『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』   作:とんこつラーメン

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少年少女とトランザム!

 そして…時代は流れる…。

 とか言ったら一気に大きくなると思ったそこのあなた、残念でした!

 まだ私は小学生だよ!

 と言っても、もう高学年なんだけどね。

 

 高学年…5~6年生ともなると、そりゃもう色んな意味で徐々にではあるが大人びたことになっていく。

 体つきもそうだが、言動が一気に変わっていく。

 なんつーか…ませたことを言うようになる。

 

「はぁ~…やっぱり、藤原さんっていつ見てもカッコいいわぁ~…♡」

「そうか?」

「勿論! そこらの男子とかよりもずっと強いし!」

「頭もめっちゃいいし!」

「クールな感じがまた溜まらない!」

「…そうか」

 

 こんな感じ。

 もうさ…特に何をしたわけでもないのに、何故か私の周りには女子が集まってくるんだよね…。

 別に普通にしているつもりなんだけどなぁ…。

 そう…普通の刹那ロールプレイをしているだけなのに。

 

「ん?」

「チッ…」

 

 目を逸らされた…。

 不意に爆豪君と目が合ったのだが、すっごい嫌な顔をされてしまった。

 いやさ…こうして女子が周りにいる状態で話しかけずらいのは分かるけど、そこまで露骨な態度をしなくてもいいんじゃない?

 君はいつまで幼稚園での一件を引きずってるんですかコノヤロー。

 

「あ…バクゴーだ」

「あいつ…怖いよね~」

「うん…近づいただけで、すっごい睨みつけてくるし…」

「なんつーかー…猛獣? 誰にも牙を剥く…的な」

「それなー。それでいてさ『俺はいつか必ずオールマイトを超えるナンバー1ヒーローになる!』とか抜かしてるんだよ? 無理だっつーの」

「あの顔でヒーローとかって言われてもね~」

「フツーに無理。有り得ない」

「つーか、寧ろヴィランでしょ。あれじゃ」

「「「「言えてる~!」」」」

 

 うわぁ…言いたい放題言うなぁ…。

 女子のこういう所が未だに怖いせっちゃんなのでした。

 

「ああぁ!?」

「きゃー! バクゴーがこっちを睨んだー!」

「こわ~い! 藤原さん、助けてー!」

「やっぱ、ヒーローってのは藤原さんみたいに、強くてカッコよくて優しい子がなるべきよね~!」

 

 ヒーロー…私が…ヒーロー…?

 前に何度も緑谷君に言われたことはあるけど…。

 

(うーん…自分がヒーローって…イメージ湧かねー…)

 

 私も、刹那も、そんなキャラじゃないしな~…。

 決戦の時は熱血主人公ばりに超叫ぶけど。

 一応、ライザーソードという必殺技もあるけど…。

 

(でも…ライザーソードは流石に市街地じゃ出せないだろ…)

 

 あれってば要は超巨大なビームサーベルだしね。

 Zガンダムもビックリな極太ビームサーベル…文字通りの一撃必殺だしな。

 

 そうそう、いきなりであれだけど一応の報告をば。

 トランザムのインターバルは遂に30分を切りました!

 はいそこ拍手! パチパチパチ~。

 もうすぐ小学校を卒業ってタイミングで、ようやく半分だよ~…。

 体も成長してきたし、ここからはもっと飛ばしていかないとな。

 マリナママに頼んで、中学入学と同時に剣道場にプラスして、色んなプロヒーローが御用達の個性使用可の専門のトレーニングジムに通わせてもらえるようになった。

 ジムの方は私の好きなタイミングで行けるので、剣道場がお休みの日とかに行ってみるつもり。

 今まではこっそりと裏山とかに行ってトランザムの練習をしていたけど、これからは堂々とトランザムが使えるぞ~!

 ここから一気に捗るに違いないな!

 今から行けるのが楽しみだ!

 

 それと、もう一つ報告を。

 実は私…髪をですね…ん?

