静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第13話 未来が牙をむく

 紅魔館の魔力炉が光に包まれた直後――

館全体が、悲鳴を上げた。

 

 床が裂け、壁が波打ち、天井が歪む。

未来の断片が暴走し、現実に干渉し始めている。

 

 燃える未来の炎が廊下を舐め、

消えた未来の虚無が床を侵食し、

救われる未来の光が断片的に瞬く。

 

 紅魔館は、三つの未来が同時に存在する“矛盾の空間”と化していた。

 

 

 

 

 魔力炉の中心で、美鈴は膝をついていた。

 

 覚醒の光がまだ体を包み、未来の流れが美鈴の中を駆け巡っている。

 

「はぁ……はぁ……

 これが……未来を選ぶって……」

 

 意識が遠のきそうになる。

だが、胸の奥には確かな“光”があった。

 

――私は、紅魔館を守る。

 

 その願いが、美鈴を支えていた。

 

 影が静かに言った。

 

「紅美鈴。

 お前は未来を掴んだ。

 だが――滅びの未来は、まだ消えていない」

 

 美鈴は顔を上げた。

 

「どういう……ことですか……?」

 

 影は魔力炉の中心を指した。

 

「滅びの未来は“意思”を持つ。

 未来の中で最も強い“収束”は、時に形を持つ」

 

 美鈴は息を呑んだ。

 

「まさか……!」

 

 その瞬間――

魔力炉の中心から、黒い腕が伸びた。

 

 空間を裂き、床を砕き、未来の闇が形を成していく。

 

 それは“怪物”だった。

 

 紅魔館が燃える未来から生まれた、滅びの象徴。

 

 黒い霧をまとい、人の形をしているようで、していない。

 

 未来の絶望が凝縮した存在。

 

 影が言った。

 

「滅びの未来が……お前を殺しに来た」

 

 美鈴は震える足で立ち上がった。

 

「……来るなら……来なさい……

 私は……紅魔館を……守る……!」

 

 怪物が咆哮した。

 

 その声は、未来の断末魔そのものだった。

 

 

 

 

 その頃、魔力炉の外では――

レミリアが魔力炉へ向かって走っていた。

 

 咲夜が叫ぶ。

 

「お嬢様! 危険です!

 魔力炉は今、未来の裂け目と繋がっています!」

 

 レミリアは振り返らない。

 

「美鈴がいるのよ!

 あの子を一人にできるわけないでしょう!」

 

 パチュリーが息を切らしながら言った。

 

「レミィ……あなたが行けば、未来の揺らぎがさらに強くなる……!」

 

 レミリアは叫んだ。

 

「それでも行く!

 美鈴を……失いたくない……!」

 

 その声は、主ではなく――

ただの少女の叫びだった。

 

 

 

 

 魔力炉の中。

 

 滅びの怪物が美鈴へ迫る。

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「私は……負けない……!」

 

 怪物の腕が振り下ろされる。

 

 美鈴は未来の流れを掴み、その腕を弾き返した。

 

 光が爆ぜる。

 

 影が呟く。

 

「……やはり、お前は“運命の門番”だ。

 未来を拒み、未来を選ぶ力……

 紅魔館のために作られた、最後の鍵」

 

 美鈴は怪物を睨んだ。

 

「私は……鍵なんかじゃない……

 私は……門番です……!

 紅魔館を守るために……ここにいるんです……!」

 

 怪物が咆哮し、再び襲いかかる。

 

 美鈴は未来の光を拳に集めた。

 

「紅魔館は……滅びません!!」

 

 拳が怪物を打ち砕く。

 

 黒い霧が散り、未来の断片が弾け飛ぶ。

 

 だが――

怪物は再び形を取り戻した。

 

 影が言った。

 

「滅びの未来は強い。

 お前一人では……押し切れない」

 

 美鈴は歯を食いしばった。

 

「でも……諦めません……!」

 

 そのとき――

 

「美鈴!!」

 

 レミリアが魔力炉へ飛び込んできた。

 

 美鈴は振り返った。

 

「お嬢様……!」

 

 レミリアは美鈴の手を掴んだ。

 

「一人で戦わせるわけないでしょう……!

 あなたは……私の大切な門番なんだから……!」

 

 美鈴の胸が熱くなった。

 

 影が呟く。

 

「……これが、紅魔館の“本当の力”か」

 

 レミリアは美鈴の手を握り、怪物を睨んだ。

 

「美鈴。

 未来を変えるのは……あなた一人じゃない。

 私も一緒に戦うわ」

 

 美鈴は涙をこぼした。

 

「お嬢様……!」

 

 怪物が咆哮し、二人へ迫る。

 

 レミリアは翼を広げた。

 

「行くわよ、美鈴!」

 

 美鈴は拳を握った。

 

「はい……!」

 

 二人の力が重なり――

未来が震えた。

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