基地攻略後、カイトたちは敵についての情報を得るため、要塞内部を慎重に制圧していった。しかし、驚いたことに残存兵力は全くなく、彼らは緊張感を抱えたまま、最後の司令官室と思われる部屋へと足を踏み入れる。
「クリア……」
先頭を進んでいたカイトは、周囲を警戒しつつライフルを下ろす。そして部屋の中を見渡すが、内装は平凡であり、豪華さのかけらもなかった。
「ここくらいですね、人が住んでいた痕跡は……」
部屋を眺めながらカイトはつぶやいた。
「しかし、何なんだ? この要塞はここを除けば、ほとんど兵器の施設か格納庫しかなかったぞ。まるで異星人が乗ってきたかのようだ……」
ため息交じりにエイドリアンが言う。その言葉通り、要塞全体に生活感はほぼなく、異様な雰囲気が漂っていた。
「だが、だとしたらこの部屋は何だ? 異星人の中に人間がいて指揮を取っていたとでも言うのか?」
ラウルの疑問に、カイトはふとある仮説に行き着く。そして資料を見つけるべく、部屋を調べ始めた。
しばらくしてカイトは司令官デスクの引き出しを開け、一冊の紙束を取り出す。数ページをめくった後、彼の手が止まる。
「この資料……いったい何でしょう?」
カイトは紙束の一ページをめくる
「読んでみます」
とカイトは読み始める
[ノア計画機関
我が機関は人類は国家という枠組みを持つ限り、永遠に争い続ける、
そんな世を変えるために創立されたのだ
連邦とジオン。
ナチュラルとコーディネイター。
アースノイドとスペースノイド。
人類は常に自らを区別し、異なる集団を敵として認識する。
彼らは戦争を偶発的な悲劇ではなく、人類社会に組み込まれた構造的欠陥であると考えている。
そのためノア計画機関は、既存国家や既存秩序を維持したまま平和を実現することは不可能であると判断した。
彼らの最終目標は、現在の国家体制を全て崩壊させた上で、人類全体を統括する新たな秩序を構築することである。]
「新たな……秩序」
ラウルがそう呟く
「…………終戦から三年足らずで……?」
とエイドリアンもこぼす、地球連邦軍はちょうど数年前第一次連邦・プラント大戦が終戦したばかりである
「しかし、これをゲリラがやるってのは無理がると思います。まず資金も技術もなく、リスクも高い。実現するにもそれは世界を敵に回すということになります。」
ラウルが顎に手を当てて考え込む。
「だとしたら、この要塞はなんなんだ?基地を作るということは規模は大きいと思うが……」
エイドリアンの推測に、カイトは答える。
「ええ、問題はそこです、ここはザフトのものでもなければ、ジオンのものでもありません。何より現在のジオンにはこんな規模の実験を行う余力はなく。ザフトも我が軍との様々な取り決めの最中です、つまり、これは第三勢力によるものだと考えるべきです。」
「第三勢力……」
ラウルが眉をひそめる。
「だが、こんなことができる企業なんてありますか?」
エイドリアンの疑問に、カイトが慎重に答える。
「資金面なら
「どういう意味ですか?」
ラウルが問う。
「戦後の今、どの勢力も国力が削られています。そんな中で、このような火種が再び戦争を引き起こせば、次は人類の半分では済まないでしょう。」
カイトの言葉に、ラウルとエイドリアンの表情が曇る。彼らは一年戦争の惨劇を経験しており、「人類の半分」という言葉の重みを知っていたからだ。
そこへ隊員の一人が慌てて駆け込んでくる。
「カイト中尉! 緊急事態です!」
「どうした?」
カイトが聞き返すと、報告はさらに驚くべき内容だった。
「ゲリラが、我々のグラウナイト基地を襲撃しています!」
「何だと!?」
一同は一斉に立ち上がった。
「基地の防衛隊はどうなっている?」
ラウルが声を荒げる。
「敵の攻撃は予想をはるかに上回るもので、防衛ラインが次々と突破されています! 現在、指揮系統が混乱しています!」
「くそっ、こんなタイミングで……!」
エイドリアンが拳を握りしめる。
「急いで帰還します!」
カイトが叫び、一同は速やかに撤収の準備に取りかかる。
要塞の司令官室を後にする彼らの表情には焦燥がにじんでいた。未知の敵、ヴェルテノアの脅威がいかに大きなものかを実感する間もなく、次の戦いが迫っていた。