魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

75 / 75
Phase8-3 世界を魅了する真紅のブラッド

新首都ノヴァリアに特設された巨大なホール。

世界初のファッションショー会場となるそのホールには、テレビ中継のカメラが数多く設置され、世界中へ映像を届ける準備が整っていた。

 

開演前からホールは熱気に包まれていた。

 

◇ ◇ ◇

 

ホールの照明が落ちた。――静寂に包まれる。

 

そして、スポットライトが中央のランウェイを照らす。

荘厳な音楽が流れ始め、観客の視線が一斉に集中した。

ゆっくりと、ランウェイの奥から一人の女性が姿を現す。

 

シャルティア・ブラッドフォールン。

 

彼女が身に纏っていたのは、真紅のウェディングドレス。

そのドレスは、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)たちが持つ独特の美意識と、シャルティア自身の高貴さを完璧に融合させていた。流れるようなシルエットは彼女の肢体を際立たせ、繊細なレースの装飾が、まるで夜空に輝く星のように散りばめられている。

 

そして何よりも、そのドレスを纏ったシャルティアの美しさ――。

白い肌は真紅のドレスによって一層際立ち、血のように赤い瞳は、見る者全てを魅了する輝きを放っていた。

 

ホールは、どよめきと感嘆の声に包まれた。

女性たちは、その鮮烈な美しさに息を呑み、憧れの眼差しでシャルティアを見つめた。

「なんて……なんて美しいの……!」

「私も、あんなドレスを着てみたい……!」

 

男性たちは、ただただ呆然とした。この世にこれほどの美が存在するのかと、誰もが現実を疑った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……おお……」

王宮の執務室に置いたテレビで中継を見守っていたアインズは、思わず感嘆の声を漏らした。

隣にいたアルベドの眉がぴくりと動く。

(シャルティアめ……。アインズ様の視線を独り占めにするとは……!)

嫉妬の炎が、アルベドの胸の奥で静かに燃え上がった。しかし、アインズの命令で始まった企画である。アルベドは完璧な笑顔を保ち続けた。

 

ファッションショーが終わるや否や、魔導国全土、そして中継を見ていた他国からも、問い合わせが殺到した。

「あの衣装がほしい!」

「私も結婚式のときに着てみたい!」

「どこで買えるの?!」

 

この強烈な印象を残した「真紅」、そして「シャルティア・ブラッドフォールン」の名前の一部を取り、新たなブランドが誕生した。

 

――その名は「ブラッド」。

 

ノヴァリアにオープンしたブラッド一号店には、連日長蛇の列ができた。

服だけではない。帽子、手袋、スカーフ、バッグなど、「ブラッド」の名を冠した商品は、どれも飛ぶように売れていった。

 

ブラッドは瞬く間に大人気となり、店舗数は増え続け、バハルス帝国、そしてローブル聖王国にも出店していくこととなった。

 

シャルティア・ブラッドフォールンは、その圧倒的な美しさをもって、「流行(ファッション)産業」という新たな巨大産業を創り出し、計り知れないほどの大きな利益をもたらすこととなったのである。

 

 

【挿絵表示】

 

 

◇ ◇ ◇

 

ノヴァリア王宮。執務室。

 

アインズは、アルベドからの報告を受けていた。

そこへ、コンっコンっ――ノックの音が聞こえた。

 

「シャルティア様が、アインズ様へのお目通りを願っております」

メイドの声にアルベドが冷徹に言った。

「今は大切な報告中よ。後になさい」

「は、はぃっ。畏まりました」

シャルティアが執務室を尋ねることなど珍しい。何か急ぎの用があるのではないか――そう思ったアインズがそれを制した。

「待つのだ」

「しかし、アインズ様……」

「何か大切な用なのかもしれん。通してやれ」

(渡りに船だ。どうせアルベドの報告を聞いてても、俺には理解できないし……)

 

「失礼いたしんす……」

シャルティアが入室してきた。

 

「――!!」

その姿にアインズもアルベドも絶句した。

シャルティアは、ファッションショーで着用した真紅のウェディングドレスを着ていたのだ。

 

即座にアルベドが反応する。

「シャルティア! なんなのその格好はっ!」

「……ブラッドの、ウェディングドレスでありんす」

「そんなことは見ればわかるわっ! なぜそんな格好をしているのかと訊いてるのっ!」

「……アインズ様に、お願いがありんす」

シャルティアは、紅い瞳を潤ませていた。

「……アインズ様。一枚だけ……。一枚だけでいいのでありんす。どうか、わたくしと、写真を撮っていただけないでしょうか……」

「シャルティア!」アルベドの声が一層大きくなる。

「な・ん・で! その格好で! 写真を撮るのっ?!」

「アルベド……。わたくしは、特別な場所で撮りたいとは言ってないでありんす。この執務室でいい……。どうか……どうか、お願いしんす……」

 

