凡人、異世界を開拓す。~こういうのって地味なスキルが実は最強でしたって展開で合ってますよね?~ 作:三軒となり
ウィンタムの町、そのとある診療施設の一室にて。
入り口の扉前には軽い人だかりができていた。その全てが若い女性で、互いにヒソヒソと耳打ちしながら部屋の中の様子を窺っている。
時折「目が合った」や「カッコいい」など黄色い声が室内に響き、まるでどこぞの国の
「はーい、通りますよー」
白衣と三角巾をまとった女性がその集団をかき分け、ギィっと木の床を軋ませながら一人の男性が休むベッドの横へと近寄った。
備え付けられた医療用の反復魔術回路へ魔力が込められると、患者の身体が緑色の光に包まれる。するとその身体にポツポツと若葉が芽生え、次の瞬間には細い蔦となって全身を覆い隠した。
蔦は暫く動きを止めた後に頭頂部へと集まって行き、その全てが重なった点で小さな白い花が一輪だけポンっと咲いた。
そして花は役目を終えたようにサラサラと緑の光へとほどけてゆく。
「うん完璧。流石Aランク開拓者ですね、あれだけの傷をもう治すなんて」
女性の言葉に、病室の窓から街中を眺めていた若い金髪の男は首を振った。
「僕なんてまだまだです……。
「ゴブリンジェネラルは
窓の外から女性へと視線を移したリビオニールが微笑む。
ウェーブがかった金髪から覗くエメラルドの瞳はキラキラと輝く光を宿し、顔立ちは彫刻のように整っている。気品溢れ、育ちの良さを感じさせる彼は、まさに王子様と称すべき容姿をしていた。
「っ……、きゃっ!?」
「危ないっ」
そんなリビオニールの美貌に見蕩れたのか、看護師の女性がベッドに足を引っかけて転びそうになったところ、彼はスッと立ち上がり抱きしめるようにして彼女を支える。
「大丈夫ですか?」
「えっと……はい……」
止まぬ黄色い歓声。
また一人、彼のファンが増えた瞬間だった。
「最近忙しそうでしたもんね。少しお休みになっては?」
「あ、いえ……。こんな時に休んではいられません」
「こんな時? 何かあったんですか?」
リビオニールの問いに看護師の女性が少しだけ顔を曇らせる。
「数日前から周辺の村や町が、強大な
「えっ……そんなこと、ギルドは何も……」
「リビオニールさんは療養中でしたので、当院で開拓者ギルドからの書状は差し止めさせて頂きました。周辺のAランク以上の開拓者には全員招集がかかっています」
「それはっ……こうしちゃ居られない!」
立ち上がり、ベッド横にあった白銀の鎧に手をかけるリビオニール。だがその上から看護師の女性は、彼を止めるように手を添えた。
「待ってください。運ばれてきた患者さんの証言から、その
「バカな?! この近郊に
「はい。
「そんな……」
「あ、そうだ。ユグドラシルの方からリビオニールさんに、これを渡しておいてくれと」
看護師の女性が一枚の紙をリビオニールに手渡す。
「これは…………えっ!?」
「あっ、ちょっと!! リビオニールさん?!」
リビオニールはその手紙をみるやいなや、ベッド横にあったメモ用紙へ備え付けのペンを走らせた。
「この手紙をウィンタムの町長へ渡してください。本当なら僕が皆さんを誘導しなければなりませんが、時間がありません。すぐに避難の準備を」
「えっ?! リビオニールさん?!」
看護師の女性へ押し付けるようにメモ用紙を渡したリビオニールは、白銀の鎧を着て病室を飛び出した。