 

「…何をしてる?」

「あ…ごめんね? 藤原さんの髪が綺麗だったから、つい色んな髪形を試したくなって…」

「そ…そうか…」

 

 なんかもう殆ど答えを言われちゃったけど、マリナママの勧めで髪を伸ばしてみることにしました。

 小学校入学時から伸ばし続けてるから…もう結構な長さになってるんじゃないかな。

 完全にロングと言っても差し支えない長さにはなってると思う。

 その分、手入れも大変だけどね。

 初めは慣れずに四苦八苦したけど、マリナママのご指導のお陰で今ではバッチリお手入れが出来るようになったのでござるよ吉野さん!!

 

「ツインテールクールっ娘…ありかも」

「いやいや…藤原さんはやっぱりポニーテールでしょ。剣道してるし」

「とんでもない偏見…。ここは少し変化球に三つ編みなんかも…」

「なんのなんの。ツーサイドアップも見逃せませんぞ~」

 

 完全に私の髪が女子たちの玩具にされてる…。

 こんな時は誰かに援護を求めて…あ。

 

「…緑谷出久。救助を求める」

「無茶言わないでよぉ~…」

 

 使い古した一冊のノートを握り締めながら、残像が出る勢いで首を横に振る緑谷くん。

 成る程…これが俗に言う『質量を持った残像』ってやつか!

 やるな! 緑谷くん!

 君なら頑張れば、あの鉄仮面野郎をぶっ飛ばせるかもしれないぞ!

 

「相変わらず、緑谷はヘタレよね~」

「爆豪みたいに暴力的なのもどうかと思うけど、だからと言ってヘタレすぎるのはちょっとね~…」

「でも、爆豪みたいに怖くないだけずっとマシじゃない?」

「「「それは言えてる」」」

 

 おっふ…女子たちの中で緑谷くんと爆豪君の評価が完全に決まってしまった。

 でも、多分だけど爆豪くんはあれだぜ?

 雨の日とかに段ボール箱に入れられて捨てられてる子猫とかを拾って世話とかするタイプだと思うよ?

 あーゆー一見すると乱暴者に見えるタイプ程、実は動物とかには優しくて好かれるってのは王道パターンだよねぇ~。

 

「おぉ~! 出来た! この間テレビで見たモデルがしてた髪形! 後ろ髪を全部頭の上に持ってくるやつ!」

 

 あ…頭が重たい…首が疲れる…。

 

「…緑谷出久…本格的に救助を要請したい」

「わ~!? 刹那ちゃ~ん!?」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「一本!! そこまで!!」

 

 おぉ~…遂に、この剣道場で一番強い高校三年生のお兄さんにまで勝ってしまった。

 流石にかなり強かったが、お陰で更に強くなれた実感がある。

 マジでいい試合だった…。

 

「とうとう負けちゃったか…。いつかは、こんな日が来ると思っていたよ。刹那ちゃん」

「そうか。だが、今回のは本当にギリギリの…薄氷の勝利だった。次また試合をすれば、私が勝てる保証はどこにもない」

「そりゃね…試合はいつも同じ結果になるとは限らないからね。でも、君が俺に勝ったという事実は覆らない。だから、今だけは自分の事を褒めてあげていいと思うよ」

「そういうもの…なのか…」

 

 自分の事を褒める…自分を労うってことか?

 なら、帰りにでもコンビニに寄ってお菓子でも買おうか。

 疲れたからか、今は猛烈にシュークリームが食べたい気分。

 

「藤原、よくやった」

「師範代…」

「小学一年の時にやって来た時は、どうなるかと思っていたが…よもや、6年の間にここまで強くなるとはな」

「ありがとうございます」

 

 ちゃんと目上の大人には敬語を使いますよ?

 刹那もちゃんとお芝居ではあるけど、ちゃんと敬語を使うことがあるからね。

 え? さっき試合をした高校生のお兄さん?

 あの人はまた別でしょ~。

 

「しかし…もうお前も6年生か。あと3年でここを辞めてしまうと思うと、なんとも言えん気持ちになるな」

 

 そうなのです。

 私がこの剣道場に通うのは中学卒業まで。

 高校生になったら、本格的に真のガンダムマイスターになる為に個性の訓練を重点的に行っていくつもりだ。

 まだ、どこの高校に行くとかは流石に決めてないけど。

 

「師範代。あと3年じゃない…まだ3年もある」

「フッ…そうだな。確かに、その通りだ。いかんな…歳を取ると、どうも時間を短く感じてしまう悪癖が出てしまう」

 

 別に気にするようなことじゃないでしょうよ。

 それだけ充実した人生を送って来たっていう証拠なんだし。

 それはそれとして、この師範代…どーも、あのセルゲイ・スミルノフに顔が超そっくりなんだよな…。

 たった今私が試合をした相手だって、実は師範代の息子さんで、顔があのアンドレイに瓜二つだし…。

 これ、どこかにソーマ・ピーリスそっくりな女の子がいたりしないだろうな?

