『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
雄英高校…もとい、オールマイトからの合格発表があった次の日。
私達三人は通学路を歩きながら昨日の結果をお互いに発表し合っていた。
「なら、二人とも無事に合格できたんだな」
「たりめぇだ。こんぐらい余裕だわ」
「僕は何とかって感じかな…。一応、敵Pはそれなりに稼げたけど、例のレスキューPが最後の後押しをしてくれた感じかな」
「成る程な…」
もしかしたら、あのレスキューPってのは、戦闘能力が低い個性持ちに対する、一種の救済処置だったのかもしれない。
例え戦闘力が低くても、それだけが全てじゃないよー…的な?
でも、それを最初から言っていたら、敵P稼ぎをそっちのけにする受験生も確実に出てくる。
だから敢えて隠しておいたんだろうな。
もしくは、私達も考察力を試したとかも有り得る。
「そういや刹那…テメェ、敵Pはどれぐらいだったんだ」
「78Pだった。勝己はどうだったんだ?」
「…77Pだ。クソッ…一点差かよ…!」
「私の場合は、あの0P敵を倒した際に、偶然にもその残骸に付近にいた1P仮想敵が巻き込まれた結果なのだがな」
「それでも、テメェの方が上なのは事実だ。運も実力のうちって言うだろうが」
「…そうかもな」
運も実力のうち…か。
少し前までの彼だったら、確実にここで癇癪を起していただろうに…どうやら、私の知らない所で勝己君は心の方も大きく成長しているようだ。
「僕たちには結果発表されたけど、学校側にももう僕たち三人が合格したことって伝わってるのかな?」
「さぁな。雄英だって試験直後で色々と忙しいだろうし、流石に昨日の内に伝えたってことはねぇんじゃねぇか」
「だろうな。考えられるとしたら、今日の朝一とかだろう」
ウチの担任って無駄にテンションが高い所があるからなぁ…。
妙なことになってなきゃいいんだけど…。
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朝のホームルーム。
私が建てたフラグは見事なまでに無事に回収された。
「皆よく聞け!! 今日は実に素晴らしい発表がある!!」
すっげー興奮してるー…。
血圧上がりすぎて、ぶっ倒れたりするなよ…?
「我が校から雄英高校ヒーロー科を受験した三人だが…なんと! 無事に全員合格したそうだ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
い…言いやがった…あろうことが皆の目の前で…!
一体どんだけ興奮してるんだよ先生…。
「三人ってことはつまり…」
「そう! 爆豪に藤原…そして、あの緑谷も合格した!! あの最難関と言われている高校に! 我が校から! 我がクラスから! 三人も合格者が出た!! 俺は…俺は…俺はぁぁ…!」
おーお…遂には人目も憚らずに泣き出したよ、この人…。
嬉しいのか、興奮してるのか、感動してるのか…どれか一つに絞りなー。
「涙で曇って前が見えねぇ…! 教師生活20年…こんなに嬉しいことは無い!! お前たち三人は俺の誇りだ!! 本当に合格おめでとう!!!」
心の底から私たちの合格を喜んでくれているのはよーく分かったけど…あんたって教師になって20周年記念なのかい。
そっちもそっちで中々にめでたいことなんじゃないの?
言ってくれれば普通に私達でお祝いしたのに。
因みに、剣道場の方だけど…あっちは合格発表があったその日に師範代から直々に私に対して道場を辞める儀礼的なことをして、正式に辞めてきた。
と言っても、気が向いたらいつでも遊びに来ていいとも言ってくれたので、そこまで気にする必要はない。
ま、流石にこの時代にそこまで堅苦しいことはしないわな。
この日から卒業式までの間、私達三人は折寺中学の有名人となった。
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春…それは始まりの季節でもあり、出会いの季節でもある。
今年から通算二度目となる高校生活が始まる。
真新しい雄英の制服に身を包み、私は鞄を手に取る。
「とてもよく似合ってるわよ、刹那」
「ありがとう…母さん」
うーん…頭じゃ理解していても、やっぱり少し小恥ずかしいですにゃ~…。
遂に私が天下のJKになるとは…感慨深いと言うか、なんと言うか…。
「中学の制服は、ちゃんとアイロンをかけて仕舞っておきましょうね。もう着る機会はないけど、思い出の品ではあるから」
「そうだな…ボタンは一つも無いが」
「あはは…本当に凄かったわよね…卒業式は…」
卒業式の日…勝己君や出久君は特に何もなかったけど、なんでか私の所には女子生徒がめっちゃ殺到して、私に向かって『先輩のボタンください!』って言ってきた。
そーゆーのは普通、高校の卒業式でやるもんなんじゃないの?
