『刹那! トランザムは使うなよ!』『了解! トランザム!!』   作:とんこつラーメン

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初めてのオリ主未登場回。








秘密を知ってトランザム!

 なん…だ…このドロドロとしたのは…!?

 いきなり後ろから纏わりつかれた…!?

 も…もしかして…これって…!

 

「大ー丈夫…ただちょーっと体を乗っ取らせて貰うだけさぁ~…だから落ち着いてぇ~…」

 

 ヴィ…ヴィラン…!?

 どうして、こんな場所にヴィランが…!?

 だ…誰かに助けを…そうだ!

 さっきの子たちに…って…いないー!?

 このヴィランが来る前に、僕が気が付かない間にどこかに行っちゃったのかー!?

 うぅ…なんで運の悪さ…!

 こんなことなら、ちゃんと朝の占い通りにラッキーパーソンである推しキャラのキーホルダーを身に着けておくんだった…!

 オールマイトのキーホルダー…貴重なシークレットレアだったから、大事にしようと机の引き出しの中に仕舞っておいたんだよなぁ…。

 

「苦しいのは45秒ほど…すーぐに楽になれるさ…」

 

 なんて考えている場合じゃなかった!

 僕の命が絶賛大ピンチ中だった!

 

「いやはや…本当に助かったぜ…。まさか…()()()()がこの街にいるだなんて想像もしてなかった…」

 

 あ…あんなの?

 あんなのってなんだ? 誰の事を言ってるんだ!?

 まさか…こいつは、どこかのヒーローから敗走している途中に僕を襲って、そのヒーローにリベンジしようとしているのか!?

 ふ…ふざけるな! よりにもよって、僕の体を利用しようだなんて…許せない!

 クソ! クソ! 僕の体から離れろよ!

 

「無駄無駄無駄ぁ! 俺の体を掴めるわけがないだろうが! 御覧の通り、流動的になってるんだからさぁ!」

 

 こいつの体…異形系の…恐らくは自分の体が液状になってるタイプ…!

 僕の書いたヒーローノートを思い出せ…!

 この手の個性の長所と短所…!

 物理攻撃には無敵に近いけど、それ以外の間接的な攻撃には極端に弱いことが多い!

 息が苦しくて…意識が遠くなる…けど! こんな所で諦めてたまるか!

 死んでたまるかよ!!

 僕はまだ何もしてないんだ! 何も成してないんだ!

 僕は…僕は…もう一度…!

 

「もう一度!! かっちゃんや刹那ちゃんと一緒にヒーローを目指すって決めたんだ!!」

「うるせぇよ!! いい加減に乗っ取られやがれ!! このクソガキが!!!」

 

 そっちこそ! この僕の往生際の悪さを舐めるなよ!

 心が折れても、10年以上に渡ってヒーローへの夢だけは諦めきれなかったぐらいなんだからな!

 

 体がから段々と力が抜けていく…!

 けど、この意識だけは…絶対に手放さない!

 

 その時だった。

 

「よく言った少年!! この勝負…君の勇気と根性の勝利だ!!」

 

 こ…この声は…まさか…!

 

「私が来た!!!」

 

 オ…オ…オ…!

 オールマイトォォォッ!?

 も…もしかして、このヴィランが言ってた『あんなの』って、オールマイトの事だったのか!?

 

「もう少しだけ我慢してくれ! すぐに助ける!!」

「テ…テメェッ!! こっちには人質が…!」

「TEXAS…」

 

 こ…これって…まさか…!?

 

「SMASH!!」

 

 ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?

 ふ…吹き飛ばされるぅぅぅぅぅっ!?

 

「風……圧…だとぉ…!?」

 

 ま…まさか…圧倒的パワーから繰り出されるパンチにより発生する風圧で倒すだなんて…流石は…オール…マイト…。

 また…一つ…ノートに書くべきことが…増え…た…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「モ…モンテスキュー!?」

「おわぁっ!?」

 

 ゆ…夢か…。

 まさか、刹那ちゃんがモンテスキュー至上主義者になって、学会で専門用語だらけの謎の発表をしている夢を見るだなんて…流石に有り得ないや…。

 刹那ちゃんは生粋の武人肌の子だし…頭はいいけど、流石にあれは無いなー…。

 

「ど…どうしたんだい少年? 一体どんな夢を見れば、起きた時の第一声が『モンテスキュー』に? おじさん本気で驚いたよ?」

 

 ん? この…非常に見覚えのある…僕や周りの皆とは全く画風が違う筋骨隆々の男の人は…。

 

「オ…オオオオオオールマイトォォォッ!?」

「おぉ! 思ってるよりも元気そうでよかった!」

 

 な…なんでオールマイトが目の前に!?

