…!」
「俺も…試験会場に来る途中に自販機で買っておけばよかった…!」
「完全に頭から抜けてた…! そりゃそうだよなぁ…こんな時だからこそ、いつも以上に体力回復の手段は必須事項だよなぁ…!」
「功を焦って動きが鈍くなるよりは、多少の時間のロスは覚悟のうえで体力の回復に当てる…やるな…!」
なんかよく見たら、さっきの眼鏡を掛けた委員長がこっちを見て感心してる。
こんな僕でも、誰かのお手本になれたのなら幸いだ。
「はっ…! 3Pの仮想敵!」
女の子の背後から近づいて攻撃をしようとしてる!
僕は咄嗟に体を動かして、そいつ目掛けて、さっき倒した仮想敵の腕部をぶつけて、体勢を崩した隙に地面に叩きつけた!
「はぁ…はぁ…はぁ…! だ…大丈夫!?」
「う…うん! ありがとう! って…え?」
「き…君は…さっきの…?」
仮想敵を倒すのに夢中で気が付かなかったけど、女の子の正体は、さっき校門のところでコケそうになった僕を助けてくれた子だった。
こんな偶然ってあるんだなぁ…この会場、かなり広い筈なのに…。
「これで、おあいこ…だね?」
「う…うん…」
お…おあいこ…何故か凄くいい響きの言葉だ…。
「ところで、そっちは頑張ってる?」
「な…なんとかね。君の方は?」
「私も何とか! でも、ここからもっと頑張らないとね!」
「そ…そうだね…!」
助けた相手に励まされた…。
なんかちょっと情けないなぁ…。
『あと6分2秒~』
もうすぐ半分…!
どれぐらいが合格ラインかは分からないけど、可能な限り点数は稼いでおきたい!
周囲を見渡して、動いている仮想敵を探そうした…その時だった。
「あっ!?」
「わっとっと!? な…なに!?」
いきなり、会場全体に恐ろしく巨大な地響きが発生した。
思わず僕も含めた全員が立ち止まり、その地響きを発生させた存在を見上げる。
「成る程…これが…そうなのか…!」
巨大なビルを破壊しながら現れたのは、今までの仮想敵とは比較にすらならない程に超巨大なロボット。
こいつが…プレゼント・マイクの言ってた『お邪魔虫』の正体か!
「デ…デカァァァァァァァァァァッ!? なんやのん、あれはぁぁぁぁぁぁっ!?」
あ、急に訛った。
もしかして、これが素だったりするのかな?
突如として出現した超巨大物体に、皆は当然のように逃げ惑う。
そりゃそうだ。
去年までの僕だったら、間違いなくここで腰を抜かし、驚きの余り顎が外れていたことだろう。
だが…今は不思議と恐怖心を全く感じない。
何故なら…。
(こいつからは何も感じない…悪意も…敵意も…殺意も!)
そう…僕は…僕たち三人は知っている。
剥き出しになった本当の悪意と敵意と殺意を。
それをモロに目の前で体験している。
だからこそハッキリと断言出来てしまう。
(こんなのは…ただデカいだけじゃないか!)
どこまでも只管に巨大なだけ。
あの体験をした僕たちが、この程度で怯むと思われた困る!
「今しかない…!」
「え?」
オールマイトから受け継いだ個性…もし使うとしたら、それは間違いなく今だ!
ここで使わないで、いつ使うって言うんだ!
「ちょ…ちょっと!? 早く逃げないと!」
「先に行ってて。僕はこいつに用があるから」
「用があるって…ま…まさか…!?」
「うん。ちょっと、こいつをぶっ飛ばしてくる」
「ええぇっ!?」
『デクの棒のデク』は今日限り卒業する!
