『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』   作:とんこつラーメン

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未来に向かってトランザム!

 さて、私の個性がトランザム亜種みたいなものだと言うことが判明したわけだが、ここからやることは主に三つ。

 一つ、今から地道に体を鍛えて『来るべき対話』に向けて準備をすること。

 二つ、今から地道に個性も鍛えて、個性のインターバルを一時間から1分にする。

 三つ、刹那らしく、剣の腕も磨いておくこと。

 

 一つ目に関しては今からでもやろうと思えば出来る…が、今は子供の身。

 これからの成長の事を考えると無茶は出来ない。

 なので、ここは地道な努力で最強チート野郎に到達した、我らがヒーロー『ハゲマント』さんに倣って、腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニング10km…と行きたいが、流石に幼女の体ではそれすらも無謀の極み。

 なので、まずは5…いや、10回ずつから始めよう。

 ランニングも短距離からで。

 成長と共に回数を増やしていけばいいだろう。

 小学校卒業頃には100回にしてもいいかもな。

 

 二つ目の個性の鍛錬も同じ要領だな。

 でも、こっちはマジで何の知識もノウハウもない。

 それ系の本でも家にあればよかったのだが、生憎と一冊も無い。

 あるのは音楽系の本ばかり。

 こればっかりは流石に仕方がない。

 だって、マリナママは争い事とは最も無縁とも言うべき人物の一人なのだから。

 他に該当するのは、リリーナ姫とか、クーデリアとかじゃないかな。

 なので、とにかくマリナママに隠れてこっそりと個性を使いまくることにした。

 個性は体の一部であり、体の延長線上の存在…とは医者先生の言葉だが、これが事実なら使えば使うほどに鍛えられるということなのではないだろうか?

 丁度、腕を鍛えれば腕力が、足を鍛えれば脚力が強くなるように。

 これに関しては、今は完全にダメ元だな。

 もっと大きくなったら、ちゃんと正式な方法を調べよう。

 

 三つ目に関しても今は無理。

 幾ら何でもちっちゃすぎるしね。

 なので、なんとかマリナママを説得し、小学校に入ったら剣道教室に通させてくれることになった。

 頼んだ後にお金の心配などが頭をよぎったのだが、どうやらウチはそんなに貧乏ってわけじゃないみたい。

 この世界のマリナママは普通に音楽の才能があるらしく、それでかなりの額を稼いでいるとのこと。

 後で知ったことなのだが、実はこのママ…しれっとCDアルバムまで出してました。

 しかも普通にミリオンヒット。

 印税でガッポガポじゃあねぇか。

 こんなマリナママに誰がした。

 いや、本人か。

 

 とまぁ、こんな感じで一先ずの予定が決定。

 そんなことを考えながら、今日も私は自分の部屋で腕立て伏せ10回をしているのでした。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 四歳ともなれば、当然だが幼稚園に通う。

 私個人としては人生二度目の幼稚園児体験になるわけで。

 刹那プレイをすると決めた以上、幼女状態でもクールに決めなくては。

 精神年齢ピー歳で幼稚園児プレイなんてキッツー! なんて思ってはいけない。

 真のガンダムマイスターは幼稚園児も完璧にこなすのだ。

 

 で、今は何をしているのかと言うと…。

 

「その辺でやめておけ。爆豪勝己」

 

 幼稚園の庭のど真ん中にて、ツンツン頭のいじめっ子から、もじゃもじゃ頭のいじめられっ子を庇っている真っ最中です。

 

「んだテメェ!! 邪魔すんじゃねぇぞクソが!!」

 

 んー…幼稚園児なのに、なんつー口の悪さ。

 どんな育ち方をすれば、この歳でここまで荒くれるんだ?

 

「どうして、お前がこいつを目の敵にするのかは分からないが、彼は何もしていない。一発二発殴る程度ならばかろうじて容認するが、個性を使おうとするのであれば話は別だ」

「るせぇ!! 無個性の分際で生意気言う奴には、これぐらいが丁度いいんだよ!!」

「無個性…?」

 

 え? この子って無個性なの?

 確か、前にニュースで見た話じゃ、無個性って全人類の約二割程度だって…。

 そう考えると、逆に彼って超レアケースじゃね?

 

「例え無個性であろうとなかろうと、それは決して個性を使って他人に暴力を振るっていい理由にはなりえない」

「テメェ…なんでそんなにもデクの事を庇いやがる…! もしかして、テメェも無個性なんじゃねぇのかっ!? あぁっ!?」

 

 おっと?

 彼の『無個性』発言で一気に私にも視線が集まりましたよ?