 あ…思い出した…。

 僕は確か、背後からヴィランに襲われて…それで…。

 

「いやぁー…本当に済まなかった! うっかりヴィラン退治に巻き込んでしまったね! 普段なら決して、こんなミスは侵さないんだけど…久々のオフ時間だった上に、慣れない土地に来てしまったせいで浮かれちゃったのかなっ!?」

 

 なんか、今の一文の中に色々とツッコミどころ満載な言葉が羅列しているような気がしたけど、それよりも今は!

 

「しかし、ありがとう! 君が必死に耐えてくれたお陰で、こうして無事に詰められたよ!」

「って、まさかのペットボトルとな!?」

 

 幾ら相手が流動系だからって、もうちょっと何かいいのが無かったのっ!?

 襲われた身でこんなことを言うのは呑気かもだけど、ほんの少しだけヴィランに同情しちゃったよっ!?

 

「あ、そうだ。こうして会ったのも何かの縁ってことで、君のノートに私のサインを書いておいたよ!」

「これまたいつの間にッ!? 流石はオールマイト、仕事が早い!?」

 

 今のラフな格好のどこにマジックペンを持ってたんだとか、そんなツッコミはきっと野暮なんだろうな…。

 

「あ…あの…どうしてここが分かったんですか…?」

「とある二人組の少年が教えてくれたのさ! この場所にヘドロみたいな姿のヴィランが出現して、君が襲われているってね!」

「そう…だったのか…」

 

 あの二人が…僕を…。

 いつの間にかいなくなっていたのは、助けを呼ぶためだったのか…。

 

「君と彼らはきっと赤の他人なんだろう。でも、彼らは今の自分に出来ることを必死にやり遂げた! 久々に心が熱くなったよ! あんな勇気ある少年たちがヒーローを目指している…この国の将来は明るいな!」

 

 名前も知らない…一度も話したことがない僕を助けるために…。

 一体僕は、彼らにどれだけ感謝すればいいんだ…!

 少なくとも、僕はもう彼らに向けて足を向けて寝られないな…。

 

「それに…君の叫びもな」

「へ? 僕?」

「そうさ。友達と一緒にヒーローを目指す…いいじゃないか。確かにまだ体は仕上がってないかもしれないが、あの気合と根性は十分に称賛に値する! よく頑張ったな! 少年!」

「オール…マイト…!」

 

 そうか…これが…そういうことだったのか…。

 無個性でも関係ない…ちゃんと見てくれる人はいる…!

 こんな簡単なことにすら気が付かないで…僕って奴は本当に…!

 

「僕は…無個性です」

「…! そうだったのか…」

「小さい頃、医者に言われて心が折れてました。何も出来ないと思って何もせず、憧れだけは一丁前で…そんな中途半端な僕の態度に苛立ってたんでしょうね…幼馴染の友達に苛めみたいなことをされてました」

「………」

「最初こそ、僕が無個性だから苛められてると思っていたけど…違った。かっちゃんは…何もしない、しようとしない僕を立ち上がらせるためにやってたんだって…最近になって気が付いたんです」

 

 僕は何を話してるんだろう…。

 オールマイトだって、僕の身の上話なんて聞かされても迷惑だろうに…。

 

「諦められない…諦めきれない…! 個性が無いことを理由にして…夢を諦めることだけは…大切な友人の気持ちを裏切ることだけは…絶対にしたくない…!」

「…プロはいつだって命懸けだ。その事は分かってるかい?」

「勿論です。この街にもヒーローはいます。彼らが目の前でヴィランと戦う姿を何度も生で見てます」

 

 その迫力…凄惨さは理解しているつもりだ。

 つもりだけで…本質は分かってないかもしれないけど。

 

「…優れた個性を持っているからと言って、誰もがヒーローになれるとは限らない。個性が無いからと言って、決してヒーローになれないとも限らない」

「オールマイト…?」

 

 急に何を言って…?

 

「確かに君には個性が無いのかもしれない。けど、こいつに取りつかれても必死に足掻いていた姿に、あの魂の叫びに…私は君の中にヒーローを見たよ」

「僕の中に…ヒーローを…?」

「あぁ。無個性でヒーローになる…それはきっと想像を絶するような茨の道かもしれない…それでも…」

「やります。やって見せます。こんな僕に、もう一度立ち上がる勇気をくれた人たちに…今度は僕が勇気を与えられるように」

 

 う…うわぁ…自分で言ってて物凄く恥ずかしいことを…!

 今日は人生最高に日であると同時に、黒歴史がまた一つ誕生した日でもあるな…。

 

「いい目を…顔をしている…」

「え?」

「先程の彼も候補に入れていたが…君も…私の……うっ!?」

 

 候補? 私の? な…なに?

 

「ちょ…ちょっとこっちに!」

「え? はい!?」

 

 な…なんか急にオールマイトに裏路地に連れ込まれた!?

