『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
三人が0P敵を撃破したとほぼ同時に、試験終了の合図が聞こえた。
全会場の受験生たちが動きを止め、切れ切れになりつつある息を整えながら戦果を確かめる。
そんな中、見事に最大の難関を突破して見せた三人はと言うと…。
「す…すっごーい!!! まさか、本当にあんな大きいのをぶっ飛ばして見せるだなんて!!!」
「あぁ…全くだ! まさか、この事を見越して、敢えて個性を温存していたのか!?」
「まぁ…そんな所かな…? ははは…」
個性の発動によって大きく腫れあがった右腕を庇いながら愛想笑いを浮かべる出久。
本当は痛くて痛くて泣き叫びたい程だったが、流石に今だけは歯を食いしばって何とか耐えた。
「しかし…大丈夫か? その腕は…」
「う…うん…思わず、限界以上に個性を使っちゃったみたいで…」
「そうか…無理もあるまい。あれ程に巨大な相手だったんだ。生半可な威力じゃ返り討ちに遭うのがオチ。もし俺が君の立場でも、同じように限界を超えた一撃を放っていただろう。例え、その結果として足が折れたとしても」
目の前で見た出久の雄姿にすっかり惚れ込んでしまったのか、先程から飯田の饒舌は止まる気配がない。
一方の麗日は、心配と歓喜の表情を何度も繰り返していた。
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勝己は勝己でまた、激しく深呼吸をしながらも、その顔はとても満足げだった。
「ヘヘ…どうだ…! やってやったぞ…クソが…!」
これまでの人生の中で放った最大級の一撃。
流石の彼も今回ばかりは疲れ果ててしまったようで、ぐったりとしながら地面に座り込んでいた。
そこへ、即席のパートナーとなっていた上鳴が物凄く嬉しそうな顔で駆け寄って来た。
「ば~く~ご~!!」
「おをっ!? なんだいきなり!」
「ちくしょう…おめーよぉ~…めっちゃくちゃカッコよかったじゃねぇかよコンチクショー!!!」
「たりめぇだ!! 俺はいつだってカッコいいに決まってんだろーが!!」
「すんげー爆発の威力だったしよぉ~! 見てみろよ! あの木端微塵になったデカブツ野郎の姿をよ!」
「あぁ…ちゃんと見えてんよ」
相当に凄まじい爆発だったのか、なんと0P敵の上半身が丸々消し飛んでいた。
それを見て、思わず勝己は自分の両手と0P敵の残骸を何度も交互に見る。
(これを…本当に俺がやったのか…)
口には決して出さないが、正直言って信じられない。
こんな爆発を出せたのは、今までに一度だって無かった。
火事場の馬鹿力と言ってしまえばそれまでだが、勝己はまた別の可能性を感じていた。
(俺は…強くなっている…! 確実に高みへと昇っている…! 今までは余り実感が湧いてこなかったがよ…これが努力の積み重ねの結果ってヤツか…!)
ここまで明確に自分の成長が目で見える形で実感出来れば、誰だって気分が高揚する。
人並み以上の向上心と自尊心を持つ勝己ならば、それはより一層だった。
「まぁ…テメェのアシストも悪くは無かった。あそこでテメェが野郎を足止めしたお陰で、俺の攻撃がクリーンヒットしたわけだしな」
「え…えぇ!? お前…そんな言葉も言えたのかよ…!?」
「人が素直に褒めてんだから、素直に受け取りがやれ!!! 殺すぞゴラァ!!!」
「す…すんませんしたぁ!!!」
一瞬だけデレたかのように見えて、結局はいつもの勝己だったのだった。
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す…すっげー…!
自分でやっといてアレだけど、マジであの超でっかいロボットを一刀両断しちゃったよ…!
しかも、私が持ってたのは真剣じゃなくて木刀だぜ?
極論言っちゃえば木の棒だぜ?
それで、この鉄の塊を真っ二つよ?
なにこれ普通に有り得無くね?
わ…私はアレか?
体と個性を鍛えすぎた結果、伝説の
目だけじゃなく、いつか髪すらも金色になっちゃうのか?
