翌日
「失礼します」
技術科の部屋にやってきたカイト、今度もまた設計図を片手に入ってくる
「エリシア!頼まれていたものの設計図を持ってきました」
しかし彼女からの返事はない、部屋にいたのは彼女の補佐をしているガイルがいた
「ガイル技術少尉、エリシア技術中尉はどちらに?」
「奥の部屋だ、また何か作ってるんだろうさ」
ガイルはタバコに火を付け、たしなむ
「そうですか、ありがとうございます」
彼は軽く礼をして部屋の奥へと進む
「失礼します……」
彼が部屋を覗くと中には様々な機械が散乱していた、その奥ではエリシアが何か作っていた
「あぁ……エリシア?頼まれていた新型艦の推進機の設計図を持ってきたんだが?」
するとそれに反応するようにエリシアは作業を止め後ろを振り向く
「あらカイト、何か用?」
「君に頼まれてた新型艦の推進機の案が出来たんだ、それを……」
カイトの話の途中で走って近づき彼にしがみつく
「見せて見せて!」
「近い近い!分かった、わかったから!」
彼女を引き離す
「GNセパレーターという特殊な生成機を使ってGN粒子を生成しそれを推進剤として使う、」
「!、GN粒子を推進剤として使うの?実は一つ判明したことがあって」
エリシアは特殊な機器と金属片を持ち出す
「これを見て」
金属片と機械を固定した物体は機械の電源がつくとゆっくりと浮かび始める
「これは……ミノフスキー粒子か?」
「いいえ、GN粒子」
「何?」
「GN粒子には物体を浮かばせる能力があるの」
「?」
「これを仮にGNフロートシステムと命名するけどこれなら今建造中の「強襲輸送艦イズモ」を動かすのに充分な力は得られるけど」
「けど?」
「GNセパレーターは量産化の目処が立ってなくて、設計図はなんとか手に入れたけどこれを戦艦サイズにするのはなかなか難しいの」
「なるほど、そうとなったら2つ進めよう」
「私の案とあなたの案を同時に進めて最悪どちらかを使うのね」
エリシアは指をパチンと鳴らす
「そう、ただこっちのはスラスターとしての設計だからどちらかと言うとそっちのGNフロートシステムを使った機器の制作を急いでは欲しい」
「わかった、けどGNセパレーターの大型化ができるまでにはそっちのGNジェットスラスタは完成しててよ?」
「分かってるって、っとそういえばあともう一つ見てもらいたいものがあるんだ」
「何?」
「コイツだ」
彼の開いた設計図には意味でのモビルスーツにはない形状をしていた
「これって……」
「イズモ完成までのストライクディーレの移動手段だ」
「全く人使いが荒いわね、そっちはガイルに頼んで」
「分かった」
カイトは設計図を丸める
「それじゃお互い頑張ろう!」
「ええ」
二人は拳を突きつけ合ってカイトは部屋を出ていく
部屋にいたガイルを見つけ、カイトはガイルに話しかける
「ガイルさん、一つ見てもらいたいものが」
「!?、お、オメェさんもあっちの仲間かよ!…………わぁったどれ、見してみろ」
カイトの広げた設計図を見てガイルはひげをさする
「……こりゃ核動力が前提だな?……そんでもって馬見てぇな下半身に上半身は人型か……オメェさん、一体"コイツ"を何に使う気だ?」
「敵要塞攻略及び補給物資運搬が基本的な運用になると思ってます」
「なるほど……一撃離脱戦法か……期間は?」
「色々作るので多少ゆっくりだと2週間で試作型が形になれば」
「なるほど、作る数は?」
「最低で三、多くて五。またこれも作って欲しいので、とても忙しくなるとは思いますがお願いします」
「任せてくれ。これでもあいつの補佐やってんだ。期日までには仕上げるさ」
ガイルは設計図をもう一度見下ろした。
「しかしオメェさん、本当に色々考えるな」
「そちらはガイルさんにお願いします。自分はGNジェットスラスタの開発を進めるので」
「なるほどな。役割分担ってわけか」
「ええ。エリシア技術中尉はGNフロートシステム、自分はGNジェットスラスタ、そしてガイルさんにはこの機体を」
ガイルは鼻で笑った。
「三つ同時進行か。基地中が修羅場になるぞ」
「今更でしょう?」
「違いねぇ」
二人は軽く笑い合った。
翌朝。
格納庫は三つの開発計画によって、まだ日も昇っていないというのに蒸し暑かった。
左側ではエリシア班がGNフロートシステムの試験装置を組み立てている。
中央ではガイル班が半人半馬型機体の巨大なフレーム建造を進めていた。
そして右側ではグラウネイル大隊がGNジェットスラスタの開発に追われている。
「足場組めぇ!」
「クレーン持ってこい!」
「工具だ工具!」
怒号が飛び交う中、カイトは大隊員たちの前に立った。
「我らを呼び出すとは何事だ?」
