静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第16話 未来の核に触れるとき

 紅魔館の魔力炉――その中心に浮かぶ“未来の核”は、紅い光と青い光が混ざり合い、脈動していた。

 

 まるで、巨大な心臓のように。

 

 美鈴が一歩近づくたびに、未来の断片が周囲に散り、滅びの未来と救いの未来が交互に揺らめく。

 

 レミリアは震える手で美鈴の腕を掴んだ。

 

「美鈴……お願い……行かないで……

 あなたの未来が削られるなんて……そんなの……!」

 

 美鈴は振り返り、優しく微笑んだ。

 

「お嬢様。

 私は……大丈夫です。

 未来が削られても……私は、ここにいます」

 

 レミリアの瞳が揺れた。

 

「“今”はいても……“未来”にいなくなるかもしれないのよ……

 そんなの……耐えられない……!」

 

 美鈴はレミリアの手をそっと握り返した。

 

「お嬢様。

 私は……お嬢様の未来を守りたいんです。

 だから……行かせてください」

 

 レミリアは唇を噛み、涙をこぼした。

 

「美鈴……どうして……

 どうしてそんなに優しいの……!」

 

 美鈴は微笑んだ。

 

「門番ですから」

 

 その言葉は、静かで、強かった。

 

 

 

◆

 

 影が一歩前に出た。

 

「紅美鈴。

 未来の核に触れれば、未来は“確定”する。

 だが同時に――

 お前の未来は削られ始める」

 

 美鈴は影を見つめた。

 

「……どれくらい、削られるんですか?」

 

 影は答えなかった。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「答えなさい!

 美鈴の未来を……どれだけ奪うつもりなの!」

 

 影は静かに言った。

 

「未来の削れ方は……“願いの強さ”に比例する。

 紅魔館を強く救おうとすればするほど、

 美鈴の未来は短くなる」

 

 レミリアは崩れ落ちそうになった。

 

「そんな……そんなの……!」

 

 美鈴は影に向き直る。

 

「……それでも、私は選びます」

 

 影は目を細めた。

 

「覚悟はできているようだな」

 

 美鈴はうなずいた。

 

「はい。

 私は……紅魔館を守りたい。

 みんなの未来を守りたい。

 そのためなら……私の未来が少し削られても……構いません」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「構うわよ!!

 私は……あなたがいない未来なんて……絶対に嫌!!」

 

 美鈴はレミリアを抱きしめた。

 

「お嬢様……

 私は、消えません。

 未来が短くなっても……私は、ここにいます。

 お嬢様のそばに」

 

 レミリアは震えながら美鈴を抱き返した。

 

「美鈴……お願い……戻ってきて……

 絶対に……戻ってきて……!」

 

 美鈴は静かにうなずいた。

 

「はい。必ず」

 

 

 

◆

 

 美鈴は未来の核の前に立った。

 

 紅い光と青い光が混ざり合い、未来の断片が渦を巻く。

 

 燃える未来。

 消える未来。

 救われる未来。

 

 そのすべてが、美鈴の手を待っている。

 

 影が言った。

 

「紅美鈴。

 未来を選べ」

 

 美鈴は深く息を吸い、未来の核へ手を伸ばした。

 

「私は――

 “救われる未来”を選びます」

 

 その瞬間、光が爆ぜた。

 

 美鈴の体から未来の光が溢れ、紅魔館全体が震えた。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「美鈴!!」

 

 美鈴の手が未来の核に触れた。

 

 未来が――動き始めた。

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