ここからの僕は…『頑張れって感じのデク』だ!!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
何体も何体も、出てくる仮想敵を手当たり次第にぶっ潰していた…その時だった。
いきなり俺らの前にデカい影が現れて、こっちの事を見下している。
「そーか…あいつが『お邪魔虫』野郎ってわけか…」
確かにこいつは『お邪魔虫』だ。
こんなにデカい癖に、倒しても全く点数が入らない。
正真正銘の『お邪魔虫』。
だけどなぁ…。
「寧ろ…
こっちに、このデカブツが出現したってことは、恐らくは他の会場にも同じようにこいつが出てきたに違いない。
制限時間が半分を過ぎた辺りから投入されるようになっていたんだろう。
「ここからが本番ってか? 上等じゃねぇか…!」
他の連中はアホ面晒して逃げまどっているが、俺は逃げねぇ。
もう二度と…逃げてたまるか…!
「俺は…刹那を超える。デクも超える。オールマイトも超える。こんな所で…こんなデカブツ野郎如きから逃げてるようじゃあ…!」
拳を合わせ、人の流れとは逆方向に走っていく。
向かうは、あのデカブツの懐!
「俺は未来永劫! ナンバー1なんかになれはしねぇんだよ!!!!」
俺の未来…俺の夢!!
こんなデカいだけのガラクタ風情に阻まれてたまるかよ!!
刹那だって! デクだって! 絶対にこいつに立ち向かってる筈だ!!
俺だけ逃げるなんて選択肢は…ハナからどこにも存在しねぇっ!!!!!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「これで…大体77ぐらいか」
目の前にいた3P仮想敵を一刀両断して一息つく。
一応、頭の中で計算しながらやってるので間違いはないと思う。
「藤原…お前…スゲーのな…」
「そうか?」
そういう切島くんだって、さっきから沢山倒してるじゃん。
武器も持たずの徒手空拳だけで、そこまで頑張るってのは普通に凄いことだと思うよ?
「いやだって…そんだけ動いてるのに汗一つ掻いてねぇじゃんか」
「あ…本当だ」
「気付いてなかったのかよっ!?」
そういや、本当に汗掻いてないや。
いつもやってる特訓や剣道の練習に比べたら、こんなのは運動のうちにも入らないから…なのかな?
「そういう切島鋭児郎は汗だくだな。少し匂うぞ」
「それが普通なんだよ! あと、同年代の女子からの『匂う』は普通に傷つくからやめて!?」
「そうなのか。すまない」
乙女心が複雑なように、男心もまた複雑なのね。
女の子になってからもう15年近くになるから、すっかり忘れてしまっているけど。
「この辺の仮想敵も随分と少なくなってきたな…」
「先程、残り時間6分を告げる案内があった。もう試験は後半に突入しつつあるということなのだろう」
「そういや、そんなのあったな。そっか…ここから皆ヘバってくる頃ってことか」
「あぁ。そして、ここからがある意味で我等の真価が試されるのだろう」
「疲弊した状態でも、どれだけ動けるか…ってか?」
「もしくは『どう動くか』…だな」
疲れていると自然と判断力や反応速度が悪くなる。
幾ら恐れるに足らずの仮想敵だとしても、油断をすれば怪我を負わされる可能性がある。
故に、ああしてワザと中途半端な時間の経過を報告したんだろう。
「可能であれば、もう10Pぐらいは稼いでおきたいところだが…」
「まだ稼ぐ気なのかよ…」
「当然だ」
「多分だけど、この会場で一番ポイントを取ってるのって、間違いなく藤原だと思うぞ?」
「そうなのか?」
「あぁ。あくまで俺の主観だけど、お前がここの会場の仮想敵の約7割ぐらい壊してるだろ」
「そこまでやっていたか…」
「自覚無かったのかよ…」
だって、こっちは本当に無我夢中で剣を振ってただけなんだもん。
点数はともかく、倒した数まで計算とかしてないよ。
「む?」
「どうした?」
「今…地面が揺れたような…」
「よせよ…地震だとでも言う気かよ?」
気のせい?
