『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』 作:とんこつラーメン
私のソフトボール投げから始まった、相澤先生の個性把握テスト。
まさか、入学早々にこんなことをするとはさすがに予想できなかったな。
それは私だけじゃなくて皆も同様みたいだけど、相澤先生の鶴の一言『ビリっけつはここでさよならバイバイ』で強制的にやる気に火が付いた模様。
というわけで、まずは第1種目の50m走からスタートです。
以上、前回のあらすじはオリ主こと藤原刹那がお送りしました。
プトレマイオスにお返ししまーす。
『3秒04!』
ほぇ~…インテリ系の見た目に反して、めっちゃ足が速いんだなぁ…飯田君。
あの足から出てるのが彼の個性の『エンジン』かー。
文字通り、高速移動特化型って感じ?
「流石は飯田君だな…僕も頑張らないと!」
「何か策があるのか?」
「ちょっとね。まだ個性のコントロールが上手くいかないのなら、長時間の発動は絶対に避けるべきだと思って、最初の一瞬に全てを掛けようかなって」
「成る程な」
「丁度、一瞬だけの発動って所には最高のお手本が近くにいたからね。凄くイメージはしやすいんだ」
「勝己のことか」
「うん」
確かに、勝己君の『爆破』の個性以上に『一瞬発動』のお手本はいないわな。
私以上にあの爆破を近くで長く見続けてきた出久君なら、確かにイメージはしやすいだろうね。
ってことは、この50m走ではスタートダッシュに全てを賭けるってわけですか。
別に、この段階で1番になる必要はどこにもないもんね。
大事なのは、少しでも体力とかを温存して継続して個性を使えるようになりつつ、最下位にならないように頑張るだけ。
言うだけなら簡単そうだけど、これが中々に難しい。
実際に私も最初はそうだったし。
けど、昔から出久君は器用な子だったから、コツさえ掴めば一気に大化けすると思うんだよね。
(飯田君と一緒に走ってた、あのカエルっぽい女の子…意外と足が速いな)
5秒58って記録に出てた。
恐らく、彼女の個性はまんま『蛙』と見た。
「「ん?」」
次はお茶子ちゃんの番だけど…なんか服とか靴とかに触りまくってる?
「そっか…成る程…」
「何が『成る程』なんだ?」
「あ…麗日さんの個性は、一度でも手が触れた物の引力を無効化するらしいんだ。だから、少しでも服とかの抵抗を減らす為に触ってたんじゃないかな?」
触った物の引力を無効化って…それって地味にめちゃ凄くないか?
特に災害救助の時とか絶対に大活躍確定演出だろ。
玉が出まくってフィーバータイム待ったなしだわ。
「次って刹那ちゃんじゃない?」
「む…そうか」
んじゃ、私もレーンに並びますかねーっと。
お隣さんは、ピンク色の髪と肌を持つ女の子。
うん。全身から見事な『陽キャオーラ』を醸し出してますな。
「お! 君ってさっき、無限の記録を出した子じゃん! 私、芦戸三奈! よろしくね!」
「藤原刹那だ。よろしく頼む」
グイグイ来る子ではあるけど…この子はちゃんと距離感を分かってる子だと見た。
私の中にある未来のイノベイターの因子(仮)がそう言ってる。
「では…トランザム!」
「おぉ! 近くで見ると凄い迫力!」
これで準備良しっと。
んでもって、やっぱりスタートはクラウチングだよね~。
『よーい…スタート!!』
「ふん!!」
「うそぉっ!?」
全力で地面を蹴ってからの全速力ダッシュ!
もう『走る』ってよりは『飛んでる』に近いけど、そこはまぁ気にしない感じで。
『1秒05!』
ふぅ…なんか、思ったように走れなかったな…。
少し力み過ぎてたのかな…? もしくは緊張?