 

「残念だが、私は無個性じゃない。ちゃんと個性がある」

「だったら見せてみろや!! どーせ、クソみたいな没個性に決まってんけどな!!」

「断る。まだ練習不足で危険すぎる。と言うか、ここでは個性は使えない。そういう決まりだ」

「なんて言って、本当は無個性なのを隠してるだけだろうが!!!」

 

 はぁ~…ったく…。

 あー言えばこう言う…。

 仕方がない…後で私一人が先生に怒られればいいか…。

 

「来い」

「あぁ?」

「来い…と言っている。私の個性を少しだけ見せてやる」

「上等だ!! そのクソ生意気な顔を泣き顔に変えてやんよっ!! このクソ女が!!」

「私にはちゃんと藤原刹那と言う名前がある。断じてクソ女と言う名前ではない」

「るせぇっつってんだよっ!!!」

 

 おわ…更に怒ってるし。

 これ、普通の幼稚園児なら確実に泣きまくってるな。

 実際に周りの子たちは完全に泣きべそかいてるし。

 

「くらいやがれぇぇっ!!!」

「む…」

 

 爆豪君の手から爆炎のようなものが出てる…?

 彼の個性は爆発系なのか…。

 流石に個性発動状態で暴力は振るえないから…こうだな。

 取り敢えず、小さくボソっとな。

 

「…トランザム…発動…」

 

 私の体が真っ赤に燃え…てはいないけど、光って唸って大騒ぎーってか。

 この世界のどこかに流派東方不敗の伝承者とかいないだろうか。

 

 なんてアホなことを考えてたら、爆豪くんの爆発が私の顔面に直撃。

 耳がキーンってするなー。

 

「ヘヘ…どう…だ…!?」

「もう満足したか?」

 

 残念ながら私は無傷です。

 МSのトランザムとは違って、生身のトランザムは身体能力の向上。

 つまり、防御力もアホみたいに上がっているのだ。

 なんせ100倍ですからね。

 トランザム発動中は、2tトラックにぶつかってもビクともしない…は流石に言い過ぎか?

 とにかく、めっちゃ固くもなっているのですよ三木さん!!

 

「なんで…効いてねぇ…!?」

「それは簡単だ」

 

 トランザムを利用した、なんちゃって瞬歩(笑)を使って、爆豪君の背後に移動。

 ちゃんと赤い残像のおまけつき。

 そして、彼の耳元でロリっ子刹那ちゃんのASMR。

 

「私の個性は、発動した瞬間に自分の全能力を100倍にまで引き上げる」

「ひゃ…!?」

「つまり、その程度の爆発ではかすり傷すらつかないということだ」

 

 私の言葉にめちゃくちゃ驚きまくって、信じられないものを見る目でこっちを見つめ、すんごい冷や汗をかいてる。

 少しビビらせすぎたかな?

 

「大丈夫か? 緑谷出久」

「う…うん…ありがとう…刹那ちゃん…」

「気にするな。当然のことをしただけだ」

 

 例え、そこにどんな理由があろうとも、いじめはダメゼッタイ。

 特に、個性を使ったいじめなんて論外中の論外。

 …私も前世の子供の頃は苛めに遭ってたからね…割と普通に許せないんだよね。

 さて、トランザムが解除されるまで、どこか適当な所で大人しくして…。

 

「さっきの刹那ちゃん…まるでヒーローみたいだった…」

「ヒーロー…?」

「うん…凄くカッコよかったよ」

「…そうか」

 

 ヒーロー…ヒーローね…。

 ガンダムマイスターはヒーローとは縁遠い存在なんだけどな。

 寧ろ、劇場版までの世間での認識は完全にテロリストだったし。

 アロウズの蛮行が明らかになった瞬間、一気に世界を救ったヒーローになってたけど。

 

「爆豪勝己。これに懲りたらもう……ん?」

「かっちゃんなら、さっきどっかに行っちゃったよ…?」

「…そうか」

 

 脅かしすぎてゴメンッて謝ろうと思ってたんだけど…今はいいか。

 また明日にでも、ちゃんと謝ることにしよう。

 

 余談だが、この後に騒ぎを聞きつけてやって来た先生にこっ酷く叱られた。

 一応、緑谷くんが擁護してくれたので事無きを得たが。

 その後、爆豪くんのお母さんが幼稚園にやって来て、彼の頭を無理矢理下げさせながら謝罪してきて、同じように幼稚園に呼ばれたマリナママも何度も頭を下げて謝っていた。

 ちゃんと事情を聞かされたマリナママから怒られることは無かったが、それでも申し訳ないことをしたと猛省した。

 こんなことが二度とないように、これからもっと頑張らないと…!

 

 この時の出来事が切っ掛けとなり、私と緑谷くん、そして爆豪くんとの奇妙な三角関係が始まった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 小・学・校・入・学!!

 と言うことで早速、私は剣道場に通うことに。

 流石に近所にはなく、隣町にある道場に通うことにした。

 と言っても、そこまで距離があるわけでもなく、一人でも十分に帰ってこれる場所にある。

 こっちとしては、行き帰りにランニングも出来るから一石二鳥なんだけどね。

 因みに個性の成長は順調に進み、1時間あったインターバルが、早くも50分ぐらいに縮まった。

 これを例の医者先生に教えた時は、目をひん剥いて驚きまくってた。

 まさか、たった三年で10分も短くなるとは想像もしていなかったとか。

 

 これまたもう一つ因みになんだけど、何故か緑谷くんと爆豪君と同じ小学校で、同じクラスになりました。

 緑谷君とは良き友達、爆豪くんは何かある度に私に突っかかって勝負を申し込んでくる。

 その度に軽く捻って撃退してるんだけど。

 どれだけ運動神経がよくても、鍛えている分は私の方が上だからね。

 勿論、ちゃんと勉強もやってるよ?

