静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第16話 未来の核に触れるとき

 紅魔館の魔力炉――その中心に浮かぶ“未来の核”は、紅い光と青い光が混ざり合い、脈動していた。

 

 まるで、巨大な心臓のように。

 

 美鈴が一歩近づくたびに、未来の断片が周囲に散り、滅びの未来と救いの未来が交互に揺らめく。

 

 レミリアは震える手で美鈴の腕を掴んだ。

 

「美鈴……お願い……行かないで……

 あなたの未来が削られるなんて……そんなの……!」

 

 美鈴は振り返り、優しく微笑んだ。

 

「お嬢様。

 私は……大丈夫です。

 未来が削られても……私は、ここにいます」

 

 レミリアの瞳が揺れた。

 

「“今”はいても……“未来”にいなくなるかもしれないのよ……

 そんなの……耐えられない……!」

 

 美鈴はレミリアの手をそっと握り返した。

 

「お嬢様。

 私は……お嬢様の未来を守りたいんです。

 だから……行かせてください」

 

 レミリアは唇を噛み、涙をこぼした。

 

「美鈴……どうして……

 どうしてそんなに優しいの……!」

 

 美鈴は微笑んだ。

 

「門番ですから」

 

 その言葉は、静かで、強かった。

 

 

 

 

 影が一歩前に出た。

 

「紅美鈴。

 未来の核に触れれば、未来は“確定”する。

 だが同時に――

 お前の未来は削られ始める」

 

 美鈴は影を見つめた。

 

「……どれくらい、削られるんですか?」

 

 影は答えなかった。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「答えなさい!

 美鈴の未来を……どれだけ奪うつもりなの!」

 

 影は静かに言った。

 

「未来の削れ方は……“願いの強さ”に比例する。

 紅魔館を強く救おうとすればするほど、

 美鈴の未来は短くなる」

 

 レミリアは崩れ落ちそうになった。

 

「そんな……そんなの……!」

 

 美鈴は影に向き直る。

 

「……それでも、私は選びます」

 

 影は目を細めた。

 

「覚悟はできているようだな」

 

 美鈴はうなずいた。

 

「はい。

 私は……紅魔館を守りたい。

 みんなの未来を守りたい。

 そのためなら……私の未来が少し削られても……構いません」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「構うわよ!!

 私は……あなたがいない未来なんて……絶対に嫌!!」

 

 美鈴はレミリアを抱きしめた。

 

「お嬢様……

 私は、消えません。

 未来が短くなっても……私は、ここにいます。

 お嬢様のそばに」

 

 レミリアは震えながら美鈴を抱き返した。

 

「美鈴……お願い……戻ってきて……

 絶対に……戻ってきて……!」

 

 美鈴は静かにうなずいた。

 

「はい。必ず」

 

 

 

 

 美鈴は未来の核の前に立った。

 

 紅い光と青い光が混ざり合い、未来の断片が渦を巻く。

 

 燃える未来。

 消える未来。

 救われる未来。

 

 そのすべてが、美鈴の手を待っている。

 

 影が言った。

 

「紅美鈴。

 未来を選べ」

 

 美鈴は深く息を吸い、未来の核へ手を伸ばした。

 

「私は――

 “救われる未来”を選びます」

 

 その瞬間、光が爆ぜた。

 

 美鈴の体から未来の光が溢れ、紅魔館全体が震えた。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「美鈴!!」

 

 美鈴の手が未来の核に触れた。

 

 未来が――動き始めた。

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