 もしいたら全力で探し出すぞ?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 剣道場の帰り、コンビニで買ったシュークリームを頬張りながら歩いていると、前方から何やら見覚えのあるお顔が歩いてきた。

 

「爆豪勝己」

「テメェか…」

 

 うん? なんか今は機嫌がいい?

 眉間に皺が寄ってないし、何より口調が柔らかい…ような気がする。多分。

 

「その恰好…剣道の帰りか」

「あぁ。そっちはどうした?」

「うちのクソババアが買い忘れたもんがあるからって、俺を扱き使ってんだよ」

「要は買い出しか。素直にそう言えばいいものを」

「うるせぇよ…」

 

 セリフに!マークがついてない…だと…!?

 明日は雪でも降るのか?

 まだ五月だけど。

 

「俺は…」

「ん?」

「テメェにだけは絶対に負けねぇ…。いつの日か必ず、あの時の借りを返してやる…覚えとけ」

 

 あの時って…やっぱ幼稚園の時の事を…。

 どんだけ引きずっとるねん。

 完全にトラウマになっとるやないかーい。

 今更ながらに激しい罪悪感が…。

 

「いつか必ず…テメェに勝って、オールマイトも超えて、俺がナンバー1になってやる。だから、その時まで…誰にも負けんじゃねぇぞ…刹那」

 

 あ…あの爆豪くんが…私の事を名前で呼んで…?

 なんだろうか…この言葉に出来ない感動は…。

 そっか…これはあれだ。

 ライオンとかトラみたいな猛獣が心を開いてくれた時みたいな感動だ。

 ある意味、彼も猛獣みたいなもんだしな。

 

「つーか、既に超強ぇ個性を持ってて、その上で剣道までやってるとか…どんだけ強くなりてぇんだよ」

「随分とお前らしくないことを聞くのだな。爆豪勝己」

「あぁ?」

「人として生まれた以上、どこまでも高みを目指すのは当然のことじゃないのか?」

「テメェ…!」

 

 人生これ勉強也。

 どこかで誰かが言ってたような気がする言葉。

 限界なんて、私たちが勝手に決めた指標に過ぎない。

 もし本当に限界が来るとしたら、それは私たちの命が尽き果てる時なのだろう。

 なーんて、ちょっとカッコつけたことを言ってみたりして。

 

「上等だ…! 俺もすぐに追いついて、テメェの事をぶち抜いてやる! 覚悟しとけや刹那ぁ!!」

「あぁ…私はいつまでも待っている」

 

 元気が出てきたようで、よかったよかった。

 セリフに!マークがない爆豪くんなんて、爆豪くんじゃないよ。

 それじゃあ濁点が抜けてはくこうくんだよ。

 

「つーか! さっきからシュークリームの中身が頬についてんだよ! ちゃんと拭きやがれ!」

「おぉ…これは済まない。ぺろり」

「舐めんな! 俺は拭けって言ってんだろうが!!」

「こっちの方が手っ取り早い」

「テメェは…! そもそも! こんな時間に食ってんじゃねぇ! 夕飯が食えなくなっちまうだろうが!」

「心配ない。この程度の事で食えなくなるほど、私の胃は小さくない」

「そうかよ! じゃあ好きにしろ!! クソが!!」

 

 出た。

 爆豪君の口癖の『クソが』。

 やっぱ、これがないと彼じゃないよなぁ。

 

「では、そろそろ失礼する。また明日、学校で」

「おう…」

 

 来た時と同じように、ポケットに手を突っ込んだまま猫背で歩いていく爆豪くん。

 けど、その背中には、今まであったイラつきのようなものは完全に消えていた。

 

 因みに、今日の夕飯はマリナママ特製のハンバーグカレーだった。

 勿論、ペロリと完食した。

 

 

 

 

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