中学最後の日ってのもあったし、こんな私の事を慕ってくれてる子達の願いを無下には出来なかったので仕方なく、上着として着ていた学校指定のカーディガンのボタンをあげることに。
「まさか、正面のボタンだけでなく、袖のボタン…挙句の果ては予備のボタンすら渡す羽目になるとは…」
「それだけ刹那が人気者だったって証拠よ。私も鼻高々だったわ」
「そ…そうか…」
こっちとしては、一気に寂しくなったカーディガンに悲しくなったけど。
あれ…割と気に入ってたんだけどなぁ…。
これからもプライベートでは上に着ようと思ってたのに…。
「それじゃあ…そろそろ行ってくる」
「えぇ…いってらっしゃい。刹那」
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途中で勝己君や出久君と合流をし、三人で一緒に雄英まで向かうことに。
これからは、この道を一緒に行くことになるんだなぁ…地味に感動。
「改めて見ると…」
「本当に大きいな…」
「だな…」
これが私たちのこれから通う学校…。
パッと見は学校と言うよりは会社に近いけど、でも学校なんだよな。
「…行くか」
「だな。確か、俺らは三人揃って同じクラスだったな」
「その筈だよ。1年A組」
ヒーロー科は二クラスあって、他には普通科が二クラス、経済科やサポート科など、多数の学科が存在しているのだとか。
サポート科…実は少し覗いてみたい場所の一つだったり。
一分間の能力半減を補えるアイテムがあったりしたら、少し借りて試してみたい。
私たちは事前に貰っていたパンフレットの学校案内地図を頼りに教室を探索。
私たちの中学とは比較にならないレベルの広さに驚きながら探索し、10分後ぐらいにようやく見つけた。
「なんつー広さだ…。おいデク…迷子とかになるんじゃねぇぞ」
「で…出来るだけ努力するよ…」
「何度も行き来していれば嫌でも覚えるだろう。要は慣れだ」
なんて言ってるけど、実は私も余り自信が無かったり…。
だって、こんなにもだだっ広いなんて想像もしてなかったんだも~ん!
こんなんじゃ、トイレ行く度に迷子になっちゃうよ~!
「あったぞ。ここだ」
「ドアもデケェな。バリアフリーって奴か」
「世の中には色んな個性の人がいるからね。それに配慮してるんだろうね」
そっか…町内にも凄く体の大きな個性の人が何人かいたっけ。
そーゆー人たちの事を考えたのね。
「さて…これから共に過ごすクラスメイトの顔を拝むとしようか」
私が代表してドアを開けると、そこにはなんと見たことのある顔が並んでいた。
「おぉ! 藤原!!」
「爆豪じゃあねぇか!」
「「緑谷くん!!」」
「切島鋭児郎か…?」
「テメェは…あの時のバッテリー野郎…」
「飯田君に麗日さん!」
「「「「「「「え?」」」」」」」
なんか…私たちの知り合いが勢揃いしてる…感じ?
何この偶然…。
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よもや、こんな形で切島君と再会するとは思わなかった。
いや、ヒーロー科は二クラスだから、確率的には2分の1なんだけど。
「また会ったな! 藤原!!」
「あ…あぁ…そうだな…」
また彼と会えたのは純粋に嬉しいけどさ…けど…。
「…その髪はどうした?」
「あ? これ?」
試験の時の黒髪はどこへやら。
見事なまでに真っ赤に染まり、更にはめっちゃ逆立ってます。
「何か悩みがあるのなら相談に乗るぞ」
「いやいやいや! そんなんじゃねぇから! 単なる高校デビューなだけだから!」
「そうなのか…?」
高校デビューって…そんなんだったっけ?
