魔導産業革命 ~エネルギーシフトと覇権通貨「エン」がもたらす軍事なき支配~   作:Camel おさ

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Phase9-10 森の申し子たちが灯す聖樹

ナザリック地下大墳墓、第六階層。

天井のない蒼穹(そうきゅう)の下、巨大樹が枝葉を大きく広げ、深い森を静かに見守っていた。

 

そこには、エルフの双子――アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレが、ラナーから渡された資料を前に並んで座っていた。

 

「うーん……」腕を組んだアウラが唸る。

「む、難しいね……」マーレも困ったように資料を見つめた。

 

アルベドから与えられた猶予は一週間。

ラナーが示した五つの柱は、どれも納得できる。

だからこそ、自分たちに何ができるのか分からなかった。

 

「『武力なき支配』はデミウルゴスの仕事だし」

「『揺りかご』は……セバスさんたち、かな……」

「『平和的な熱狂』はカンデーズだよね」

 

一つずつ候補を消していくたび、自分たちの役割は遠ざかっていく。

長い沈黙が流れた。

 

やがてアウラが立ち上がる。

「考えてても仕方ない」

アウラは大きく伸びをすると、森を振り返った。

「マーレ、仕事しよう」

「う、うん」

 

二人は資料を閉じ、それぞれ森へ向かった。

アウラは魔獣たちの様子を見て回り、マーレは巨大樹の周囲に新しい苗を植えていく。

それは二人にとって、何度も繰り返してきた日常だった。

 

夕暮れ。マーレは一本の若木の前で足を止めた。

「……あれ?」

昼間に植えたばかりの魔法植物。

その葉が、薄く青白い光を放っている。

「これ……夜だけ、光るんだ……?」

不思議そうに葉へ触れる。

昼間には何の変哲もなかった葉が、日没とともに淡く発光し始めていた。

 

マーレは思わず笑みを浮かべる。

「きれい……」

その呟きを聞きつけたアウラが歩み寄ってきた。

「どうしたの?」

「お姉ちゃん、これ……見て」

 

アウラは若木を見た瞬間、目を丸くした。

青白い光は派手ではない。

けれど森の闇の中では、それが星明かりのように優しく輝いていた。

 

「へぇ……こんな植物あったんだ」

「昼は普通なんだけど……夜だけ光るみたい……」

二人はしばらく無言で、その小さな光を眺めていた。

 

ふと、アウラの頭の中で何かが繋がった。

「これって……」

アウラの視線が巨大樹へ向く。

「もし、この光る植物を何千本も育てて……」

巨大樹の幹へ、枝へ、葉へ、蔦のように絡ませたら――。

頭の中に、一つの光景が完成した。

夜空へ向かって伸びる一本の巨大樹――枝という枝が青白く輝く。

それはまるで、天空から星を降ろしたかのような幻想的な光景。

 

「マーレ!」

アウラは思わずマーレの両肩を掴んだ。

「これだよ!」

「え?」

「この巨大樹を、世界で一番綺麗な木にするんだ!」

「世界で、一番?」

「そう!」

アウラは興奮したまま空中へ地図を描き始める。

「ノヴァリア中央公園……そこに一本だけ植える。昼は立派な大樹……でも夜になると、世界で一番綺麗に光る。世界中の人が、その巨大樹を見るために集まる……」

 

マーレの瞳も少しずつ輝き始める。

「み、みんな、写真を撮るね」

「うん! でも、それだけじゃない。アインズマスの日に結婚する人も出てくる。世界で一番幸せな日に、世界で一番綺麗な木の下で、ブラッドのウェディングドレスを着て写真を撮る。それが世界中の憧れになるんだ!」

マーレは思わず笑顔になった。

「毎年、新しい夫婦が、その木の下で幸せになるんだね」

「そう。ただの木じゃない。幸せを誓う場所。家族が集まる場所。友人たちとの思い出になる場所」

 

――それは、毎年、世界中のみんなが帰ってくる場所。

 

「決まり!」

二人は顔を見合わせ、同時に頷いた。

 

二人が育てる巨大樹――それは一本の樹ではない。

世界中の人々が、大切な人との思い出を刻み続ける――祝祭そのものの象徴となる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

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