その気になれば、もっと速く走れたような気がする…。
つーか…。
「1秒…切れなかったか…」
「切るつもりだったの!?」
あ、いつの間にか隣に芦戸さんがいた。
もうゴールしてたんだ。
「いや…刹那ってば足速すぎだから…! マジで目で追えなかったし…」
「まぁ…100倍だしな…」
「へ? 100倍? 何が?」
そっか…まだクラスの全員には私の個性は話してないっけ。
知ってるのは、幼馴染である勝己君と出久君、ここで知り合った切島くんとお茶子ちゃんと飯田君…ぐらいか?
上鳴君はー…多分知らない。
「次は…勝己と出久か」
「ん? あの二人って刹那の知り合い?」
「幼い頃からの幼馴染だ」
「ほほぅ…? そこんところ詳しくプリーズ」
なんか急に目がキラーンって光ってから食いつかれたんだが…どした?
『よーい…スタート!』
「爆速!! ターボ!!」
「ぼ…僕も!!」
む…! 勝己君は…両手を後ろに持って行ってからの爆破を発動か。
爆破の個性をブースター代わりにして速度を増したのか。
そして、出久くんはさっき言ったことを見事に有言実行して、スタートダッシュの瞬間だけ足先に個性を発動させ、一瞬で真ん中ぐらいまで飛んでいった。
そこからは普通に走ってたけど、それでも相当なタイムにはなったはずだ。
『4秒13!!』
『5秒89!!』
おぉ…!
勝己君はともかく、出久君も5秒台ですか。
普通に走った時よりも物凄く速くなってるじゃん。
「やっぱ、両手同時発動だと、どうしても威力が分散しちまうか…。これもまた課題だな。刹那みてぇに両手足で威力を安定させられるのが理想だな…」
「一瞬だけだったからか、思ったよりも反動が少ない…! これなら、なんとかなるかも…!」
どうやら、勝己君は新たな課題を、出久君は自信を付けられたみたいだね。
うんうん…よきかな、よきかな。ん?
「どしたの? 明後日の方なんか見て」
「いや…なんでもない」
気のせいかな…?
さっき、端の方の木の影にオールマイトがいたような…?
でも、あのオールマイトがそんなストーカーみたいな真似をする筈が無いしなぁ…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
続いて第2種目目…握力。
ここでは流石に無茶をする気はないようで、出久君も勝己君も個性を使わずに普通にやってた。
ま、二人にとっちゃ、これは捨て競技みたいなもんだしね。
本領を発揮できる競技はちゃんと別にあるわけだし。
そこで本気を出して追い上げれば問題は無いでしょう。
そんな中、ある一人の男子が凄い記録を出してた。
「いやいやいや! 540キロって!! お前はゴリラか!? いや、タコか!?」
「タコって…エロいよね…」
「…………」
複数の腕を持つマスクをした男の子が超人みたいな記録を出してんですけど。
元から鍛えていたのに加えて、複数の手で握ったから凄い記録になったのね。
「次、藤原」
「了解した」
相澤先生に言われて、私も握力計を握り締める。
勿論、直前にトランザムは発動済み。
「ふん!」
ベキ!!
「…………相澤先生」
「どうした」
「すまない…握力計が壊れた」
「なに?」
トランザム状態で全力で握りしめたら、変な音と同時に握力計から煙が出てきた…。
こ…今度こそ弁償案件ですかぁ…?
「…藤原…記録、測定不能…っと」
「べ…弁償だろうか…?」
「しなくていいとさっきも言っただろうが。実技試験の時に既に、お前の異次元級の馬鹿力は見させて貰っている。握力計が壊れるのも想定済みだ」
「そ…そうか…」
「しかし…」
「ん…?」
「一応…この握力計は理論上、全盛期のオールマイトの全力の握力にも耐えられるように設計してある筈なんだがな…」
「なん…だと…!?」
オ…オールマイトの握力を超えてしまったと言うのか…?