いつものシャルティアなら、アルベドといがみ合っただろう。

だが、今日のシャルティアは違った。

か細い声。揺れる瞳。無理に浮かべたかのような笑みには、どこか哀しげな影が宿っている。

それはまるで、叶わぬ恋を覚悟し、それでも何か、一つでいいから思い出が欲しい――そんな想いを胸に秘めたかのような、震える乙女の姿がそこにあった。

 

アインズは、真紅のドレスに身を包んだシャルティアを見ながら思っていた。

(よく似合ってるな……。ペロロンチーノさんに見せてやりたかったな……)

 

アインズは自分が沈黙していることに気づいた。

「……シャルティア。この執務室で、一枚だけで良いのだな」

「は、はいっ。この一枚を、一生の……わたくしの一生の宝物にするでありんす……」

「ではメイドに撮らせよう」

 

アインズとシャルティアはツーショットの写真を撮った。

 

パシャっ。

ギチィリ。

 

(ん? いま何か……シャッター音とは別に、もう一つ音が聞こえたような気がするが……)

アルベドの方から聞こえた気がする――そう思ったアインズは、アルベドを見た。

「……どうかなさいましたか?」

笑顔のアルベドに問いかけられると、小さな疑問など頭から抜けていく。

「いや……なんでもない」

「すみません、アインズ様。少しだけ退室してもよろしいでしょうか?」

「どうした、アルベド。まぁ良い。行け」

「ありがとうございます」

アルベドが執務室を出ていった直後、外から「どりゃぁああ!」という女の声と、すさまじい勢いで何かが壁に激突する音が聞こえた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

鈴木悟の残響 - 骸の玉座に座してなおも人の夢を見る -(作者:朝型人間)(原作:オーバーロード)

もし、モモンガが最初の段階で「自分の人間性の喪失」に強い違和感を覚えていたら――。▼これは、骸の王となった彼が、なお鈴木悟の残響を抱えたまま進むifストーリーです。▼※アンチ・ヘイトは念のため


総合評価:172/評価:6.6/連載:12話/更新日時:2026年07月25日(土) 22:00 小説情報

スズキサトルの日常(作者:ふじら)(原作:オーバーロード)

モモンガが聖王国に何故か人化した状態で単独転移?して楽しむだけの話。


総合評価:1980/評価:8.63/連載:7話/更新日時:2026年05月23日(土) 12:52 小説情報

オーバーロード 神様のいない世界(作者:Esche)(原作:オーバーロード)

▼「――お前がいなければ、王国は平和だった。誰一人として死なず、姫様が悲しむこともなく!」▼とある道化の台詞を悪趣味に解釈し、アインズ様やナザリック勢の転移がなかった世界線で、現地の人々がどのように過ごしていくのかを妄想するIFの物語です。▼※一部の登場人物には過酷な展開となります。▼『アンチ・ヘイト』タグの意味を踏まえて、苦手な方はご注意ください。▼※複数…


総合評価:704/評価:8.26/連載:21話/更新日時:2026年07月02日(木) 00:00 小説情報

モモンガの惑星(作者:シャンティ・ナガル)(原作:オーバーロード)

▼DMMORPG『ユグドラシル』──▼2126年、世界を熱狂させたその舞台で伝説を刻んだギルドがあった。▼ギルドランク第1位《アインズ・ウール・ゴウン》。▼189個のワールドアイテムを独占し、不落の拠点を構える無敵の軍団。▼その頂点に君臨するのは、一人の男。▼ラグナロクを制覇し、ゲーム内唯一のLv200に到達した超越者・モモンガ。▼富、名声、そして神にも等し…


総合評価:241/評価:7.7/連載:5話/更新日時:2026年05月05日(火) 19:15 小説情報

えっ凡人がアインズ様に憑依?!(作者:Revak)(原作:オーバーロード)

▼とある男は目が覚めたらなんと転移直後のモモンガ様になってしまっていた?!▼中身が別人だとバレるわけにはいかないとアインズ様ロールプレイをしながら原作を進めていく!▼その過程で原作知識を使い死亡キャラを救う、かもしれない。▼アンチ・ヘイトはモモンガ様になっているので原作ぶっ壊してるのでつけてます。▼寝取りは原作モモンガさんからアルベド寝取ってるのでつけてます…


総合評価:579/評価:6.95/連載:8話/更新日時:2026年06月07日(日) 15:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>