魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

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Phase9-2 計画の羅針盤

ナザリック地下大墳墓、第九階層。中央会議室。

 

玉座の間での興奮冷めやらぬまま、守護者たちが会議室に集結した。

彼らの顔には、アインズマスという新たな祝祭への期待と、それを最高の形で実現しようとする熱意が満ちている。

 

「神がこの世に降臨した日である『アインズマス』に向けて、我々は何をすべきか、具体的な計画を話し合いましょう」

アルベドの一声で会議は始まった。

 

しかし、その直後から、会議室は熱気と混乱に包まれる。

「アインズ様には、世界中の珍しい宝を献上すべきです」

「いえ、アインズ様の偉大さを称えるお祭りを」

「盛大な宴を催すべきでしょう」

皆が皆、アインズへの忠誠と愛情を形にしようと、思い思いの意見をぶつけ合う。しかし、それは議論とは程遠く、ただ各自が自分の理想を語るばかりで、一向に収拾がつかない。

 

「みんな、ちょっと待ちなさい!」

アルベドの鋭い一喝が、会議室の喧騒を鎮めた。

「まずは……そうね、アインズ様の願いは何か、その認識を合わせることから始めましょう。アインズ様が本当に望んでおられるアインズマスとは、どのようなものなのか、皆で共通の理解を持つべきよ」

 

しかし、この問いに対しても、守護者たちの意見はまとまらない。アインズの深遠な思惑を読み解こうと、それぞれが独自の解釈を披露するが、その感じ方、捉え方はみな異なるため、認識の統一には至らなかった。

 

アルベドは、苛立ちを覚えつつも、冷静に周囲を見渡した。

そして、この場にいる者たちの中で、一人だけ異質な存在がいることに改めて気づく。

それは、領域守護者としてナザリックに迎え入れた元王女、ラナーだ。

ラナーだけはNPCではない。だが、それが故に、他の者たちとは異なる視点を持つ。

そして何より、その突出した情報分析能力は、アルベドやデミウルゴスをも凌駕するほどだ。

 

「ラナー」

アルベドがラナーに声をかけた。

「アインズ様の願いは何か。それを導き出すための情報を、あなたが整理して皆に示しなさい」

「はい、アルベド様」

ラナーは恭しく一礼すると、その場に立つ。彼女の瞳は、すでに状況の全てを把握しているかのように澄んでいた。

 

「まず、アインズ様がもっとも大切にしていること――それはこのナザリックであり、皆さま方であると、私は認識しております。他に何か、付け加えるべきことはございますか?」

ラナーの問いかけに、セバスが顎髭を撫でながら答えた。

「お仲間……ではないでしょうか。かつて共にこのナザリックを築き上げた、41人の至高の御方たちへの想いこそが、アインズ様の行動原理の根幹にあるかと」

「その通りです。至高の御方たちでしょう」

デミウルゴスもそれに続いた。

「わかりました」ラナーは静かに頷いた。

「だとするなら、私はアインズ様の偉大な功績と、その根底にある願いに関する情報を、以下のとおりであると分析します」

 

 

【挿絵表示】

 

 

1. 至高の御方たちに見せたい理想郷

 至高の御方たちがこの地に戻られた時、「素晴らしい国を創りましたね」――そう言ってもらえるような、理想郷を築くこと。その理想郷を築くための一手が、旧リ・エスティーゼ王国領土の再開発であり、新首都ノヴァリアの建設でした。

 

2. 武力なき支配

 武力で踏みにじる支配ではなく、経済と利便性による支配。だからこそ、液状魔力という基盤エネルギーを独占し、覇権通貨「エン」によって他国を経済の鎖で縛りました。しかし、それが他国を滅ぼすことになってはならない。Win-Winの精神で貿易相手を豊かにする。ただしそれは変動相場制により生殺与奪を完全に握った上での、慈悲深い管理下での繁栄です。

 

3. 揺りかごの創造

 アンデッドをインフラに投入することで、民を過酷な重労働から解放しました。また、豊かさの基盤として、身分を問わない義務教育を導入し、誰もが安心して暮らせる「揺りかご」のような社会を創造されました。

 

4. 平和的な熱狂

 戦争という闘争を、野球やアニメ、ゲームといったスポーツや娯楽へと昇華させ、民衆の闘争心を「管理された熱狂」の中へと閉じ込めました。これにより、世界に平和をもたらし、文化的な繁栄を促されました。

 

5. 守護者たちの輝く場所の創出

 カンデーズ様のアイドルデビューや、シャルティア様を起用した高級ブランド「ブラッド」の設立など、ナザリックの力の象徴を、新世界の憧れへと再定義する試みを行ってこられました。

 

ラナーは一呼吸置くと、会議室を見渡した。

「もちろん、アインズ様の偉大な功績はこれだけではありません。しかし、その全てを一つ一つ語っていては、それだけで夜が明けてしまいます。この5つの柱をしっかりと認識し、その上でアインズマスに何をすべきなのかを考えれば、自ずと答えは見えてくるでしょう」

 

「流石ね、ラナー。その通りだと思うわ」

アルベドが満足げに頷いた。

デミウルゴスもまた深く頷く。

「ラナーはこの私が目をつけた逸材です。その情報分析力は、まさにアインズ様のお眼鏡にかなうものです」

 

アルベドは、守護者たち全員に視線を向けた。

「ではみんな。一週間の猶予を与えます。ラナーの分析をもとに、アインズ様がお望みになるアインズマスとは何か、各自で深く考察し、具体的な計画を整理して、一週間後にそれを持ち寄りましょう。アインズ様にとって、最高の聖誕祭を捧げるために!」

 

守護者たちは、ラナーの明快な分析とアルベドの指示に、新たな決意を胸に刻んだ。

 

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