『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
入学早々に言い渡された謎の指令。
まさか、入学式すらもせずに突如として体操服に着替えてからのグラウンドに集合とは。
流石は雄英…なのか?
とにかく、色んな意味でぶっ飛んでいる。
そんなわけで、担任サマのご命令には逆らえないので、私たちは仕方なく更衣室まで行き体操服へと着替え、言われるがままにグラウンドへと集合するのであった。
着替えている最中、女子更衣室の視線が私に集中していたのは気のせいだと信じたい。
た…確かに筋肉がついているとは思うけど…そこまで変じゃなかったよね?
べ…別に細マッチョな女子高生がいてもいいじゃない!
「「「「「個性把握テストォ!?」」」」」
はい。
早くもタイトル回収、お疲れさまでした。
グラウンドに出ての有難い一言目は『今から個性把握テストをするぞ』でした。
なんて素晴らしいんでしょ。
感動しすぎて涙が出そうだわ。
「にゅ…入学式やガイダンスとかは!? 無いんですか!?」
「無い」
「無いのっ!?」
無いんだ…。
お茶子ちゃんの訴えを一刀両断かよ。
「本気でヒーローになりたいんなら、そんな悠長で呑気な行事なんぞに出ている暇なんて微塵もねぇよ」
わぉ…なんて厳しいお言葉ですこと。
けど…これだけは少し分かる気がする。
幾ら雄英が特殊な学校とはいえ、ここが学校法人であることには変わらない。
一年間の授業量はちゃんと決められているし、その範囲で先生たちは私達を少しでも立派なで一人前のヒーローに育て上げなくてはいけない。
ならば、入学式などもカットして、その時間を研鑽に使うと言うのは納得出来る。
「お前たちが入学した雄英高校は『自由』な校風こそが売り文句。それは、俺達『教師側』とて決して例外じゃない」
自由な校風…つまりフリーダムですな!
ストライクフリーダムですな!
ライジングフリーダムですな!
マイティストライクフリーダムですな!!
「ソフトボール投げに立ち幅跳び。50m走に持久走。握力に反復横跳び。上体起こしに長座体前屈。お前たちも中学の頃からやって来ている筈だろう? 個性禁止の体力テストってやつを」
やったねー…めーっちゃやったねー。
私としてはトランザム使用時の目安になるから、そこそこ有意義な時間だったけど。
「日本は未だに画一的な記録を取って平均値ってのを作り上げ続けている。全く以て非合理的だ。まぁ…あれだ。文部科学省の怠慢って奴だな」
いや…私たちに今の日本政府に対する愚痴を言われましてもね…。
ほら、皆して顔がポカーンってなってるし。
「藤原。お前…中学の時のソフトボール投げの最高記録はどれぐらいだった?」
「…76m」
「…女子にしては凄いな」
いきなり名指しで呼ばれた挙句、いきなり褒められたのですが。
いや…褒められたんだよね?
「じゃあ、今から個性を使ってソフトボール投げをやってみろ。その円から出なきゃ何をしても構わない」
む? 今の言葉…聞きました奥さん?
「…念のために聞いておきたい。本当に
「そう言った。早くしろ。勿論、全力でな」
「…了解した」
言ったな~?
私はちゃんと聞き逃さなかったからな~?
言質は取ったぞ~?
てなわけで、円の場所までテクテクと。
「ね…ねぇ…緑谷くん? 刹那ちゃんの個性って、どんなのなの?」
「そうだな。俺も気になる」
「…見てれば分かるよ」
はいそこー…ちゃんと聞こえてるぞー。
出久くんも、面倒くさいからって説明を放棄しなーい。
「刹那が個性を使った状態でのソフトボール投げ…か。ククク…こいつらの驚く顔が目に浮かぶぜ…!」
んでもって、勝己くんは悪い顔になってますぞー。
気持ちは凄ーく分かるけどね。
「では…トランザム発動!!」
体の奥底から溢れ出る力の本流!
全身が深紅に輝き、自分こそがガンダムであると実感出来る瞬間!
「出た…! 藤原のトランザム…!」
そっか。
切島君はもう既に私の個性を見てるんだったね。
んじゃ、描写はされてないけど、さっきしれっと投げ渡されてたボールを軽く握りしめてか~ら~の~?
「…………」
そのまま手から普通に落とす。
そして、すぐに右足を大きく振り被って…。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ぶっ壊す程にシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥト!!!!!
壊れるなよー…ボールちゃんよ!!!
「「「「「まさかのキック―――――――――!!!???」」」」」
ちゃんと芯に入った…!