 前世の知識だけを頼りにしちゃいけないからね。

 おさらいのつもりで再度勉強をやっちょります。

 お陰でテストじゃ普通に100点を取ってしまう。

 ちゃんと加減をしようと思ってはいるんだけど、気が付いた時には自然と全部の答えを埋めちゃってるんだよなぁ…。

 もう殆ど条件反射だよな…これ。

 地獄のような受験戦争を経験したが故に悲しき定め…しくしく。

 マリナママにはめっちゃ喜ばれて、それだけが救いだけど。

 

 そんなこんなで今日も今日とて剣道場の帰りでござーい。

 

「ふっ…ふっ…ふっ…ふっ…ん?」

 

 ランニングをしながら帰路についていると、よく子供たちが遊んでいる公園の前を通りかかる。

 すると、そこにはもう飽きる程見た組み合わせが。

 

「緑谷出久。爆豪勝己。そこで何をしている?」

「あ…刹那ちゃん…」

「チッ…」

 

 あ…爆豪君から思い切り目を逸らされた。

 流石にこれは地味にショック。

 なんとなく、根は悪い奴には見えないから、出来れば彼とも仲良くしたいんだけどなぁ…。

 幼稚園の時の一件が、まだ尾を引いてるのかしらん?

 

「…行くぞ」

「え? ちょ…おい!?」

「ま…待ってよ~!」

 

 一緒にいた指の伸びてる子と、翼の生えたデブっ子を連れて帰ってしまった。

 残されたのは緑谷くんと私だけ。

 

「何かあったのか?」

「ううん…何でもないよ。色々と怒鳴られたりはするけど、本当にそれだけで…叩かれたりとかはしてないから…」

「…そうか。ならいい」

 

 どうにも彼は誤魔化すのが下手っぽいからなぁ…。

 チラっと全身を見てみると、少し汚れているようにも見える。

 

「あ…これ? これは…その…さっきまでプロレスごっこしてたから…はは…」

「…そうか」

 

 プロレスごっこ…ね。

 それ、子供の頃はまだいいけど、大人になったら絶対に使っちゃ駄目だからね。

 完全に別の意味になるから。

 

「刹那ちゃんは剣道の帰り?」

「あぁ。帰るついでにランニングをしていた」

「そっか…凄いなぁ…」

 

 ここで『凄い』って感想が出る辺り、彼も彼である意味異常なんだろう。

 同じ剣道場に通っている他の小学生は、私を見て普通にドン引きしてるしな。

 やっぱ、気合を入れすぎて中学生や高校生に交じって練習をしているのが拙かったのだろうか。

 

「そうだ! 前から刹那ちゃんに聞きたいことが有ったんだけど…!」

「聞きたいこと?」

「そう! 刹那ちゃんの個性なんだけど、あれって何かデメリットがあったりするのかな?」

「そうだな…あるにはある」

「どんなっ!?」

「まず、発動時間は五分間だけだ」

「五分間…でも、能力100倍ってことを考えたら、それでも十分すぎる程に破格だよな…」

 

 なんか急にブツブツと言いだしたし…ちょっと怖い。

 彼…こんな一面があったんだな…。

 まだ小学生ながら、立派なヒーローオタクってことか?

 

「あと、五分間使い切ったら、次に使うには一時間のインターバルが必要になる」

「一時間…流石に長いね…」

「昔はな。今は違う」

「そうなの!?」

「あぁ。密かに個性の特訓を行っていてな。それで1時間から50分にまで縮まった」

「10分も!? 凄いや! たった10分! されど10分! その差は凄く大きいよ!」

「私もそう思う。けど、これだけで満足はしない。もっと時間を短くしてみせるつもりだ」

「刹那ちゃんなら、きっと出来るよ! でも、そうなると刹那ちゃんの個性って、とんでもないことになるんじゃ…? もしも、これからも短くなっていって、それこそ10分以内とかになったら…オールマイトに匹敵するようになるんじゃ…」

 

 オールマイト…あのやたらとテレビに出まくってる、マッチョボディのおっさんか。

 あの人が今のナンバー1ヒーローなんだよな。

 凄い人気になって、少しテレビを付ければオールマイトを見ない日は無い。

 グッズの数も凄いしな。

 実際、緑谷君の全身はオールマイトグッズ一色だし。

 オールマイトのシャツに、ズボンに、靴に。

 君はオールマイト村の住人かっつーの。

 

「あー…もういいか? そろそろ帰らないと母さんを心配させてしまう…」

「あ!? ご…ゴメン! つい夢中になって話し込んじゃって…」

「別に気にしてない。では、また明日学校で」

「う…うん…また明日…」

 

 やっと解放された…ふぅ…。

 私も自分が重度のガンダムオタクであると言う自覚はあるけど、あれほどじゃないとは思う…と信じたい。

 ある意味、緑谷君の存在は反面教師になるなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

  

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