「僕たちは今から最近発見されたGN粒子を利用した推進機、『GNジェットスラスタ』の開発を行います」
「「!?」」
二人の目が飛び出しそうになるほど見開かれる。
「本気か!? 技術者無しで作るのか!? 我らで!?」
「ええ。それと技術者無しではありません」
カイトは自分を指差した。
「居るじゃないですか。この俺が」
途端に二人の顔へ「あ、そうだった」という表情が浮かぶ。
「では作りましょう」
直後、格納庫に悲鳴が響いたのは言うまでもない。
それから数日後。
ガイル班では半人半馬型機体の骨格が完成しつつあり、エリシア班でもGNフロートシステムの大型化試験が進んでいた。
そしてカイト班が完成させた最初の成果が、GNジェットスラスタ試験機『トイボックス』である。
「よーし! ゆっくりだ!」
機体上半身がトレーラーから離される。
トイボックスはストライクをベースとした実験機だ。
両肩には巨大なGNジェットスラスタユニットが増設されており、純粋に飛行性能を検証するためだけに作られていた。
「しかしテストパイロットは本当にあなたでよろしいのですか?」
通信から聞こえてくるラウルの声
「ええ、なんせ自分で使う機体なので」
「そうですか」
すると
「カイト!怪我だけはしないでね!」
エリシアの多少興奮した声が無線から聞こえる
「ええ、」
カイトの乗るストライクは完全に起き上がる
『トイボックス、フィールドクリア、ミッションスタート!』
「カイト、トイボックス出る!」
トイボックスと呼ばれた機体はストライクの改造機の肩に何やら大型のパーツを付けていた
「GNセパレーター起動確認、GN粒子生成量正常、新装備GNジェットスラスタ、出力臨界!」
「固定器具外せ!」
ストライクを固定していた固定器具が外されストライクは少し浮く
「飛べ!」
直後ストライクは空へ消えていく
トイボックスコクピット内
「っ…………く!これは……随分……」
身体にかかるGに負けないよう意識を集中させるカイト、すると次第にGが弱まっていくのに気付く
「…………ま、まさか……」
増設された計器を見ると先程まで満タンだったのが空になっていた、ちなみにこの計器は機体に貯蔵されたGN粒子を示しており、肩部に追加されたGNジェットスラスタはGN粒子を燃料として起動する、そのため今この状況はどういうことかと言うと自由落下しているということだ
「……っく!脚部スラスター!」
ペダルを踏むとストライクの脚部にあるスラスターが火を吹く
「っく!」
どんどん地面は近づいてくる彼はその恐怖にさらされながらペダルを踏む足に力を入れる
「っ!止まれぇええーーー!」
トイボックスの脚がついた途端そのまま姿勢を維持できず脚部はちぎれ胴体が地面にぶつかる
金属の擦れる音と共に追加装甲が剥がれる
少しすると勢いは収まる
トイボックスを追いかけていた戦闘機から通信が入り彼らは現場へ急行する
(そんな……怪我するなってはいったけど、死ぬなっては言ってないじゃん……)
(やはり俺が乗るべきだったあんな物に乗せるべきではなかった)
(なんかみんな死んだみたいに考えてるけど確かストライクって……)
エイドリアンがあることを思い出していると車は現地につく
そこには地面のえぐられた痕跡がありそこには倒れたトイボックスの脚部がありそこから先はえぐられた地面が続きその奥にはトイボックスの胴体が転がっていた
「「トイボックス!」」
ラウルとエリシアは掛けていく
幸いにもトイボックスのコクピットハッチを開けられる体制のためすぐラウルは開ける
中を覗こうとすると何かが這いずり出てくる
「ふぅ~やっと開いた」
パイロットスーツを着ているため多少分かりづらいがカイトであることは明白、彼が無事なのを確認し二人は彼を抱きしめる
「良かった……」
「無事で……」
状況のわからないカイトはあとから来たエイドリアンに尋ねる
「あの?これはどういう?」
「俺の後ろを見ればわかります」
彼がエイドリアンの後ろを見るとひどく地面の削れた大地が広がっていた
「あ〜〜なるほど」
「まぁ、あなたが無事で何よりです」
「あぁ、ところでこれをどうにかしてくれ」
彼に抱きついたまま離れない二人
「まぁ、しばらくはそうですね」
「…………」
このトイボックスの事件は後に流星事故と命名されトイボックスの起こした事故として記録され後のトイボックス、及びGNジェットスラスタ搭載機に強化フレーム採用を義務付ける事となる
また余談ではあるがこの事件の翌日からトイボックスの搭乗とGNジェットスラスタ開発を大隊メンバーからひどく拒否されカイトは始末書を書くこととなる