魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

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Phase1-2 ドワーフのルーン職人たち

「なんじゃとぉ!? このルーン文字だけを量産しろじゃとぉ!?」

ゴンドの怒鳴り声が研究施設へ響き渡った。

ここはトブの大森林奥地。ルーン工匠たちが研究と生活を行っている施設である。

「うるさいなぁ、ゴンド。耳痛いんだけど」

アウラが露骨に顔をしかめる。

「だ、だってよぉ!」

ゴンドは髭を震わせながら叫ぶ。

「ルーンっちゅうもんは武器に刻んでこそ意味があるんじゃろ?! それを『この文字だけ大量に刻め』って、何考えとるんじゃアインズ様は!」

「あたしに言われてもなぁ」

アウラは肩を竦めた。

「アルベドから頼まれただけだし。詳しくはンフィーレアが説明するって」

ゴンドの視線がンフィーレアへ向く。

少し緊張した様子を見せながらも、彼の目は興奮に輝いていた。

「こ、これはアインズ様のため、そして魔導国の未来のために、とても重要な研究なんです!」

胸の前で両手を握り締める。

「液状魔力というのは――」

「待て待て待て」

ゴンドが手を突き出した。

「ワシ一人で聞いても理解できん気がする」

そして後ろを振り返る。

「おーい! みんな来い! なんか凄そうな話じゃ!」

奥からぞろぞろとドワーフたちが集まってきた。

「なんじゃ?」

「またゴンドが騒いどるぞ」

「今度は何作るんじゃ?」

そんな声が飛び交う中、ンフィーレアは説明を始める。

 

液状魔力。

高濃度魔力の液体化。

エネルギー利用。

ルーン技術による安定化。

途中から、ドワーフたちの顔は完全に「わからん」という表情になっていた。

そして説明が終わる。

沈黙――。

「……うむ!」

ゴンドが力強く頷いた。

「まったく理解できん!」

「えぇ……」

ンフィーレアが固まる。

「じゃが話は分かった!」

ゴンドは親指を立てた。

「つまり武器用ルーン研究は後回し! この文字を大量生産すればよい! それがアインズ様の御意思なんじゃな?!」

「そ、そうです!」

「よし!」

周囲のドワーフたちも頷く。

「アインズ様の御命令ならしゃーない」

「武器じゃなくてもルーンはルーンじゃ」

「面白そうではあるな」

ンフィーレアは少し安心したように息を吐く。

「それと……他にもお願いしたいことがあるんです」

「まだあるんかい!」

総ツッコミだった。

「あと2つ……」

「2つもかよ!」

 

「まず、大量の液状魔力を保存するための容器を作ってほしいんです」

「容器?」

「はい。金属製で、丈夫で、安全に持ち運べるものを」

ンフィーレアは少し迷ってから続けた。

「アインズ様は『LPガスみたいなもの』と仰っていました」

「えるぴー……?」

ゴンドたちの顔が揃って困惑する。

その反応を見て、ンフィーレアは少し笑いそうになった。

――自分も同じ顔をした。

アインズ様の知識は、時折まったく理解できない。

だが、その遥か先を見通していることだけは分かる。

「その容器を、僕は『魔導ボンベ』と呼ぼうと思っています」

「おいおい、勝手に名前つけて大丈夫なんか?」

「その『えるぴーがす』って、アインズ様が言ったんでしょ?」

アウラが口を挟んだ。

「はい。でもアインズ様は『独り言だ、忘れてくれ』と仰っていましたから」

ンフィーレアは少し照れたように笑う。

「それに『魔導国製のボンベ』って、なんかかっこいいかなって」

「まあ、アインズ様が否定してないなら、いいんじゃない?」

アウラは軽く言った。

 

「で、その容器はワシらに作れるもんなんじゃな?」

「はい!」

ンフィーレアは即答する。

「アインズ様は、『ドワーフは金属加工の専門家だ』と仰っていました。皆さんなら必ず作れるって」

その瞬間、ドワーフたちの顔色が変わった。

「……アインズ様が?」

「ワシらのことを?」

「専門家って言ってくださったのか?」

誇らしげに胸を張る者までいる。

ゴンドが鼻息荒く叫んだ。

「よぉし! やってやるわい! 詳しい構造を説明せい!」

「はい!」

ンフィーレアも勢いよく頷く。

 

「それで、もう一つなんですが……」

さらに説明を受けたドワーフたちが、今度は揃って眉をひそめた。

「……小さすぎんか?」

「そんなサイズじゃ、大して入らんぞ」

「はい。でも重要なのは容量じゃないんです」

ンフィーレアは力強く言った。

「持ち運べることなんです」

「持ち運び?」

「どこでも使えるエネルギー源――それが必要になるんです」

ドワーフたちは顔を見合わせる。

理解はできない。

だが――。目の前の青年が、とんでもない未来を見ていることだけは伝わってきた。

「魔導ボンベより難しいと思います」

ンフィーレアは頭を下げる。

「ですが、ドワーフの皆さんなら作れると信じています!」

しばし沈黙――そして――。

ゴンドがニヤリと笑った。

「面白い」

その言葉に、周囲のドワーフたちも笑い始める。

「やってやろうじゃねぇか」

「ドワーフ舐めんなよ」

「小さい金属容器くらい作れんでどうする」

 

後に――この小型容器は、『魔導電池』と呼ばれることになる。

 

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