「ふ…藤原…お前…お前…!」
「切島鋭児郎…?」
およ? いきなりどした?
お腹でも空いたか?
「め…めっちゃくちゃ凄かったんだな…! 個性も凄かったけど…あの踏み込みも凄かった…!」
「そ…そうか」
もしかして…感動してる?
頬が赤くなってるし、心なしか目尻に涙が溜まってるような気がするし。
「つーか、もしかして藤原って剣道とかやってんのか?」
「やってるぞ。今は剣道四段だ」
「段位持ちかよ!? そりゃスゲェ筈だわ…色んなことが一発で納得出来ちまった…」
色んな事ってなんぞや。
そこのところを詳しく聞きたい。
「ところでよ…お前の個性って一体…? 全身が赤く光ってたけど…」
「私の個性の名は『トランザム』」
「トランザム?」
「能力は…『五分間だけ自分の全能力を100倍にする』…だ」
「ひゃ…100倍ぃぃっ!? なんじゃその超絶チート個性は!?」
「五分間だけだぞ? その後は一分間のインターバルを経て再使用が可能になる」
「たった一分間だけかよっ!? 幾ら何でも短すぎねぇかっ!?」
「最初は一時間だった。それを頑張って短くした。その代わり、一分間のインターバルの間は能力が半減してしまうが」
「が…頑張って短くしたって…。一分間の能力半減も、実際にお前の動きを見た俺からすれば、全くデメリットになってねぇ気がするんだが…」
「そうか?」
能力半分って結構大変だよ?
今でこそ少しは慣れてきたけど、最初は普通に風邪ひいたみたいになってたしね。
「はぁ~…俺…とんでもない奴とコンビを組んじまってたんだな…」
「そうでもない。お前の『硬化』の個性…それで奴の攻撃を受け止めてくれなければ、私は体勢を崩して攻撃を当てられなかったかもしれない。だからこれは、私とお前の二人で得た勝利だ」
「藤原…ったく…お前って奴はよ…!」
というわけで、協力の証に友情のシェイクハンド!
そっと手を差し出したら、切島くんも快く手を握り返してくれた。
うんうん。男女の友情はやっぱり成立するんだよ!
「ん? どうした?」
「い…いや…こんな風に女の子の手を触ったのって初めてだな~って思ってさ…」
切島くん…思ったよりも初心だった件。
逞しい体してる割には可愛い奴だな。
「これで…試験が終わったんだよな…」
「そうだな。後は静かに合否の通達が来るのを待つだけだ」
そう…確かに試験は終わった。
けど、これはあくまで通過点に過ぎない。
本当に大変なのはここからだ。
自分なりに滅茶苦茶に頑張ったつもりだけど…ちゃんと合格してますよーに!
神様! 仏様! イオリア・シュヘンベルグ様! どーかお願いします!
因みに、この後にリカバリーガールって言う、雄英の看護教諭のお婆ちゃんがやって来て皆の怪我を治してた。
私と切島くんは疲れただけだったから、ハリボーだけ貰ったけど。
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試験終了から一週間後。
私の元に雄英高校から一通の封筒が届いた。
間違いなく試験の合否に関するものだろうが…それはそれとして。
(何…この状況は…?)
現在、私がいるのはいつも通っている剣道場。
そこに私の身内とも言うべき人たちが大集合していた。
マリナママに、ママのジャーマネである根谷さん。
それから、師範代の石塚さんに、その息子さんや道場の皆も。
実は、封筒が届いた時に興奮&慌てまくったマリナママが、何故か根谷さんに連絡をして、根谷さんが『折角なら、刹那ちゃんが普段からお世話になってる人達全員で合否を確認しましょうよ!』的なことを言い出した結果…こうなりました。
「では…開くぞ」
ビリっと封筒の上部分を切り取ると、中からは書類の類ではなく、小さな機械が出てきた。
「こ…これは…?」
「もしかして、映像の投影機とかじゃないかしら?」
「投影機…」
試しに投影機と思わしき機械を道場の床に置くと、いきなりブンっと映像が飛び出してきた。
『んん~…私が投影された!!!』
「「「「オ…オールマイトッ!?」」」」
え? ちょ…なんでこの人が?