お陰で、一瞬で見えなくなるほどに遠くまでボールは飛んでいった。
心なしか『キラーン』って擬音まで聞こえた気がする。
「ふぅ…何をしてもいいと言われたので、足を使わせて貰った。文句は無いだろう?」
「当然だ。俺は一言も『足を使ってはいけない』とは言っていない。それに、本気で記録を出したいのならば足を使うのは合理的だ。足は腕の三倍の力があると言われているからな」
ほぉ~…意外と話が分かる先生だった。
合理的と言いながらも、柔軟性はちゃんとあるみたい。
「因みに記録は…測定不能だな。成る程…伊達に、あの0P敵を木刀で真っ二つにしただけはあるってことか。どこまで飛んで行ったのか見当もつかん。仕方がないので、藤原の記録は『∞』ということにしておく」
「…弁償か?」
「しなくていい。こうなることは俺も雄英側も承知の上だ」
「そうか」
よかったー…弁償しなくていいってさ。
入学早々、マリナママに迷惑を掛けなくて済んでよかったでござるよ三木さん。
「い…今の…何…? 刹那ちゃんの体が赤く光った瞬間に凄いパワーアップしたんだけど…」
「増強系の個性か…! だが、それにしても強すぎる…! あれは一体…?」
「…今のが刹那ちゃんの個性の『トランザム』だよ」
「「トランザム?」」
お茶子ちゃんと飯田君が揃って小首傾げちょる。
なんかちょっと面白い。
「簡単に言うと、五分間だけ全身体能力を今の100倍にすることが出来るんだよ」
「「ひゃ…100倍っ!?」」
「うん。そして、再使用には一分間のインターバルが必要で、その間は逆に身体能力が半分に下がってしまうんだ」
丁寧な説明サンクスでござる出久くん。
やっぱ、個性の説明は彼に任せるに限るね。
「たった五分間とはいえ…100倍は壮絶すぎるな…! 一分間の能力半減を差し引いても強大すぎる…!」
「せ…刹那ちゃんって…もしかして…めっちゃ凄い子…?」
「うん。僕の自慢の幼馴染だよ」
自慢って言われちゃいました。
なんだか照れるね。
「…まずは自分の『最大値』を知る。それこそがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」
相澤先生が『∞』と表示された端末を見せながら説明する。
その言い分だと、私の最大値が無限大になってしまうのですが。
これはあれか?
近い将来に生身でツインドライブシステムやっちゃうフラグですかな?
「す…すっげー!! なんだよこれ!! めっちゃ面白そう!!」
「幾ら何でも無限ってなんだよ!? 最初から凄すぎだろ!?」
「個性を思い切り使えるんだ! 流石はヒーロー科!」
あーあ…一部の冷静な子たち以外、皆揃って浮かれちゃってまぁ…。
どーなっても知らないぞー?
「面白そう…か」
あ…相澤先生の琴線に触れちゃったっぽい。
「お前たち…これからヒーローになるまでの三年間…そんな腹積もりで過ごす気なのか?」
あらら…これは完全にキレちゃってますな。
ここからでも浮き出てきた血管が見えそうだもん。
「…よし。トータル成績が最下位の奴は見込み無しと判断し…この場で除籍処分を言い渡すとしよう」
「「「「「は…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
ほーら…言わんこっちゃない。
けどまぁ…私たちは大丈夫でしょ。
私は鍛えてるし、勝己君は元々から運動神経抜群。
出久君もかなり鍛えた上に、そもそも彼は力じゃなくて技術で勝ち上がるタイプだ。
一部の競技は難しいかもだけど、やり方次第じゃ上位の記録も狙えるだろう。
「生徒の如何もまた教師の自由。改めて…ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ」
さーて…面白くなってきた。
こうして話している間にも一分間は経過して、もう既にトランザムの再使用は可能になってるし。
競技ごとにトランザムを使うしかないよな…これは。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「さ…最下位の生徒を除籍って…まだ入学初日ですよ!? いや…仮に初日じゃなかったとしても…幾ら何でも理不尽すぎる!!」
実に真っ当なご意見。
でも、これから私たちが行こうとしている世界は、その『真っ当な意見』を全否定してくる世界だ。
「理不尽…ね。様々な自然災害に突如として発生する大事故。身勝手極まりない凶悪な
確かに…相澤先生の言う通りだ。
この世界はどこまで理不尽な出来事だらけで嫌になる。
だけど…だからこそ…。
「だが、そういった『理不尽』を真っ向から覆していくのが『ヒーロー』と呼ばれる存在だ」
ヒーローだけじゃない…ガンダムだってそうだ。
無慈悲な悪意…凄惨なる戦争。
それらに真っ向から立ち向かい、あらゆる悲劇を終わらせる存在…それこそがガンダムなのだ。
「放課後マックで談笑をしたかったのならお生憎様。これからの三年間、雄英高校は全力で諸君らに苦難を与え続ける」
私…マックじゃなくてモス派なんだよなー。
近所にマックが無いってのもあるんだけどさ。
「これもある種の『Plus Ultra』だ。本当にヒーローになりたかったら、これぐらいの理不尽は全力で乗り越えて見せろ」
さて…基本的に全ての競技でトランザムは利用出来るな。
恐らくは今ので私のソフトボール投げは免除になってると思うし、考えるのは他の7種目だな。
なんだろう…走ったり、飛んだりするのも凄い記録を出してしまいそう…。
なんたって100倍だもんなぁ~…。
「さて…これでデモンストレーションは終了。ここからが本番だ」
本番…そう聞かされると、嫌でも気合が入ってくるね…!
「因みに、今以上の記録は出しようがないので、ソフトボール投げに関しては、藤原は免除とする。お前は残りの7種目を頑張れ」
「了解した」
私の予想通りでしたな。
それじゃあいっちょ…頑張りますか!