 なんかドキドキしてきた…。

 

「ここなら大丈夫…か…」

「大丈夫って…ほわぁぁぁぁぁっ!?」

 

 オールマイトの体から急に煙がぁぁっ!?

 え? 何これ!? こんなの初めて見たんですけどっ!?

 僕が驚いている間に煙が収束し、不意に吹いた風によって飛んでいく。

 その煙の中から出てきたのは…。

 

「や」

「なんか体がしぼんでるぅぅぅぅぅっ!?」

 

 オ…オールマイトがまるでガイコツみたいな姿にッ!?

 こ…これ何…? マジのマジでどーゆ―ことッ!?

 

「マイネームイズオールマイト。ぐぼは!」

「吐血しながら自己紹介ッ!? うそーんっ!?」

 

 こ…これがオールマイトの正体…?

 この可哀そうになるぐらいに瘦せ細った姿が…?

 

「ほら。よく身体測定の時に少しでもウエストを細く見せようと腹筋を力み続けてる人がいるだろ? あれと一緒さ」

「僕はまだ中学生なので、そんな人は見たことありません!」

「え!? そーなの!? まぁ…大人になれば一杯見ることになるさ」

 

 そうなんだ…大人って大変だ…じゃなくて!?

 

「図らずも見られてしまった以上、これも見せないわけにはいくまいよ」

「これ…?」

 

 これ以上に一体何を見せようと…?

 

「頼むからネットとかに書き込んだりしないでくれよ?」

「わ…分かりました」

 

 流石の僕も、オールマイトのプライベートを暴露するような恩知らずじゃない。

 一体何を見せる気かは知らないけど、墓まで持って行って…。

 

「これを見てくれ」

「……え?」

 

 オールマイトが徐に服を持ち上げると、そこには見るも無残な怪我の跡が…。

 一体いつ、こんな怪我をして…!?

 

「今から約五年ほど前…とある『凶悪な敵』との戦いで負った名誉の負傷ってやつさ」

「負傷…」

 

 五年前って…一体いつの戦いだ…?

 少なくとも、僕が知る限りは、オールマイトがこんな大怪我をしたって話は聞いたことが無いぞ…。

 

「呼吸器半壊に加えて胃袋全摘出。度重なる手術と後遺症によって完全に体が憔悴しきってしまってね。今の私のヒーローとしての活動限界は約三時間ぐらいにまで縮まってるのさ」

「三時間…!」

 

 今のオールマイトはまるで…刹那ちゃんとは真逆だ…。

 あの子は短時間だけオールマイトに匹敵するような超パワーを発揮出来るけど、そのインターバルが一時間だと言っていた。

 けど、最近はそれが大幅に短くなって、噂じゃもう10分を切っているのだとか。

 

「当然だが、これは世間には一切公表されていない。私が公表しないでくれと頼み込んだ。何故だか分かるかい?」

「ヒーローは決して…悪意ある者たちに屈するわけにはいかないから…」

「その通り。私が常に笑っているのは、ヒーローとしての重圧と、心の内に湧く恐怖心から己自身を欺くためなのさ。幻滅したかい?」

「いや…そんなことは…」

 

 そうだよな…オールマイトだって人間なんだ…恐怖心があって当たり前だ。

 だけど、この人はそれを笑顔で誤魔化して戦い続けてる。

 幻滅なんてしない…それどころか、僕は増々この人のファンになった。

 

「私はそろそろ行くよ。捕まえたこいつを警察に届けないといけないからね」

「あ…ご苦労様です。けど…なんでペットボトル?」

「手近にあったのがこれしかなかったんだ。因みにこれ、ついさっきまで私が飲んでたものね。これも一種のリサイクル精神さ」

「そう…なのかな…?」

 

 これはちょっとリサイクルとは言わないような気が…。

 単に捨てるのが面倒だっただけじゃ…?

 

「それじゃ、またいつかどこかで会おう! 未来のヒーロー少年!」

「おわっ!?」

 

 またもやマッスルボディになって、一瞬で凄いジャンプで空に消えたッ!?

 本当にオールマイトだったんだなぁ……ん?

 

「気のせい…かな? ジャンプしたオールマイトから、何かが落ちていったような気が…」

 

 まさか、ペットボトルに入ったさっきのヴィランが…?

 いやいやいや…幾ら何でも、それはないでしょ…。

 あのオールマイトが、そんな凡ミスをする筈がない。

 きっと、財布かスマホを落としたに違いない。

 それはそれで別の意味で大問題だけど。

 

「…行くか」

 

 怒涛の展開過ぎて驚き疲れたけど、いつまでもここにいるわけにはいかない。

 早く帰ろう…そして、かっちゃんや刹那ちゃんと会って…。

 

 けど、この時の僕は知らなかった。

 事件はまだ終わったわけじゃないと言うことを。

 最後の最後に、僕が盛大なフラグを立ててしまったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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