私はしたことが無いから分かりませーん。
「おいおい爆豪~! お前、こんな美人と知り合いだったのかよ~! 紹介してくれよ~!」
「うっせぇ!! 俺と刹那は知り合いじゃなくて、幼馴染だクソが!!」
「幼馴染!? それ知り合いよりもランク高いじゃねぇか!」
「あと…刹那になんかしたら容赦しねぇぞ…! 覚えとけ…このピ〇チュウ野郎…!」
「〇カチュウ野郎!? そんなん初めて言われたんだけどっ!?」
勝己君は勝己君で独自に友達を作ってたんだな~。
なんかチャラそうだけど、悪い子じゃなさそうだ。
あの勝己君が普通に話してるのがいい証拠だ。
「君もちゃんと合格していたんだな! おめでとう!」
「本当に良かった~! しかも、同じクラスだなんて!」
「二人も合格してたんだね! よかった…」
そして、出久君も実技試験で友達が出来たみたい。
しかも、そのうちの一人はあの時、校門で出久君を助けてくれた女の子じゃん。
いや~…春ですにゃ~。
「あ! そっちの子は!」
お? こっちに来た。
私とあの子が会ったのは一回だけだった筈だけど…まさか覚えてたのか?
「また会ったね! 君も合格してたんだ!」
「そっちもな。藤原刹那だ。よろしく」
「私は麗日お茶子! よろしくね! 刹那ちゃん!」
なんて眩しい女の子なんだ…!
あぁ…これまでの人生の殆どを剣道と個性訓練に注いできた私には眩しすぎる…!
これが陽キャという存在なのか…!
「そうか…君か! 前に緑谷君が言っていた『物凄い個性を持つ女の子』というのは!」
おぉ…今度は講堂での説明会の時に手を挙げていた眼鏡委員長がやって来た。
こっちの彼は、かなり生真面目そうだなぁ…。
「ぼ…俺は飯田天哉! よろしく頼むよ!」
「藤原刹那だ。こちらこそ、よろしく」
真面目過ぎて融通が利かなそうだけど…かといって悪い奴でもなさそう。
あの出久君が心を許してる時点でお察しだけどね。
「んで! 俺は上鳴電気! よろしくな藤原さん!!」
「よ…よろしく…」
まだ何も言ってないのに、いきなり来た…。
こーゆーのは少し苦手だ…。
「こーのー…電池野郎が…俺の話を聞いてなかったんかクソがぁぁっ!!」
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁっ!? 頭グリグリは勘弁~!!!」
か…勝己君が上鳴君に『みさえのゲンコツグリグリ』をしてる…これは痛そうだ…。
「刹那はなぁ…テメェみたいにグイグイ来る奴が苦手なんだよ!! 覚えとけ!!!」
「覚えました! 覚えましたから! もう離して~!!」
なんだろう…今の勝己君にエプロンの幻影が見えた気がする…。
まぁ実際に彼ってば料理が超上手だしなぁ~。
よく私も御馳走になりました。
「げ…言動は乱暴だが…面倒見が良さそうだな…彼は…」
「っていうか、完全に刹那ちゃんのボディーガードになってない?」
「あはは…昔から、かっちゃんは刹那ちゃんの事になると、凄く敏感に反応するからなぁ…」
いやはや…高校になっても私たちの関係は余り変わりそうにないですなぁ…。
それならそれで、こっちも気が楽なんだけどね。
「お友達ごっこがしたいのなら他所へ行け」
「「「「「「「え?」」」」」」」
いきなり背後から声が?
急いで振り向くと、そこには寝袋を着たまま廊下に寝転がっている無精髭の男の人が。
口には例の0秒チャージなゼリーがあるけど…まさか、あれが朝食だったりする?
「ここは…ヒーロー科だぞ」
喋りながらゼリー食ってるし…。
どんだけゼリー好きやねん。
「ハイ。全員が静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」
あ…寝袋から出てきた。
首に白いマフラーみたいのを巻いてるけど、それ以外は文字通り全身真っ黒だ。
「ねぇ…かっちゃん…この人って…」
「教師…だろうな…」
ってことは…この人もプロのヒーローってことなのか…。
今の所は威厳も何も感じないけど。
「このクラスの担任を務める相澤消太だ。よろしく」
この人が担任か…これまた別の意味で癖が強そうな人だな…。
って、寝袋の中から何か取り出したし。
「では早速だが…お前たち全員、この体操服を着てグラウンドに集合な。急げよ」
…………は?
グラウンドに集合…?
ど…どゆこと?