これって確かに雄英からの封筒…だよね?
『どうして私が投影されているか…きっと藤原少女は疑問に感じているんじゃないかな?』
その通りだよ!
いいから早く説明プリーズ!!
『これは緑谷少年や爆豪少年の投影機でも言ってるんだが…諸々の手続きで思った以上に時間が掛かってしまってね! 連絡が出来なくて本当に済まない!』
私は、その『諸々』の部分が知りたいんですけど!?
相変わらず勿体ぶった言い方をする人だなぁ!
『今だからこそ言うのだが、実は私が君たちの街に訪れていたのは、今年の春から雄英高校の教師として赴任することになったからなんだ』
「……は?」
オールマイトが…教師?
えっと…ドッキリ?
他の皆は驚きの余り、無言で完全に固まってるし。
『え? 何? また巻きでお願いします? それ、緑谷少年や爆豪少年の時にも言わなかった? 話が無駄に長い? 後がつかえてるから? う~ん…仕方がない…』
なんか急にテレビ番組の舞台裏みたいな場面になったんだけど…。
やっぱり、オールマイトはどこか抜けてる部分があるなー…。
『ならば、まずは君の点数から発表していこうか!』
おぉ…そこからか。
いきなり合否の発表とかじゃないんだ。
ちゃんと段階は踏んでるんだな。
『藤原刹那!
あれ? てっきり77ぐらいと思ってたけど…計算間違えたかな?
『本来は77Pだったんだけど、実は君が0P敵を倒した直後、偶然にも近くにいた1P敵がその残骸に潰されてね! それが丁度、試験終了とほぼ同時だったんだ!』
そうだったんだ…全く気が付かなかったでござる。
『少しだけ審議があったんだけど、どっちにしても結果は変わらないからって、特別に1P追加したんだよ!』
変わらんのかい。
その1Pが運命を分ける場合もあるでしょうに。
『そして…先の入試で我々が見ていたのは敵Pのみにあらず!! 君は気付いていたかどうかは知らないが…実は敵Pの他に隠し要素としてのポイントも存在していたのさ!』
あー…やーっぱり、あったのかー…。
あくまで予想ではあったけど…流石は雄英…汚い!!
『その名も
レスキューP…!
そんなのがあったのか…。
『正しき行為をした者を排斥するヒーロー科などあってたまるか!! 綺麗事上等!! 我々ヒーローは命を賭して綺麗事を実践するのが仕事だ!!』
綺麗事上等…か。
あぁ…その通りだ…!
ガンダムに選ばれた者達は、誰しもがその『綺麗事』を貫き通した者達だ!
戦争という過酷な現実の中でも、己の中にある信念と言う名の『綺麗事』を決して見失わなかった者!!
それこそが真のガンダムマイスターだ!!
『君は、あの過酷な試験の最中にあっても、決して自分の成すべきことを見失わなかった! それどころか、ライバルである筈の者と友情を育み、一緒に強大な敵へと立ち向かった!! 君たち二人が見せてくれた勇気と友情に、一体どれだけの者達が心振るわされたか!! それは私達も同じ!! よって…』
よって…?
『藤原刹那…レスキューP…62P!! 合計140P!! 文句なしの大合格だ!!』
お…おぉ…おおぉ…!
ご…合格…した…?
『おめでとう…藤原少女!!
「「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」
おごご…皆が一斉に私に抱き着いて来て…く…くるじい…!
息が出来ないでござる…助けて宮野さん…。
『因みに、僅差ではあるけど君が今年のトップ合格者…つまり首席だ!! 私が見込んだ通り、やっぱり君は只者じゃなかったな!! 雄英の校舎で会えるのを楽しみに待ってるぜ!!』
マ…マジか…しかも首席かよ…!
こりゃ…また勝己君が絶対に絡んでくるなぁ…。
そういや、あの二人はどうだったんだろう…後で電話とかで聞けるかな…?
それと、切島君も。
実は彼とも試験の時に番号交換してたりして。
こうして、私は無事に高校受験を合格と言う最高の結果で終えることが出来たのだった。