魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

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Phase9-6 揺りかごの夢を運ぶ奉仕者

ナザリック地下大墳墓。プレアデス専用サロンには、珍しく静かな空気が流れていた。

 

円卓を囲むのはセバス・チャンと、プレアデスの6名。アルベドから与えられた一週間という猶予の中、それぞれがアインズマスについて考えを巡らせてきたものの、今日が初めて意見を持ち寄る日だった。

 

円卓の中央には、ラナーが提示した五つの柱が書かれた魔導紙が置かれている。

 

誰も口を開かない沈黙を破ったのは、セバスだった。

「皆さん」

穏やかな声だった。

「ラナーの分析は、実に見事でした。しかし、私は五つ全てを考える必要はないと思っています」

「と、おっしゃいますと?」ユリが静かに訊いた。

「この第三の柱だけを考えてみてはいかがでしょう」

セバスの指先が、魔導紙の一節を静かになぞる。

 

――揺りかごの創造。

 

「アインズ様は、民を重労働から解放し、誰もが安心して暮らせる世界を創造されました。であれば、私たちはその理念を形にすることを考えればよいでしょう」

誰も異論を挟まなかった。

むしろ、その言葉はプレアデスたちの胸に自然と落ちていく。

 

では、具体的には何をすればよいのか――。

 

各自が案を出すものの、どれも決め手に欠けていた。

話し合いは続くものの、次第に同じところを巡るようになり、再び静寂が訪れる。

 

その時、ユリがゆっくりと口を開く。

「皆さん」

全員の視線が長女へ向く。

「私たちは、何を贈るかばかりを考えていました」

一呼吸置き、柔らかな微笑みを浮かべる。

「ですが、本当に考えるべきなのは、誰を笑顔にしたいのかではありませんか?」

 

その一言で、空気が変わる。ユリは続けた。

「私は、子どもたちだと思います。子どもたちは、この国の未来です。未来を育むことこそ、『揺りかご』という理念に最もふさわしいのではないでしょうか」

 

「その通りですね」セバスが穏やかに頷く。

「未来ある子どもたちへ贈り物を届ける。それは、アインズ様がお築きになった世界への、私たちなりの感謝の形になるでしょう」

 

方向性は決まった。

しかし、新たな問題が浮かび上がる。

 

「誰が届けるんすか?」

ルプスレギナが率直に尋ねた。

「ユリ姉?」

「私ではありません」ユリは静かに首を横へ振った。

「私が一人だけ表に立てば、他の5人が陰に隠れることになります」

「じゃあソリュシャン?」

ソリュシャンは、小首を傾げながら不気味な笑みを浮かべた。

「子どもというのは、成長途中の実に味わい深い素材……」

「却下よ」ユリがソリュシャンの言葉を遮った。

「じゃあナーベラル?」

「は?」ナーベラルが、心底不愉快そうに眉をひそめる。

「なぜ私が、人間の子どもなどのために働かねばならないの?」

「でも、アインズ様のためっすよ?」

「そ、それとこれとは話が別っ」

分かりやすく視線が泳いだが、誰も追及しなかった。

「シズ?」

「……無理」

「エントマ?」

「難しい……」

 

一人ずつ名前が挙がるたびに、皆が首を横に振る。

その様子を見守っていたセバスが、静かに立ち上がる。

「私が参りましょう」

全員が顔を上げた。

「セバス様が、ですか」ユリが尋ねる。

「ええ」

セバスは柔らかな笑みを浮かべた。

「私は執事です。誰かに仕え、その人の幸福を願うことが私の務めです。未来ある子どもたちへ贈り物を届ける役目であれば、私以上の適任者はいないでしょう」

その言葉には、一切の気負いがなかった。

 

「どうやって配るんすか?」

ルプスレギナの問いに、シズが短く答えた。

「……ソウルイーター」

一同が、シズを見る。

ソウルイーターは、魔導高架鉄道やアンデッドバスを牽引する存在として、人々に親しまれている。

「……ソウルイーターが贈り物を積んだソリを牽引すればいい」

「いやいやいや。地上を走って届けてたら夜が明けちゃうっすよ?」

「空を駆けさせればいいのではなくて?」

ソリュシャンの一言に、ナーベラルが眉をひそめた。

「あれが飛べるとは思えない」

誰もその懐疑に答えられなかった。

 

その時――。

コンっコンっ。扉がノックされた。

 

ここはプレアデス専用サロンだ。今ここには6人全員が揃っている。セバスもいる。

他にここへ来る者などいないはずだ。一体、誰だろう。全員が顔を見合わせる。

 

ちょうど立ち上がっていたセバスが扉を開けた。

すると、そこに立っていたのは――宰相アルベド。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ザっ! あまりの珍客に驚愕したプレアデスたちが一斉に立ち上がった。

まさか、あの時のこと――アインズ様との記念写真撮影未遂事件――で罰を与えに来たというのか――。

6人は顔面蒼白になりながら、アルベドの言葉を待った。

 

「アインズマスの相談をしていたのでしょう? どんな案を考えていたのかしら」

「はい。良い案が出たのですが、一つ困っていることがあるのです」

 

セバスが顎髭をさすりながら、話し合った内容をアルベドに説明した。

 

「良いアイデアね……。わかったわ。ソウルイーターに空を駆けさせる方法は、私が預かりましょう」

そうセバスに言った後で、アルベドはプレアデスたちの方へ顔を向けた。

「アインズマスのイベントとして、あなたたちにやってもらいたいことがあるの」

そこでアルベドから告げられたのは、プレアデスたちにとって予想だにしない話だった。

 

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