でも、この感じは確かに…。
「こ…これは…」
「え…ちょ…マジで? 藤原の言う通り…地面が揺れてる!?」
これは自然発生の地震じゃない…!
何かが地面にぶつかって発生している揺れだ!
「お…おい…藤原? あ…あれ…」
「成る程…これが、今の揺れの正体か」
私たちの眼前に現れたのは、商業ビルすらも軽く凌駕するほどの大きさを誇る仮想敵。
どうやら、こいつこそが説明会でプレゼント・マイクが言っていた『お邪魔虫』ということらしい。
「な…なんだよ…あれは…」
「恐らく、あれこそがプレゼント・マイクが言っていた『お邪魔虫』だ」
「ってことは、あんなにデカいのに倒しても何の意味も無いってことか!? 冗談だろ!?」
「何の意味も無い…か」
果たして…それはどうだろうね。
「私は…こいつがいることにも必ず何か意味があると思っている」
「ど…どういうことだよ…?」
「考えてもみろ。どうして邪魔をするだけの存在をワザワザ仮想敵にする必要がある? もし本当に邪魔をするだけが目的ならば、それこそなんでもいい。例えば巨大な石の塊を道の真ん中に置くとか」
「い…言われてみれば確かに…。じゃあ、もしかしてコイツは…」
「あぁ。この0P敵には、0P敵にしかない特別な役割があるのだろう」
「特別な…役割…」
ヒーローは…ガンダムは…どんな困難にも、どんな強大な敵にも立ち向かう。
己の拳を真っ赤に燃やし、『それでも』と言い続け、伊達じゃない力で皆を守る!
ならば…私のやることは一つしかない!
「お…おい…まさか…お前…!」
「その『まさか』だ。私はこいつを始末する」
「マ…マジかよっ!? お前、分かってんのかっ!? 今までの仮想敵とは比較にならないデカさなんだぞっ!? 他の奴らはもう逃げてる! こいつに何か特別な意味があるのは分かったけど、だからつって自分から立ち向かう必要はねぇって!!」
「いや…ある」
「え?」
「立ち向かう必要があるんだよ…切島鋭児郎」
きっと、他の会場にも同じように、この0P仮想敵が出て来てるんだろう。
そして、出久君も、勝己君も、必ずこいつに立ち向かおうとしている筈!
それなのに、ここで私だけ逃げたら女が廃る!
もう二度とガンダムになんてなれやしない!
だから…私は!
「逃げたければ、お前一人で逃げろ。私は残る」
「藤原…お前…!」
さーて…ここがトランザムの使い時ですかね~?
いっちょ気合を入れて…って…ん?
「俺は…逃げねぇ…!」
「切島鋭児郎…?」
「もう二度と…逃げてたまるかよ!!!」
おぉ…?
なんか知らんが切島君がやる気になっちょります。
いきなり、どした?
いきなり叫びたくなる、お年頃か?
「ここで逃げたら…俺は俺でなくなっちまう!! だから逃げねぇ!!」
お前はバーニィか。
最後に悲しいビデオメッセージとか残さないでよ?
私…絶対に号泣するから。
「なにより…女の子一人残して、男の俺が逃げるわけにはいかねぇだろうが!!!」
「女の子…私の事か?」
「当たり前だ! どれだけ腕っぷしが強くても、藤原が女の子であることには違いねぇだろうが!!」
おぉ~…すげ~…こんなセリフを素面で言える人間が、まだこの世に存在したとは…。
不覚にも少しだけ胸がキュンってしちゃったじゃないか。
「なら…好きにするがいい」
「おう! お言葉に甘えさせてもらうぜ!」
なんつーか…熱血系の男子が周囲にはいなかったから、なんか新鮮な感覚だわ。
こーゆーのも…うん…悪くないかも。
じゃあ…やりますか。
「藤原刹那…目標を駆逐する」