魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~ 作:Camel おさ
『蒼き皇女エレナ』
世界初となったそのアニメ作品は、バハルス帝国建国時代を舞台にした壮大な大河ロマンスだった。
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時は帝国建国前夜。戦乱に引き裂かれた諸侯たちが覇権を争う時代。
その渦中にいたのが、若き皇女エレナだった。
聡明で美しく、民から愛された彼女は、帝国統一の象徴として担ぎ上げられる。
しかし彼女自身は権力など望んでいなかった。
彼女が願ったのはただ一つ。戦争のない平和な国――それだけだった。
帝国統一のため、エレナは望まぬ婚約を強いられる。
そんなときエレナは、若き騎士カイルと出会い、互いに惹かれ合う。
だが、身分違いのその恋は、決して許されるものではなかった。
貴族たちの陰謀や裏切り、暗殺、権力闘争、そして各地で続く内乱。
エレナはそうした混迷の渦中で、理想と現実の狭間に立たされ続ける。
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『蒼き皇女エレナ』は単なる恋愛作品ではない。
帝国とは何か、国家とは何か、民を導くとは何か――それらを真正面から描いた叙事詩であった。
放送が開始されるや、世界中が熱狂した。女性たちはエレナとカイルの悲恋に涙し、男性たちは戦場を駆ける騎士たちに胸を躍らせた。この作品の考察を語り合う番組まで放送されるようになった。
人々は待った――来週のエレナを、来週のカイルを、来週の帝国の運命を。
魔導国やローブル聖王国の人々は、バハルス帝国の歴史と文化の奥深さに驚嘆した。
そして帝国国民は、自らの祖国にかつてない誇りを抱くようになった。
やがて『帝国アニメ』という言葉が定着した。
子ども向け作品も制作されるようになり、「次はどんなアニメを作ってくれるのだろう」と、世界中の人々が新作を待ち望むようになった。
アインズ・ウール・ゴウンが豊かさを与える王ならば、自分は夢を与える王になる――
ジルクニフが抱いたその決意は、もはや空想ではない。
世界中の子どもたちが笑い、世界中の大人たちが涙し、世界中の人々が次の物語を待っている。それこそが、ジルクニフが創り上げた新たな帝国の力だった。武力による支配ではなく、財力による征服でもない。人々の心を掴み、夢を共有させることで世界へ影響を及ぼす――物語という新たな力であった。
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ナザリック地下大墳墓。プレアデス専用サロン。
今日の話題は『蒼き皇女エレナ』だった。
ルプスレギナが紅茶を一口飲み、大きく伸びをする。
「いやぁ~、今週も面白かったっすねぇ」
「同感ね」ユリが静かに頷いた。
「国家の成り立ちを物語として描く手法は見事だわ」
ナーベラルが眉間にしわを寄せる。
「あんな魔法は存在しない。アインズ様ですら使えない魔法を描くなど、万死に値する」
「そうね」ソリュシャンも頷く。
「でも……城壁が崩れ、大軍が押し寄せる場面とか、生身の役者では不可能じゃないかしら。アニメだからこそ描けるのだわ」
ルプスレギナがニタリと笑う。
「エレナ皇女、可愛かったっすね。どんな死に方するんすかねぇ」
シズが小さな声出した。
「……かわいい」
ルプスレギナが振り返る。
「シズちゃん、ああいうの好きなんすか?」
「……好き。エレナ、かわいい」
「シズちゃんって恋愛ものとか興味あるんだ?」
「……ない」シズは首を横に振った。
「……でも、全部が絵。人を撮るならカメラでいい。でも、これは描かなきゃ作れない」
ナーベラルが僅かに目を細めた。
「つまり、絵で描いてるからすごい、ということ?」
「……ん。何百枚も、何千枚も、描いてる」
ソリュシャンも頷く。
「そうね。もしかしたら、実写よりも手間が掛かっているのかもしれないわ」
その時、エントマが勢いよく立ち上がった。
「虫が出ない」
「……」全員沈黙。
「戦いの場面に虫がいない。巨大虫も、毒虫も、飛ぶ虫も、一匹も出ない」
ルプスレギナが吹き出した。
「そこっすか?!」
「あとカイルが弱い。虫の方が強い」
「いやいやいや! カイルと虫の戦いなんて、そんなアニメ見たくないっす!」
「でもエレナのお肉は美味しそう」
その様子を見て、ユリは静かにため息をつく。
「作品の感想とは、実に個性が出るものね」
「……ん」シズは小さく頷いた。
「……来週も見る。帝国アニメ、楽しみ」