い…いや…流石にそれは無いでしょ…。
あくまで理論上ってだけの話だし…ははは…。
「おい刹那。なに『誰かの霊圧が消えた』みたいな顔をしとるんだ」
「すまん…驚きの余り、ついな…」
とうとう勝己君にもツッコまれてしまった…。
私も遂にボケキャラデビューですか?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
第3種目目『立ち幅跳び』
ここでも、皆がそれぞれに個性を発揮して頑張っていた。
勝己君は50m走の時と同じように、爆破をジェットエンジン代わりにし、出久君もまた跳躍の瞬間に爪先にのみ個性を瞬間集中発動をしてから好記録を叩き出す。
そして私は…。
「…危うく、学校の敷地外に出るところだった」
「ふ…藤原…助走無しでグラウンドの端っこまで飛んでっちまったし…」
うわ~ん!! 切島君にドン引きされたぁ~!!
私はただ、トランザム状態でジャンプしただけなのにぃ~!
「…藤原。取り敢えず、そこでジッとしてろ。今から記録を取る」
「…了解」
どうしよう…これ絶対に相澤先生から問題児認定されてるよね…。
もう記録云々以前の問題になってきそうな予感…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
第4種目目『反復横跳び』。
お世辞にも持続力に乏しい個性である勝己君と出久君は、ここもまた個性無しの状態で無難に突破。
なんか、凄く背の小さな男の子が、頭から丸いのを取って、それを地面にくっつけてから、それをトランポリン代わりにして高速で横に飛びまくってた。
あんな方法もあるんだなぁ…ちょっとだけ勉強になった。
「ほわぁぁ!? せ…刹那ちゃんの反復横跳びが速すぎて、赤い残像を残しながら、その場にジッとしているみたいに見えてるぅぅっ!?」
「速すぎて、我々の目では追えないのか…!」
「やっぱ…100倍は伊達じゃねぇんだなぁ…」
「ねぇねぇ…さっきから言ってる『100倍』って何?」
うーん…お茶子ちゃんぐらい派手なリアクションをしてくれると、こっちも幾分か気が楽なんだよね~。
あと、100倍に関しては後でちゃんと教えてあげるから待ってて頂戴な、三奈ちゃん。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そして、第5種目『ソフトボール投げ』。
これに関しては、私はのんびりと見学タイムでござーい。
「ん? 勝己…どうして靴を脱いでいる?」
「あ? んなの決まってんじゃねぇか。二番煎じかもしれねぇけどよ…お前と同じことをしようと思ってんだよ」
それって…勝己君もボールを蹴って飛ばそうってこと?
そっか…普段ならともかく、今の状態ならそれも可能か!
一杯体を動かした上に、靴下と靴のお陰で足もいい感じに蒸れて汗を掻いてる!
私も実際に足で蹴ったけど、安全性を考慮してなのか、ここのボールってそんなに固くないんだよね。
だから、生身の足で蹴ってもそんなにダメージは無いと思う。
それ以前に、勝己君は足も鍛えてるから大丈夫でしょ。
「僕もちょっと、今回は考えてることがあるんだ」
「デクもかよ」
「うん。流石に足は無理だけど…この拳なら…!」
おいおいおいおい…まさか、出久君は個性を使った拳でボールを殴って飛ばすおつもりですかい!?
これまたクレイジーなことをお考えになられる!
けど…だから気に入った!
なーんて事を考えてたら、意外な人物が意外過ぎる記録を叩き出した。
「えい!」
「「「おぉ~…」」」
思わず私達三人で感心した声を出してしまった。
なんと、あのお茶子ちゃんがソフトボール投げで私と同じ『∞』の記録を出して見せたのだ。
「そっか…引力を消せる麗日さんの個性なら、腕力とか関係ないのか…!」
「これもまた一種の『相性』ってやつか」
「やるな…麗日お茶子…!」
お茶子ちゃんが投げたボールは、そのままずっと浮き続けている。
彼女が個性を解除しない限り、半永久的にボールは浮きっぱなしなので、結果として記録は『∞』になるわけだな。
「っていうか…一つのクラスから二人も記録『∞』が出るって、どうなのよ…」
「それは言わないお約束と言うやつだ。芦戸三奈」
「刹那がそれ言っちゃうの!?」
私が言って何が悪い。
君ってもしかして、実はツッコミ係だったりするの?
三奈ちゃんはツッコミ脊髄の持ち主である…と。
心のメモに書き留めておかなくちゃ。