魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

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Phase3-6 鑑定結果

「アルベド様。ヴァミリネン殿からの至急の言伝をお伝えにまいりました」

アルベドの執務室の扉がノックされ、外からメイドの声が聞こえた。

(ヴァミリネンが? 兌換制度のことかしら……)

ほんの一瞬逡巡したアルベドだったが、すぐに入室を許可する。

「入りなさい」

「失礼いたします」

 

帝国が我が国に確認したいことは山ほどあるだろう。

しかし、今日このタイミングでの「至急の言伝」に心当たりはなかった。

 

アルベドが無言で発言を許可したのを見て、メイドが伝える。

「ヴァミリネン殿が、アンデッドの馬車をお借りしたいとのことです」

「アンデッドの馬車を……?」

今日はヴァミリネンに何も伝えていない。なのに、疲労を知らないアンデッドの馬車を借りたいということは、大至急帝国に戻る必要が生じたということ。

(それもかなり切迫した状況にある……)

 

「理由は?」

「それが……お聞きしたのですが、ジルクニフ皇帝直々の帰還命令だそうで、ヴァミリネン殿も理由を聞かされていない、と……」

(バハルス帝国が何かを企んでいる、ということでしょうね)

「いいわ。許可します。用意して差し上げて」

「はい、それではヴァミリネン殿にお伝えします」

 

(帝国は早くも貿易戦争における自国の敗北を予期し、なりふり構わぬ防衛策へ舵を切ったというわけね。……ふふ、全てはアインズ様の神算鬼謀の通り。これはデミウルゴスとラナーの耳にも入れておいた方が良さそうね)

 

◇ ◇ ◇

 

「いいえ、アルベド様からも、他の守護者の方々からも、一切何も聞いてはおりません」

親書が届いた翌朝、アンデッド馬車で驚異的な速度で帰国したヴァミリネンが答えた。

ヴァミリネンはこの数ヶ月の間で、これが三度目の帰国となる。

これまでの二度と違い、今回は恐怖から解放されているためか、落ち着いた様子で答えた。

 

「そうか。ではこれを……」

ジルクニフが一枚の書類を差し出す。

「これは……?」

「親書の写しだ」

「親書……もしや、魔導国からの……?」

「そうだ。読んでみろ」

「はっ」

 

ヴァミリネンの表情が見る見る変わっていく。

「こっ、これはっ?!」

「ああ、感想はいい。もう一度聞く。魔導国から聞いたこと、耳にしたこと、不穏な動き、どんな些細なことでもいい。思い当たる節はないか」

「……何も、ございません」

「陛下、こいつはやっぱりニセモノですよ」

「やはりそうか……」

ジルクニフがバジウッドを見た。そして俯きながら顎に手をやった、その時――。

 

扉が激しくノックされた。

「陛下! 陛下!」

「ああ、魔法省が報告に来たんでしょう」

「通せ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「失礼いたします!  陛下、これは本物です!」

鑑定を任された魔法省の鑑定人が、陛下への挨拶も失念し、親書を掲げながらまくし立てた。

 

「この羊皮紙には、微量ながら負のオーラが付着しています! これまでに届いた本物の親書と完全に一致する波長です! 間違いありません、魔導王自身の魔力です!」

「本物……だと……?」

「優秀な者5名で、徹夜で魔力鑑定を行いました! 一分の狂いもございません!」

 

その瞬間、ジルクニフの全身から、文字通り全ての力が抜けた。

辛うじて保っていた皇帝としての矜持も、思考能力も、すべてが暗黒の絶望へと叩き落とされる。

 

崩れ落ちるように椅子に深く体重を預けようとする。しかし、重心を大きく崩したジルクニフの身体は、豪華な肘掛け椅子を巻き添えにして、派手な音を立て、床へと転げ落ちた。

 

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